2025.02.10
多発する人道問題への対処に力を合わせよう
公開日:
ここ1、2年は世界各地で紛争が相次ぎ、心を痛めている人も多いかと思います。その多くは中東やアフリカなど、日本からは離れた地域で起こっているように見えるかもしれません。しかし、日本が位置するアジアでも、さまざまな問題が生じています。
いずれも、どこかの政府や国連などが単体で解決できるものではなく、さまざまな人々や団体が協力して対処することが重要です。アジア地域でのそのような協力について議論する国際会議に、SGIの代表が参加しました。
「アジア地域 人道パートナーシップ週間」
近年「アジア地域 人道パートナーシップ週間」国際会議(RHPW)が、国連人道問題調整事務所(UNOCHA)、アジア防災・救援ネットワーク(ADRRN)などによって開催されています。2024年の会議「RHPW24」が12月にタイ・バンコクで開催されました。
約60カ国から400人が参加し、活発に議論を交わしました。日本からはSGIの代表を含め4名で、多くは東南アジア地域からの参加者でした。
企業も積極的に参加
会議の多くは分科会形式で、全部で44の会が開催されました。戦乱や災害などの人道問題の発生後には、食料、医療、教育などさまざまな課題が発生します。それだけに、国連、援助機関やNGOはもちろんのこと、近年は企業もさまざまな形で協力しています。
ある分科会では、世界的な物流企業、および、多くの航空会社の協力のもとで発足したシンガポールのNGOが事例を報告。両団体は大規模な緊急事態に備えて、備蓄倉庫を世界各地に用意したり、支援に駆けつける諸団体のスタッフを迅速に輸送する体制を整備したりしているとのことでした。2024年1月の能登半島地震に際しても、このネットワークを通じた支援が届けられたそうです。
信仰を基盤とした組織(FBO)
2つの分科会では、人道問題への対処における「信仰を基盤とした組織(FBO)」の役割が議論されました。11日の分科会「信仰のアクターがもたらす価値:ローカル化と気候変動への対処力の促進」は、イスラム教系の世界的なNGOであるイスラミック・リリーフの主催で、冒頭、同団体の委託で実施された研究の結果が紹介されました。
それによると、FBOは特に「メンタル・ヘルスや心理社会的ケア」の面で独自の強みを発揮しているとのことでした。人道問題の発生後は多くの人々の「心」に課題が発生します。精神科医の派遣なども行われるようになっていますが、一方FBOは、対象者の信仰に則した形でケアを行っており、それが有効であるのだそうです。
学会としても、大災害の後には各地域で、徹底した家庭訪問を通じた「励まし」の活動や、音楽隊による「希望の絆」コンサートを実施してきました。こうした取り組みは、上記の指摘に通ずる面があるのではと思います。
一方、宗教は時に、極端な解釈がなされて、人権の抑圧などに加担してしまうケースも世界では散見されています。こうした問題についても、FBOが、穏健な解釈をする宗教指導者と連携して、為政者との対話を試みているという事例も紹介されました。
災害への備え
12日の分科会「先を見越しての行動や早期警戒システムが日本においてどう機能してきたか」では、SGIの代表が、以前他のNGOと協力して実施した、災害早期警戒システムに関する調査結果などを紹介しました。
日本では、気象の観測、その後の事象の予想、それに基づく警戒情報の発信などが世界でも最も進んだ国の1つで、多くの人はそうした情報に日常的に接しています。しかし現実には、そうした情報を得ても、逃げない人、あるいは逃げられない人が少なからず存在しています。その要因などを探った調査でした。
発表後、参加者からは、「携帯電話を通じた情報発信は有効ではあるが、我が国での災害の場合、基地局が破壊されて電波が止まったり、停電によって充電ができなくなったりする可能性が高い。」といった意見が寄せられました。
またさらに、「なぜ逃げない人がいるのか?」「障がい者にはどのように情報を届けるべきか?」「家庭ごとの避難計画の議論はあるか?」「先を見越しての行動に対する、行政からの財政的な支援はあるか?」など、多数の質問が寄せられ、分科会終了後にも止むことはありませんでした。
「ぼうさいこくたい」でも関連の議論を実施
この国際会議に先立ち、2024年10月には「ぼうさいこくたい2024」が熊本市で開催されましたが、SGIは「変わりゆくコミュニティにおけるインクルーシブ防災」と題した分科会を開催しました。ここでは、令和2年豪雨で被災された熊本県球磨村シルバー人材センター理事長の岡潤一朗さん、東北大学災害科学国際研究所の北村美和子研究員、NPO法人CWS Japanの牧由希子ディレクターなどが登壇し、障がい者や高齢者など一人一人を守りゆくための方策を議論しました。
その時の動画はこちらから視聴可能です。
日本においては、既に地域ごとに、自治体や町会、消防団などが災害への備えを進めているわけですが、企業、学校、福祉施設など多様なアクターが連携することで、緊急時に一層の力を発揮するのではと考えられます。皆さんの地域での備えについても考えてまいりましょう。
この記事の取り組みは、以下の目標に寄与することを目指しています。
●目標3. すべての人に健康と福祉を
あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する。
●目標11. 住み続けられるまちづくりを
包摂的で安全かつ強靭(リジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する。
●目標17. パートナーシップで目標を達成しよう
持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する。