平和をめざして

「平和の文化」を構築

「平和の文化」とは

一人一人の「自己変革」からはじまる
「平和」とは、単に戦争・武力紛争がないことをいうのではありません。生命の尊厳や安全を脅かすすべてのものが「平和」の対極にあります。
「平和の文化」とは、平和を築くための価値観、態度、行動、生き方のことです。
「平和の文化」を築くためには、対話、教育、そして人と人とのネットワークを広げるなど、私たち一人一人のたゆみない努力が必要です。
人の心の中に平和の砦を築かなければならない
20世紀、人類は2度の世界大戦を含む幾多の戦争・紛争を経験しました。その反省に立って、国連をはじめ国際社会は、「戦争と暴力の文化」から「平和と非暴力の文化」へと、“人間の価値観や行動”そのものを変革していく努力が必要だとして、「平和の文化」を築くための取り組みを開始しました。
「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和の砦を築かなければならない」
「平和の文化」はこのユネスコ憲章とも呼応するものです。
国連は1999年に「平和の文化に関する宣言及び行動計画」を採択し、生命の尊厳、教育・対話や協力を通した非暴力の実践、環境の保護、男女の平等や人権に基づいた価値観、態度や振る舞いを「平和の文化」として推進しています。
1999年9月13日
国連総会において「平和の文化に関する宣言」
「平和の文化に関する行動計画」を採択
2000年
国連「平和の文化国際年」
2001年~2010年
国連「世界の子どもたちのための平和の文化と非暴力の国際10年」
2012年~
国連総会議長が主催する「平和の文化に関するハイレベルフォーラム」を開催
2019年
「平和の文化に関する行動計画」採択20周年
2021年
「平和と信頼の国際年」
「平和の文化」の行動領域
1教育による「平和の文化」
2持続可能な経済・社会的発展
3あらゆる人権の尊重
4女性と男性の平等を保証
5民主的な参加の促進
6理解と寛容、連帯
7コミュニケーションと情報の自由な流通
8国際的な平和と安全
日常生活の中で「平和と非暴力」を自分の生き方としていくこと
「平和の文化」は、日々のあらゆる場面で異なる人や考え方に寛容になり、対話によって理解し、対立を乗り越え、連帯を広げていくという、私たち一人一人の生き方の変革から始まります。

近年の主な取り組み

  • ▼ 目次

United Nations Audiovisual Library

国連「平和の文化」ハイレベルフォーラムを支援
国連総会議長の主催による「平和の文化」ハイレベルフォーラムが、2022年9月6日(現地時間)、アメリカ・ニューヨークの国連本部で開催されました。
 「平和構築を進めるための正義・平等・包括の重要性」をテーマに開催された同フォーラムでは、国連総会副議長が開会あいさつ。事務総長ユース担当特使等が登壇し、また加盟国による声明が発表され、平和の文化の重要性が訴えられました。その後、アンワルル・K・チョウドリ元国連事務次長の進行でパネルディスカッションが行われ、同テーマについての活発な議論が交わされました。
SGIは、NGOグループ「平和の文化のグローバル運動(GMCoP)」の中核メンバーとして、同フォーラムの運営に携わりました。
『私がつくる「平和の文化」』を発刊
女性平和委員会は、2019年、「平和の文化に関する宣言と行動計画」採択20周年を機に、聖教新聞に「私がつくる平和の文化」の連載を開始。3年間にわたり、「平和の文化」の内実となる「多様性の尊重」や「男女平等」「子どもの権利」など多角的なテーマのもと、各界の識者へのインタビューを掲載してきました。
この掲載記事をまとめた小冊子『私がつくる「平和の文化」Ⅰ~Ⅲ』(非売品)を発刊。さらに、2022年11月18日、加筆・再編集された書籍『私がつくる「平和の文化」』が潮出版社から発刊されました。
「平和の文化講演会」を開催
女性平和委員会は、草の根のレベルから「平和の文化」を啓発・促進していくため、2002年から「平和の文化フォーラム」を継続して開催してきました。また、各界で「平和の文化」構築に活躍する有識者を講師に招き、「平和の文化講演会」を2011年より連続して開催しています。2022年は、2月27日に「岐阜空襲を記録する会」代表の篠崎喜樹氏と学芸員の中島裕子氏が「7・9岐阜空襲 当時を生きた女性たち」と題し講演を行いました。
また、2022年10月13日には、チョウドリ元国連事務次長が、東京・新宿区の総本部を訪問し、女性平和委員会の代表との懇談会に出席。「平和の文化」の構築はSDGs達成の土台であり、長年にわたりその啓発・推進に取り組む同委員会の存在は大きな希望であると謝意を表しました。

(2019年8月15日撮影)

戦没者追善勤行法要
創価学会は、青年部の主催で、終戦記念日に「世界平和祈念 戦没者追善勤行法要」を行っています。この法要は1973年、池田先生の提案によって始まり、日本、アジアをはじめ全世界の戦争犠牲者を追悼し、不戦と平和建設への誓いを新たにする機会としてきました。全国では「諸精霊追善勤行法要」として、戦没者の追善を各地の会館や墓地公園等で行っています。2022年は77回目の「終戦の日」を迎えた8月15日、「世界平和祈念の集い」を、東京・信濃町の総本部で開催しました。
被爆体験・戦争体験の継承
創価学会は平和の心を育む取り組みとして各地で被爆や戦争の体験を継承する活動を続けてきました。終戦・被爆から77年の2022年は、沖縄・広島・長崎で証言会や平和の集いを実施しました。
1沖縄青年部が不戦の誓いを継承
沖縄青年部が新たな平和運動の一環として制作に取り組み2020年に完成した「沖縄戦の紙芝居」の貸し出しを、6月から実施。県内の学校や保育園で、紙芝居を使った平和学習が行われました。那覇市の若狭小学校では6月16日、平和について考える授業で紙芝居が朗読され、児童からは「戦争は、絶対に起こしてはならないと改めて感じました」などの感想が寄せられました。
2広島・長崎で被爆証言会
77回目の「原爆の日」を迎えた8月、広島と長崎をはじめ全国で、原爆投下時刻(広島は6日午前8時15分、長崎は9日午前11時2分)を中心に、原爆犠牲者・戦没者の冥福を祈念するとともに、核廃絶を誓う祈りがささげられました。

広島では、7月24日に「ヒロシマ『い(祈る)×ま(学ぶ)×こ(行動する)=そ(創価哲学の体現者)』フェスタ」を開催。紙芝居形式で被爆体験を語り続ける宇佐美節子氏は、「被爆者が味わった苦悩や恐怖を理解することは困難でも、心情を想像し、思いをはせることはできる―――それが平和をつくる第一歩であり、ヒロシマの心を受け継ぎ、行動につなげてほしい」と訴えました。7月30日には第11回「福山空襲・被爆体験を聞く会」で「福山空襲を記録する会」の藤井和壽氏がオンラインで体験を語りました。また、8月6日には広島女性平和委員会が第19回「被爆体験を聞く会」をオンラインで開催し、全国で約37,000名が視聴しました。

長崎では7月26日に、「ピース・フォーラム2022(長崎平和学講座)」が行われ、広島と長崎で被爆した「二重被爆者」の孫である原田小鈴氏が講演しました。8月9日には、「世界平和の集い」が開催され、長崎市の牟田満子氏の被爆証言映像を上映しました。
反戦出版
戦争の惨禍の記憶を語り継ぎ記録していくことこそ、次の世代へ平和の心を継承するための第一歩となります。青年部は、日本の全県を含む3400人に及ぶ戦争体験者の証言・手記を収めた「戦争を知らない世代へ」全80巻を編纂。12年の歳月をかけて高校生を含む全国4000人以上の青年が編纂に携わりました。また、女性平和委員会は「平和への願いをこめて」と題して、戦禍の犠牲になった女性の体験を全20巻471編の手記に収めました。
広島・長崎・沖縄で証言集を発刊
体験・戦争体験を継承し世界へ発信するため、終戦・被爆75年の節目に当たり、広島・長崎・沖縄の未来部と青年部は、平和の心を未来へつなごうとの思いで、2019年から2020年にかけて、沖縄戦の経験者、広島・長崎の被爆者等から体験の聞き取りを実施。それらをまとめた証言集を、2020年秋、それぞれ発刊しました。

『私がつなぐ沖縄のククル(心)』(第三文明社刊)は、8人の体験をまとめたもの。全文英訳付きで、世界へ向けて沖縄戦の悲惨さを発信する内容となっています。『75―未来へつなぐヒロシマの心』(同社刊)は、福山空襲の証言も含め8人の被爆・戦争体験を収録。『大切な青年(きみ)と 未来につなぐナガサキの声』(同社刊)では、7人の被爆体験の他、長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)の吉田文彦センター長のインタビューも掲載しています。

また、2020年10月19日には、これら証言集の発刊を受けて、広島・長崎・沖縄の男女高等部員の代表が「未来部ピースミーティング」をオンラインで開催。「聞き取りをして自分自身が変わったこと」をテーマに活発な議論を行い、記憶の風化が懸念される今、戦争を知らない世代が過去の歴史を学ぶことが平和な未来を創る確かな礎となることを確認し合いました。
被爆証言映像と音声を寄贈
広島と長崎の創価学会は、これまで収録・保存してきた被爆証言の映像・音声等の資料を、両県の国立原爆死没者追悼平和祈念館に208点寄贈しました。(2020年7月30日・2021年8月2日 長崎、2020年7月31日 広島)

創価学会は、青年部や女性部が中心となり、半世紀以上にわたって戦争・被爆証言の聞き取りを実施してきました。広島と長崎の創価学会は360点を超える被爆証言映像と音声を保管しており、こうした貴重な資料をより広く活用できるよう、本人や家族から承諾を得て両祈念館に寄贈したものです。
「沖縄戦の絵」展を開催
沖縄青年部では、沖縄戦体験者が描いた「沖縄戦の絵」の巡回展を、1982年以降、沖縄をはじめ全国各地で開催。これらの絵は、沖縄戦を直接体験した庶民が描いたものであり、米軍や旧日本軍による戦争記録とは異なる民衆(島人)の視点で戦争の実像をとらえた歴史的資料でもあります。

収集開始から40年となる2021年は、県内の学校や企業など19会場で、戦争体験者が描いた「沖縄戦の絵」を展示しました。沖縄戦最後の激戦地となった糸満市の糸満中学校では、「沖縄戦の絵」を使った平和学習を実施。生徒からは「改めて戦争の悲惨さを知った」などの感想が寄せられました。
「SOKAグローバルアクション2030」を推進
青年部は2014年から平和キャンペーンを通し、国内外の諸課題に目を向け、“自身ができる貢献”を啓発してきました。2017年には取り組みの模様が、国連による「青年・平和・安全保障に関する進捗研究」プロジェクトのウェブサイトに掲載されています。2020年からキャンペーン名を「SOKAグローバルアクション2030——青年の行動と連帯の10年」と改め、中長期的な展望に立って活動を継続しています。活動の柱に、①核兵器廃絶、反戦の潮流を拡大、②アジアの友好、③SDGs(持続可能な開発目標)の普及・推進を掲げ、世界市民意識の醸成に努めています。
青年不戦サミット
「最も苦難を味わった広島・長崎・沖縄が平和をテーマに継続的な協議会をもってはどうか」との池田先生の提案を踏まえ、1989年、3県の青年の代表は「3県平和サミット」(青年平和連絡協議会)を広島で開催しました。以来、平和建設のための課題と取り組みについて討議する同サミットを、3県で巡回しながら開催しています(2015年から名称を「青年不戦サミット」に変更)。
「原水爆禁止宣言」65周年の2022年は、9月4日に神奈川・横浜市で開催し、全国の青年部の代表が集いました。
宗教間・文明間対話
この世から「悲惨」の二字をなくしたい――この恩師の願いを胸に、池田先生の世界の知性との文明間対話、宗教間対話は、1600回を超えます。それは、差異を超え、人間と人間を結び、分断や対立を協調と連帯へと導く“地球市民の語らい”にほかなりません。
2022年9月14、15日の両日、第7回「世界伝統宗教リーダー会議」が、カザフスタン共和国の首都アスタナ(旧ヌルスルタン)で行われました。これには世界各地の宗教リーダーのほか、国際機関、各国外交団の代表らと共に、仏教団体の代表として創価学会が招へいを受け、寺崎広嗣副会長が出席しました。同会議は“対話を通じて共存のモデルを構築する”との趣旨で、カザフスタン政府の主催で2003年から開かれてきました。今回のテーマは「パンデミック後の人類の精神的・社会的発展における、世界の伝統宗教のリーダーの役割」。コロナ禍をはじめ気候変動や核戦争の脅威など、危機が高まる時代における宗教の役割を巡り、議論が交わされました。
11月3、4日には、「バーレーン対話フォーラム」が中東バーレーンで開催され、創価学会を含む世界各地の宗教リーダーや国際機関の代表らが参加。宗教間対話の重要性や人類の共存の在り方、友愛の精神を高める方途など、多彩な議題について、パネルディスカッションが行われました。
平和・文化・教育