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オンラインフォーラム「グローバルヒバクシャ――終わらない核被害」

公開日:

グローバルヒバクシャとは?


グローバルヒバクシャという言葉を耳にしたことがありますか?
ヒバクシャというと、広島、長崎の原爆の被害者を思い浮かべる人も多いかもしれません。
しかし、第二次世界大戦以降、世界各地で行われた2000回を超える核実験をはじめ、ウラン採掘など、核兵器の製造の過程で被ばくをさせられたり、放射性降下物の被害を受けていたりしている人が世界各地にいます。こうした人々は「グローバルヒバクシャ」と呼ばれています。

核兵器の問題を考える上で、壊滅的な結末をもたらすその非人道性とはどういうものかを見極めるためにも、こうした世界各地の核被害者に目を向け、幅広い視点から核兵器の問題性をとらえていくことが重要ではないか―そうした思いから、創価学会平和委員会は、6月28日にオンラインフォーラム「グローバルヒバクシャ――終わらない核被害」を開催しました。

ここでは、本フォーラムの概要をご紹介したいと思います。

カザフスタンの核実験被害者の証言映像を上映

フォーラムの冒頭、SGIが制作協力したカザフスタンの核実験被害者の証言をまとめたドキュメンタリー映画「私は生き抜く~語られざるセミパラチンスク~」を上映致しました。

  

動画はこちらからご視聴いただけます。

カザフスタン核実験被害者の証言映像「私は生き抜く~語られざるセミパラチンスク~」

「見つめ直す核問題――グローバルヒバクシャの視野を持って」

長年、マーシャル諸島の核実験被害の現地調査をはじめ、世界の核被害および「グローバルヒバクシャ」について研究されている、明星大学の竹峰誠一郎教授を講師にお迎えし、「見つめ直す核問題――グローバルヒバクシャの視野を持って」をテーマにご講演いただきました。

教授は、核兵器国をはじめとする国家や外交、安全保障政策の観点で捉えられがちな核問題を、核兵器によって、その開発によって被害を受けた人たちを中心に据えて、捉え直していく必要性を指摘。世界では2000回以上の核実験が繰り返され、環境汚染はもとより、住民の強制移住や健康被害が地球規模で広がってしまった。こうした深刻な被害や苦しみは、目に見えにくく、周縁化された地域で起こっているため、しばしば無視される、あるいは小さな問題として扱われてしまう。しかし、こうした核兵器の問題は、環境、気候危機など世界の様々な問題とつながっており、今こそ、グローバルヒバクシャという新たな視点から、核兵器廃絶の取り組みを進めていくことが重要であると主張しました。

マーシャル諸島での核実験被害

続いて、こうした核実験が行われた地域の一つであるマーシャル諸島での被害の実態を概説。マーシャル諸島は1914年から30年にわたって日本の統治下にあり、太平洋戦争が勃発した際には、現地の人も戦乱に巻き込まれました。日本の敗戦後、今度はアメリカに占領され、1946年から58年まで、原水爆の実験がこの地で繰り返されました。ビキニ環礁で23回、エニウェトク環礁で44回もの核実験が実施され、その威力は、広島型原爆の7000倍以上にも及ぶ大きなものだったそうです。
核実験による被害は核実験場の中だけにとどまりません。
ビキニの人たちは、核実験場建設に伴って、移住も余儀なくされます。身体の被害だけでなく、その土地の産物も放射能で汚染され、さらには土地の人々の暮らしまで奪われ、伝統文化そのものが破壊されてしまったのです。

ロンゲラップの事例

ロンゲラップという、第五福竜丸が被災したことで知られる水爆「ブラボー」実験の爆心地から160キロぐらい離れた人たちはどうだったのでしょうか?教授は彼らの話も聞いてこられたそうです。核実験の後、彼らは米軍基地に収容されます。そこで医師が行ったのは、放射線に被ばくした人間に関する研究で、つまり彼らは実験材料にされたのです。核実験およびその後において、自分たちは人として見なされてこなかった、その悔しさが、とりわけロングラップの人たちからは多く聞かれるそうです。まさに尊厳そのものが奪われているのです。
被ばくした人の中には、発病し手術をされた人もいます。しかし「手術をしても全てが取り除かれたわけではない、悲しみは心の中にある」、こんなことも話されていたそうです。まさにこうした被害はなかなか目には見えません。

ここまで紹介してきたことは、アメリカが核の被害を認めた地域の話です。
しかし、その外側に位置している、今なお、核の被害がそもそも認められていない、追跡調査さえもなされていない地域や人たちもいるのです。自分たちも被ばくしている、しかし無視され歴史から消されようとしていると訴える人もいれば、自分たちが、今なお核や放射線に被ばくしていること自体、知らされていない人もいます。彼らは、何か大きな爆弾が爆発し、そこでポイズン(大きな毒物)がまかれ、自分たちの体も島もおかしなことになっていると認識しているにすぎません。それほど、見放されているということです。

グローバルヒバクシャの視野をもって

最後に、教授は、第二次世界大戦以降、そして広島、長崎の原爆投下以降も、核による被害は生み出されており、過去の問題ではないこと、そしてこれらのグローバルヒバクシャの問題に向き合うことが、核兵器廃絶へのもう一つの取り組みであると主張。また核兵器の拡散、開発という言葉を、被害者の視点から置き換えてみると、それは核被害の拡散、ヒバクシャの拡散を意味しており、こうした拡散や開発のもとで、苦しんでいる人がいることを知り、そのために何ができるのかを考えていくことが大切である。その意味において、核兵器禁止条約で謳われている第6条(核被害者に対する援助、環境修復)、第7条(国際協力)は、まさにグローバルヒバクシャの視野をもった重要な取り組みであるとして、講演を結ばれました。

フォーラムには、約300名が参加し、核兵器廃絶への決意を改めて強くするとともに、グローバルヒバクシャへの認識を高める機会となりました。

最後に、参加者から寄せられた声を紹介します。

  

  • これまでグローバルヒバクシャの実態を知らなかった。広島・長崎以外の場所でも被爆者の苦しみが続いていることを知り、心が痛みました。核兵器廃絶を進めていく中で、広島、長崎の被害だけではなくグローバルヒバクシャのことやその事実を伝え広めていく必要があると思いました。
  • 核兵器による被害は、過去や遠い未来にとどまるものではなく、現在進行形の問題であること、核実験は決して遠く離れた場所ではなく、同じ地球上で行われていることを知ることができました。自分に何ができるかを考えていきたいと思います。
  • 今回学んだことを振り返り、グローバルな視点で核被害の恐ろしさを知ることの大切さを身近な人に語ったり、核兵器が絶対悪であることを訴えるなど、今できることから行動をおこしていきたいと思います。

  

*竹峰教授の講演内容(抜粋)は、こちらからご視聴いただけます。

グローバルヒバクシャ――終わらない核被害」講師:竹峰誠一郎教授(明星大学)