「女性と少女にとって世界最悪の場所」――資源国で、今起きていること。

公開日:

創価学会平和委員会主催 映画『女を修理する男』オンライン上映会を通して
――紛争鉱物と性暴力の関係とは

  

私たちがいつも使っているスマホやパソコン、実は、コンゴ民主共和国で起きている紛争や性暴力の原因となっているかもしれない

  

アフリカ中央部にあるコンゴ民主共和国(以下、コンゴ)。
日本から遠く離れたこの国と、私たちが普段使うスマホに、一体どんな関係があるのでしょうか。

国連のSDGs(持続可能な開発目標)推進の一環として、創価学会平和委員会は、「SDGsオンラインシネマシリーズ」と題し、オンライン映画上映会を開催しています。

第1回目として、3月8日の「国際女性デー」を記念し、「男女平等・女性の権利」をテーマに、性暴力被害を受けた女性の治療に長年携わるコンゴのデニ・ムクウェゲ医師(2018年、ノーベル平和賞受賞)を追ったドキュメンタリー映画「女を修理する男」の上映会ならびに講演会を開催(2021年3月)。

NPO法人RITA-Congo共同代表であり、東京大学未来ビジョン研究センター講師の華井和代氏が、コンゴの紛争の歴史や現状、紛争鉱物、またムクウェゲ医師の活動について講演しました。

※本記事は、上映会・講演会の内容をもとに制作しています。

悲劇の背景にあるものとは

映画『女を修理する男』では、「女性と少女にとって世界最悪の場所」と描写されるコンゴ東部で、婦人科医のデニ・ムクウェゲ医師が、暗殺未遂などの迫害にあいながらも、性暴力の被害に苦しむ人々を献身的に治療する姿が映されています。

  

また、性暴力生存者による証言や、加害者の不処罰の問題、希望に向かって活動する女性団体、そして性暴力の悲劇の背景にある「紛争鉱物※」の実態も描かれています。

<映画『女を修理する男』予告編>※一部刺激の強いシーンがあります

1999年、ムクウェゲ医師はパンジ病院を設立。

以来約20年にわたって、5万人以上の性暴力被害者の治療と心理的・法的支援にあたってきたムクウェゲ医師は語っています。

  

「紛争は女性の体を踏み台にして行われます。私は過去15年間、女性への暴力行為を目撃し続けてきました。その残忍な犯罪を見過ごすことはできません。」

  

――映画「女を修理する男」より

  

※「紛争鉱物」とは・・・当該鉱物の採掘・流通にともなう利益が国軍、あるいは武装勢力によって紛争資金に利用されている鉱物をさす。

「紛争の手段・武器」としての性暴力

NPO法人RITA-Congo共同代表であり、東京大学未来ビジョン研究センター講師の華井和代氏は、紛争鉱物と性暴力の関係性について、このように語っています。

<アフリカの紛争資源問題を研究してきた華井和代氏>
<アフリカの紛争資源問題を研究してきた華井和代氏>

――紛争鉱物は主に、スズ、タンタル、タングステン、金を指し、資源豊かなコンゴでは、これらの鉱物が、武装勢力および国軍部隊の資金源になっています。

鉱物採掘においての事故や人権侵害などに加え、鉱物をめぐっての紛争も生じています。

そうした紛争の手段の一つとなっているのが、武装勢力による鉱山周辺の地域住民への性暴力です。紛争における性暴力は、性欲の問題ではなく、武装勢力などが力を誇示するための手段で、住民に精神的トラウマを与えたり、コミュニティを破壊するために用いられます。

また、性暴力に関与する人の3割は、本来住民を守る立場にある国軍兵士や警察だということも重要な事実です。

今、私たちができること

――紛争の大きな要因となっている紛争鉱物は、私たちが普段使用する、スマートフォンなどの電子機器にも使用されています。

現在、鉱物管理の体制整備が進んでおり、公正を求める私たち消費者の力によって、企業による対策も促進されています。ですが、今なおコンゴの状態の改善には至っておらず、紛争状況は深刻さを増しています。2020年には約5700名が紛争に関わる暴力で命を奪われました。

  

今、私たちにできることとして、「知ること、語ること、行動すること」が重要です。

  

まず紛争鉱物の問題や性暴力の問題が存在するのだと認識し、沈黙をやぶること、周囲に知識を広めていくことが第一歩ではないでしょうか。

  

「私たちは何をすればいいのでしょうか。あなたは何が出来るのでしょうか。 まず第1に、私たち全員が同じ方向を向いて行動することが重要です。行動とは選択なのです。(中略)行動を起こすことは、無関心に対して「ノー」と言うことを意味します。」

  

――2018年12月 ノーベル平和賞授賞式でのムクウェゲ医師の講演より


映画『女を修理する男』

<ユナイテッドピープル提供>

※映画邦題に関して
https://www.rita-congo.org/jp-title
※一部刺激の強い描写もございます。12歳以下のお子様のご鑑賞は、 保護者の方、主催者の方の自主的なご判断をお願いいたします 。

  

本記事に関してのご意見・ご感想は、創価学会平和委員会【contact@peacesgi.org】までお寄せください。   また本記事について、ツイッターやインスタグラムで『#SDGsシネマ』『#希望と行動の種子』と付けて、ぜひ身近な方とご共有ください。

この記事の取り組みは、以下の目標に寄与することを目指しています

●目標5. ジェンダー平等を実現しよう
ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る

●ターゲット5.2
人身売買や性的、その他の種類の搾取など、すべての女性および女子に対する、公共・私的空間におけるあらゆる形態の暴力を排除する。

●目標12. つくる責任 つかう責任
持続可能な消費と生産のパターンを確保する

●ターゲット12.2
2030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。

●目標16. 平和と公正をすべての人に
持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する

●ターゲット16.1
あらゆる場所において、すべての形態の暴力及び暴力に関連する死亡率を大幅に減少させる。
●ターゲット16.2
子どもに対する虐待、搾取、取引及びあらゆる形態の暴力及び拷問を撲滅する。