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私の「当たり前」は全ての人の「当たり前」とは限らない――「誰一人取り残さない」社会へ行動の一歩を

公開日:

創価学会平和委員会主催 映画『バベルの学校』オンライン上映会を通して
――移民・難民・外国人が直面する現実とは

これまで、学校や職場、地域などで、自分の国籍や文化について、周囲との違いを感じたことはありますか?

日本社会において、マジョリティ(多数派)である日本人は、日本人であるが故に、多くの利益を享受し、国籍や人種による差別を経験する機会は少ないかもしれません。例えば、地域の図書館に行けば、たくさんの日本語の本があり、自由に読むことができますが、外国語が母語の子どもは、母国語の本を見つけることが困難です。

マジョリティにとって「当たり前」であることが、マイノリティ(少数派)にとってはそうではないために困難が生じ、周囲からのサポートを得ることさえも容易ではありません。「そうした人が周囲にいないか」と、一人ひとりが思いを馳せ行動することが、SDGsに掲げられている「誰一人取り残さない」社会の実現に繋がると考えます。

国連のSDGs(持続可能な開発目標)推進の一環として、創価学会平和委員会は、「SDGsオンラインシネマシリーズ」と題し、オンライン映画上映会を開催しています。

第2回目として、フランスの中学校の適応学級を追ったドキュメンタリー映画『バベルの学校』の上映会ならびに講演会を開催(2021年4月)。

大阪大学大学院・人間科学研究科附属未来共創センターの榎井縁特任教授が、日本で暮らす外国人が置かれている状況について解説し、多様な社会の展望について講演しました。

※本記事は、上映会・講演会の内容をもとに制作しています。

映画『バベルの学校』

<映画『バベルの学校』 予告編>

映画『バベルの学校』では、20国籍、24人の子供たちがともに学ぶ、フランスのある中学校の適応学級の様子が映されています。母国、文化、宗教、フランスに来た理由、いずれも異なる生徒たちが、時には衝突しながらも、ともにフランス社会を理解していこうとする姿を追ったドキュメンタリーです。

フランスの公立中学には、普通学級と適応学級があり、適応学級は、移民の子供たちが、フランス社会に適応していくための教育を行っています。学級担任のブリジット・セルヴォニ先生は、生徒一人一人の背景や個性を考慮して、それぞれが抱える葛藤や悩みを乗り越え、力強く生きていけるよう、生徒やその家族と真摯に向き合い、励ましを送ります。

映画の最後には、生徒たちが、短編映像の制作を通して、自分たちの「成長」を確かめ、努力をたたえあうシーンが盛り込まれています。

「誰一人取り残さない」社会

<大阪大学・榎井縁特任教授>

大阪大学大学院・人間科学研究科附属未来共創センターの榎井縁特任教授は、次のように解説と指摘をしています。

――日本で「外国人」という言葉が使用される際に、「拝外と排外」という二重構造があり、崇められる対象になる外国人がいる一方で、治安対策等、排除の対象となる外国人がいます。外国人への支援だけでは解決できない、人々の意識面の変革が必要です。

そのために一人ひとりにできることは、外国人を社会の一員として認め、違いを尊重しながら、困った時に助けていけるような関係性を築いていくこと。マイノリティの方々が、地域にそうした繋がりを感じられることが、外国人と日本人の双方が、互いに必要な存在であると認識することに繋がり、ひいては、ともに共生の社会を築いていく土台となります。

また、外国人のなかには、「日本人に迷惑をかけたくない」と自制してしまう人が見受けられます。あらゆる人々を包摂する社会を築くために、「当たり前」や外国人に対する偏見を乗り越えること――“Unlearn”(アンラーン、「学びほぐし」の意)していくことが重要です。

私たちにできること

本映画に登場するセルヴォニ先生は、生徒との関わりのなかで心がけていることについて、このように語っています。

  

「生徒の声に耳を傾け、励まし続けること。生徒の心のなかにあることを聞き出すこと。各生徒の価値を引き出し、自信を持たせること――この3つが重要です」

  

  

――フランス映画祭2014インタビューより

  

どのような環境にあっても、まずは、「自分の持つ通念や偏見で誰かを傷つけてはいないか」、「声をあげられずに困っている人はいないか」と、自分自身や周囲を見つめ、目の前の一人に寄り添い、信頼と尊敬の関係を築いていく行動こそ、本当の意味で、多様性を認める社会の実現に繋がるのではないでしょうか。

創価学会平和委員会が取り組む「SDGs・気候危機アクションキャンペーン」の一環である、「SDGsオンラインシネマシリーズ」では、参加者の皆様に、SDGs推進のために日常に取り入れていきたい「マイアクション(私の行動)」をシェアしていただいています。

参加者の「マイアクション(私の行動)」

本シリーズは、参加してくださった皆様に、「行動変容」のきっかけを提供することを目標としています。
ここでは、参加者から寄せられた日常に取り入れていきたい「マイアクション(私の行動)」を紹介します。

  

「マイアクション(私の行動)」

◆小学校の教員をしています。多様性を大切にする教育を心がけています。(50代男性)

◆外国人児童には、学習だけでなく生活の上でも、学校からの配布物についての解説をするような支援をする人が必要だと思います。また、保護者に生活言語をもっと理解してもらうことが必要だと思います。そのようなことから、日本語教師を目指して、通信教育を受けています。(60代女性)

◆自分のまわりにいる家族、友人、地域の方々を大切に、差異や違いを越えた「世界市民」を意識しながら、生活していきたいと思います。(50代女性)

◆自分の考えや生き方と違う声に耳を傾けること。知らないことを知る努力をしたいと心がけています。(50代女性)

◆放課後子ども教室の運営に携わっています。すべての子がのびのびと生きていける社会を目指して頑張ります。(60代女性)

まず行動の一歩として「知る」こと、そして、その「学び」を日常に取り入れ、自分の「行動」としていくこと――SDGsが掲げる「誰も置き去りにしない」世界へ、一人でも多くの方が「マイアクション」を起こすきっかけとしていただけるよう、本シリーズは今後も継続してまいります。

※今後の開催予定につきましては、随時、聖教新聞や、創価学会公式インスタグラム等で告知いたします。


映画『バベルの学校』

<ユナイテッドピープル提供>

本記事に関してのご意見・ご感想は、創価学会平和委員会【contact@peacesgi.org】までお寄せください。   また本記事について、ツイッターやインスタグラムで『#SDGsシネマ』『#希望と行動の種子』と付けて、ぜひ身近な方とご共有ください。

この記事の取り組みは、以下の目標に寄与することを目指しています

●目標4. 質の高い教育をみんなに
すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し生涯学習の機会を促進する

●ターゲット4.1
2030年までに、すべての子どもが男女の区別なく、適切かつ有効な学習成果をもたらす、自由かつ公平で質の高い初等教育および中等教育を修了できるようにする。
●ターゲット4.7
2030年までに、持続可能な開発のための教育および持続可能なライフスタイル、人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、グローバル・シチズンシップ、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技術を習得できるようにする。