年間800万トンのプラスチックが海に――私たちの未来のために変革の波を起こそう

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創価学会平和委員会主催 映画「プラスチックの海」オンライン上映会を通して
――プラスチックと気候変動の関係とは

  

私たちの環境を取り巻く、プラスチック。安価で耐久性に優れたプラスチック製品は、生活に欠かせない存在となり、これまで大量の生産・消費が繰り返されてきました。

ただ残念ながら、年間800万トンものプラスチックが海に流れ込んでいると言われており、2050年までに海にいる魚の重量を超えてしまうのではと予測されています。

私たちが捨てたプラスチックの一部が、海の生き物を苦しめる原因となってしまっているということを知っていますか?

国連のSDGs(持続可能な開発目標)推進の一環として、創価学会平和委員会は、「SDGsオンラインシネマシリーズ」と題し、オンライン上映会を開催しています。第3回目として、国連本部でプレミア上映された話題作、映画「プラスチックの海」の上映会ならびに講演会を開催(2021年7月・8月)。

NPO法人気候危機対策ネットワークの代表であり、プロダイバーとして意識啓発活動に取り組まれている武本匡弘氏が、気候変動によるサンゴなどの海洋生態系への影響、気候正義、海洋性プラスチック、またご自身の活動について講演しました。

※本記事は、上映会・講演会の内容をもとに制作しています。

お腹がプラスチックで満たされて…

映画「プラスチックの海」では、映画監督のグレイグ・リーソン氏が、海洋学者や環境活動家とともに、プラスチックごみが海洋生物をはじめ地球環境に与える影響を調査する模様が描かれています。

<映画『プラスチックの海』予告編>

  

また海洋生態系や人体への影響だけでなく、先進国から途上国へプラスチックごみが輸出されていることにも触れられており、プラスチックを取り巻く多様な社会問題が映されています。

映画の中で、魚や海鳥が、5ミリメートル以下の小さなプラスチックであるマイクロプラスチックをどれだけ摂取しているかを調べるために、研究者が海鳥の胃袋にメスを入れると、胃から大量のプラスチックが取り出されるといった衝撃的な場面があります。

私たちは、プラスチックごみの影響を受ける魚を食べることで、気づかないうちにマイクロプラスチックを摂取していますが、人体や胎児への影響は未だ解明されていません。この映画は、このまま対策を講じなければ、人体に危機的な影響が起こりうると警鐘を鳴らす内容となっています。

<プラスチックが海鳥の胃を満たす>

  

“つけ”を払わせている日本

NPO法人気候危機対策ネットワーク代表の武本氏は、1年のうち2か月間はヨットで太平洋をわたり、島しょ国における気候危機の影響や海洋環境の調査を行っています。講演会では、この経験をもとに、「気候変動・気候危機・気候正義」をテーマに以下のように語っています。

――私はダイバーとして40年間、世界の海に潜ってきましたが、近年、海水温の上昇などが原因でサンゴの白化現象が至る所で発生しており、既に世界の7割以上のサンゴが白化していると言われています。

<白化現象が進むサンゴ礁>

  

またマーシャル諸島に立ち寄った際、ヒルダ・ハイネ前大統領と会見の機会をいただきました。気候変動・地球温暖化による海面上昇で住むところを失った人々のために、同国はニュージーランド、オーストラリア、アメリカに気候難民の受け入れを要請しています。

マーシャル諸島のような、気候変動の要因となる二酸化炭素をほとんど排出していない国々が、海面上昇や自然災害などの被害を最も受けており、太平洋に浮かぶ島々に暮らす人達に“つけ”を払わせているのが、先進国に住む私たちです。

またプラスチックの利用について、「ちゃんとリサイクルしているから大丈夫でしょう」と思う方も多いかもしれませんが、実は日本は、プラスチックごみのリサイクルがほとんどできていない国です。

リサイクルといっても、燃やす際に出る熱を回収した形での再利用が8割ほどにのぼり、その過程で気候変動の原因である大量の二酸化炭素を排出しています。

とはいえ、プラスチックの使用をいきなり止めることはできませんから、ペットボトルやレジ袋など、マイボトルやエコバックなどに代替できるものから使用を減らしていくことが何より重要です。

知ることが希望

――近年、巨大台風の発生やそれに伴う被害の激甚化が私たちの生命を脅かしていますが、プラスチック問題はその原因の一つであるということを忘れないで欲しいです。

  

気候変動のような大きな問題に立ち向かうために、まずは知ることが希望です。そして、年代を超えて話し合いの場を持つことで、独創的なアイデアが生まれます。そして、そこで出た意見を、声に出して発信していただきたいと思います。

参加者の「マイアクション(私の行動)」

創価学会平和委員会が取り組む「SDGs・気候危機アクションキャンペーン」の一環である、「SDGsオンラインシネマシリーズ」では、参加者の皆様に、行動変容」のきっかけを提供することを目標としています。「ここでは、参加者から寄せられた日常に取り入れていきたい「マイアクション(私の行動)」を紹介します。

◆ペットボトルは使用せず、マイボトルを持ち歩くようにしたいと思います。(20代女性)

◆スポンジを自然に返るもの(ヘンプ・へちま等)にし、竹歯ブラシ、布ナプキン、液体石鹸から固形石鹸(シャンプー類も含めて)に変えていきたいと思います。(30代女性)

◆無駄な食糧の廃棄を減らすために、苦手な食べ物も捨てずにしっかり食べるようにします。(50代女性)

まず行動の一歩として「知る」こと、そして、その「学び」を日常に取り入れ、自分の「行動」としていくこと――SDGsが掲げる「誰も置き去りにしない」世界へ、一人でも多くの方が「マイアクション」を起こすきっかけとしていただけるよう、本シリーズは今後も継続してまいります。

※今後の開催予定につきましては、随時、聖教新聞や、創価学会公式インスタグラム等で告知いたします。

本記事に関してのご意見・ご感想は、創価学会平和委員会【contact@peacesgi.org】までお寄せください。
また本記事について、ツイッターやインスタグラムで『#SDGsシネマ』『#希望と行動の種子』と付けて、ぜひ身近な方とご共有ください。

  


  

  

  

  

映画「プラスチックの海」

  

この記事の取り組みは、以下の目標に寄与することを目指しています。

●目標12. つくる責任 つかう責任
持続可能な消費と生産のパターンを確保する

●ターゲット12.2
2030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。
●ターゲット12.4
2020年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質や全ての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。

●目標13. 気候変動に具体的な対策を
気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る。

●目標14. 海の豊かさを守ろう
海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する。

●ターゲット14.1
2025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する。