2023.05.27
キッシンジャー博士と池田大作先生の対談集『「平和」と「人生」と「哲学」を語る』
2018.08.31
アメリカの政治学者で、政治家としても外交の分野で活躍した、ノーベル平和賞受賞者の、キッシンジャー博士と池田先生との対談集『「平和」と「人生」と「哲学」を語る』を紹介します。

キッシンジャー博士は、アメリカのニクソン、フォード両大統領のもとで国家安全保障問題担当補佐官、国務長官として活躍しました。
二人の最初の出会いは国務長官だった博士のもとを池田先生が訪れたことに始まります(1975年)。その後1979年、1981年、1986年と会見を重ね、1987年に本書が発刊されました。
発刊時期は、米ソの和解ムードの時期であり、ドイツのベルリンの壁崩壊の2年前に該当する時期にあたります。
対談時(1986年)の二人の年齢は、キッシンジャー博士63歳、池田先生58歳。
博士はドイツ系アメリカ移民として知られ、ユダヤ人の家系です。15歳のときヒトラー政権下でのユダヤ人迫害から逃れるために着の身着のままでニューヨークに来た経歴を持っています。
ハーバード大学および同大学院を卒業後、同大学教授として教鞭をとるなか、政治の世界にスカウトされました。
偉大な指導者の特徴は「洞察力」と「勇気」
本書では当時の時事的事柄を反映した記述も見られる半面、タイトルにあるように「人生」や「哲学」といった、博士の個人的側面を浮き彫りにしているのも特徴です。
特に、アメリカの国務長官として多くの実績を残した博士の人物評価の基準などについて語られた部分は、歴史的にも貴重な記録として読めます。
博士は印象に残る人物として、元・中国首相の周恩来、元エジプト大統領のサダト、元フランス大統領のドゴールの3人を挙げ、偉大な指導者の特徴として、「洞察力と勇気があるかどうか」を指摘しており、池田先生も周恩来について印象に残っている点で「私も同じです」と語っています。
相手の「人格」を理解することの重要性
キッシンジャー博士は、重要な交渉の際、相手の「人格」を理解することがまず極めて重要になると振り返ります。
そのために会談の初めには、たいていテーマとは関係のない哲学的な問題や歴史的な問題を語ることで、相手の人物を理解しようと努めた、といったエピソードも語られます。
キッシンジャー博士は、平和への貢献を志向する者にとっては、「哲学」と「歴史」の研究こそが最上の準備になるとも指摘しています。
それらを受けて、池田先生は歴史上の優れた政治家として、古代インドのアソカ王、カニシカ王の治政を紹介しています。
「20世紀」の総括と「21世紀」を生きる青年への期待
本書は、20世紀まで10数年を残した時点の対談ですが、20世紀の特徴として、①社会主義国家の出現と②核時代の到来、さらに③人類が初めて宇宙に進出したことが挙げられています。
当時はソ連でチェルノブイリ原発事故が起きた直後であり、核エネルギーの管理が問題となっていた時期だったことがわかります。
また中東和平問題について、池田先生があくまで具体的な交渉は当事者同士の話し合いによって決定されるべきと主張するなど、30年以上すぎたいまもそのまま通用する事柄が論じ合われています。
後半はキッシンジャー博士が思想的感化を受けたとされる著名な哲学者のスピノザやカントなどが取り上げられ、文化的な色彩が見られますが、本書の最後も、カントの平和論で結ばれています。
「平和」を模索して行動した学者・政治家と仏法者との対話には、青年への熱い期待とメッセージがこめられています。
【対談者紹介】 ヘンリー・A・キッシンジャー(Henry A. Kissinger)
1923年ドイツに生まれる。15歳で家族とともに渡米。1943年、米国に帰化し市民権を得る。1946年ハーバード大学政治学部に入学、19世紀の外交史を専攻。同大学院を終了後、講師・准教授・教授と昇進。
1969年ホワイトハウスに入り、国家安全保障問題担当補佐官、国務長官を歴任。
周恩来、毛沢東、ブレジネフなどと精力的に会談。ベトナム和平の功績により、1973年「ノーベル平和賞」受賞。
著書に『キッシンジャー激動の時代』ほか。
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