ミハイル・ズグロフスキー博士と池田大作先生の対談集『平和の朝へ 教育の大光-ウクライナと日本の友情』

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先日(2017年12月10日)、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)に2017年のノーベル平和賞が授賞されました。

これは、核兵器禁止条約の採択に尽力したことが評価されての受賞であり、SGI(創価学会インタナショナル)の代表も国際パートナーとして出席しました。

今回は、核兵器の廃絶について、ウクライナ国立キエフ工科大学のミハイル・ズグロフスキー博士と池田大作先生が話し合われた対談集『平和の朝へ 教育の大光-ウクライナと日本の友情』を紹介します。

平和の朝へ-教育の大光 ミハイル・ズグロフスキー 池田大作
『平和の朝へ 教育の大光-ウクライナと日本の友情』(第三文明社)

  

ズグロフスキー博士は、ソ連邦崩壊後、独立後間もない激動の時代に、国内最大の工科大学であるキエフ工科大学の総長を務めました。さらに1994年から1999年にかけての5年間は、同国の教育大臣として、抜本的な教育改革に取り組みました。

ソ連時代、ウクライナはソ連の科学技術を支える「頭脳」でした。

例えば、ソ連の宇宙船製造、世界最大級の飛行機、初期のコンピューター、精密機械製品などの多くは、ウクライナの工業力と科学教育のたまものとされています。

キエフ工科大学はこれまで約30万人の卒業生を社会に送り出した理工系大学の名門。その中にあって、ズグロフスキー博士は最先端の数学や人工頭脳学などを専門とする世界的な科学者の一人として知られています。

ウクライナが始めた核放棄を世界の潮流に

ウクライナと日本は核の被害国という共通の体験をもっています。

ウクライナは1986年のチェルノブイリ原発事故で大きな被害を受けた一方、日本は唯一の戦争被爆国です。

さらに本書発刊間際の2011年には、日本で東日本大震災が発生。
二人はただちに「あとがき」への加筆を決め、震災により被災された方々へのお見舞いの一文を綴っています。

そうしたウクライナだけに、ソ連から独立後に引き継いだ原子爆弾の数は1900個以上と世界第3位の数となりましたが、自ら核兵器を「廃棄」したことで知られています。そして96年に「完全非核化」を達成しました。

ズグロフスキー博士は「ウクライナが始めた核放棄が、いつか世界の潮流となることを願います」と願望。池田先生も「最終的には核兵器の禁止条約を成立させること」との道筋を示しました。

本書の発刊から数年を経て、2017年7月7日に、ニューヨークの国連本部で、加盟国の3分の2に近い賛成で「核兵器禁止条約」がついに採択されたことは感慨深いできごとです。

現代人は平和の哲学を必要としている

ズグロフスキー博士は、20世紀を「科学の飛躍的発展と野蛮な戦争の悲劇が隣り合わせた時代」と総括しています。

さらに「世界の科学技術が進歩しても、それは人間の成長、精神性、道徳性、文化性を高めるためにはほとんど何の役にも立っていない」と言及。

そのため、現代人は、平和の哲学を必要としていると主張し、世界を1つにつなぐ哲学が待望されると語っています。

その上で博士は、自国の文化を土台としつつも、他の文化に開かれた目を養っていくような教育が要請されると述べています。

それを受けて池田先生は、「郷土民」「国民」「世界民」という3つの自覚が大事であり、この3点をバランスよく調和させゆく教育こそが「世界市民」の育成に不可欠であると述べています。

最後に二人は青年への熱い期待の思いを語り、本書を結んでいます。
核廃絶への思いを持つ人をはじめ、平和を願うすべての人におすすめの対談集です。

  

【対談者紹介】 ミハイル・ズグロフスキー(Михайл,Згуровский)

1950年1月30日、ウクライナ・テルノーポリ州生まれ。ウクライナ国立キエフ工科大学総長。同大学附属「応用システム分析研究所」所長。工学博士。同大教授兼副総長を経て、1992年から同総長を務め、ウクライナ教育大臣(1994年~1999年)として教育改革に尽力。

サイバネティックスおよびシステム分析、地球情報学、数理地球物理学や、社会経済問題への応用分野で活躍し、受賞多数。ウクライナ、イタリア、エストニア、ベトナムの国家勲章を受章。

専門分野で300本以上の論文や教科書を執筆し、ウクライナ科学アカデミー『システム研究と情報技術』誌編集長も務める。