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ノーマン・カズンズ博士と池田大作先生の対談集『世界市民の対話-平和と人間と国連をめぐって』

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先月(2017年7月)、国連で核兵器禁止条約が採択されました。
原爆投下直後から、核兵器廃絶を訴え、広島の原爆被害者救済にも立ち上がったアメリカ人のジャーナリストが、ノーマン・カズンズ博士です。

カズンズ博士と池田大作先生の対談集『世界市民の対話-平和と人間と国連をめぐって』を紹介します。

『世界市民の対話-平和と人間と国連をめぐって』 ノーマン・カズンズ 池田大作
『世界市民の対話-平和と人間と国連をめぐって』(聖教文庫)

  

カズンズ博士は、池田先生より一回り以上も年上です。

アメリカで長年にわたって総合評論誌『サタデー・レビュー』の編集長を務めたほか、「世界連邦協会」会長として国連強化運動に尽力。

さらに1977年にはカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)医学部教授に就任するなど、アカデミズムの世界でも幅広く活躍しました。

本書の発刊は1991年。ソ連にゴルバチョフ書記長が登場して数年、米ソ対立は緊張緩和に向かい、89年にはベルリンの壁が崩壊するなど、東西冷戦が終結。

時代は明るい方向に進んでいるように見えました。そうした時代の「転換期」に編まれた対談集です。

広島の取材で心に刻んだ原爆の残虐性

冒頭部分で、カズンズ博士が戦後の広島を取材で訪問し、原爆の残虐性を心に刻んだこと、被爆した日本の少女たちをアメリカで治療させるために奔走したことなどが紹介されています。

原爆孤児の救済にも尽力した博士は、広島市の特別名誉市民に。広島市の平和記念公園には、被爆者支援への尽力をたたえ、「ノーマン・カズンズ氏記念碑」が建っています。

まさに「行動するジャーナリスト」と言われるゆえんです。

また「世界市民」については、それまでの教育は人々に“部族意識”を植え付けるものにすぎなかった点に言及。今後は“人類意識”を啓発するための教育の必要性を強調しています。

「国家主権」から「人類主権」への価値観の大転換

本書では、「国益から人類益へ」、「国家主権から人類主権へ」という、価値観の大転換を説いているところにも特徴があります。

人類社会の展望として、世界連邦化の必要性が論じられ、紳士協定にすぎない現在のような「国際法」ではなく、現実に国家の主権を制限するための「世界法」の必要性を論じています。さらに国連をどのように変革していくのかという具体的な論議も。

国連では人口の大小に関係なく一つの国家に一票しか与えられていない制度矛盾を解消するため、池田先生は国連を上院と下院の二院制にする案を紹介。

また、カズンズ博士も、国連本部の下に「地域別の国連」を設け、国家、地域単位の国連、世界連邦化した国連の3層制にする案を提案しています。

本書の主要テーマは「世界市民育成」と「国連改革」

最後に博士は、今後は「人類共同体に仕える競争」を提唱。かつて牧口常三郎初代会長が唱えた「人道的競争の時代」と匹敵する内容であるのが興味深いです。

「世界市民育成」と「国連改革」が主要テーマとなった本書は、現在も色あせない内容となっております。

カズンズ博士は、「人間の最大の悲劇とは何か。それは、死そのものではない。肉体は生きていても、自分の内面で大切な何かが死んでいく。この“生きながらの死”こそ悲劇」と述べています。

博士から本書に掲載するための序文が池田先生の元に届けられたのは逝去の11日前。
最後まで行動し続けた博士の遺言ともいうべき一書となりました。

  

【対談者紹介】 ノーマン・カズンズ(Norman Cousins)

1915年、アメリカに生まれる。コロンビア大学卒業後、30年間、「サタデー・レヴュー」誌の編集長。

この間、ケネディ大統領の特使として、ソ連のフルシチョフ首相と会い東西の対話を推進。また、世界連邦主義者世界協会会長に就き、国連の強化に当たる。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)医学部教授を歴任。

著書は『ノー・モア・ヒロシマ』『人間の選択』など多数。1990年に没。

  

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