王蒙氏と池田大作先生の対談集『未来に贈る人生哲学-文学と人間を見つめて』

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池田大作先生と現代中国を代表する作家・王蒙氏との文学や芸術を通した対談集『未来に贈る人生哲学-文学と人間を見つめて』を紹介します。

『未来に贈る人生哲学-文学と人間を見つめて』 王蒙 池田大作
『未来に贈る人生哲学-文学と人間を見つめて』(潮出版社)

  

王蒙氏は池田先生の6歳年下ながら、戦争体験をもつという意味では同世代に当たります。

19歳で小説『青春万歳』で名を知られるようになり、1989年に文化相を辞めて創作に専念。
その後も多くの作品を発表し続け、中国を代表する文豪となりました。

「精神的な富」を豊かにする「人間革命」という思想

本書で池田先生は、王氏が20世紀後半は科学技術の進歩と人間精神の貧困とが相まって進んだ時代であると洞察していることを紹介し、「精神的な富」を豊かにしていく必要性についてふれています。

王氏も、「どのように、愛と感謝の心、信義と誠実さ、謙虚な心を培っていけばよいのか」と問題提起しています。

池田先生が、「だからこそ、永続する精神革命、人間革命が必要」と紹介すると、王氏も、人間革命という思想と、中華文化は共通部分があると応じます。

そして、「事の原因は自分自身に求めるべきであり、社会や環境のせいにしたり、他人を批判したりするべきではない」との示唆を導き出します。

中国の四大古典小説を紹介

本書では、中国の四大古典小説『紅楼夢』『三国志』『水滸伝』『西遊記』がそれぞれ章立てされ、それぞれのストーリーや登場人物の人間性についても紹介されています。

池田先生は、『紅楼夢』の登場人物を通し、「人間は葛藤や憎悪、欲望など、心の闇に縛られている限り、真実の自由は得られないし、確かな幸福の道を歩むこともできない」と語ります。

自己を見つめなおすことが中国思想の最大の課題であり、仏法とも共鳴するテーマであることが語られています。

未来の青年たちへ贈る「希望の道標」

王氏は、子どもの頃は父母の不和に悩み、さらに戦争に翻弄される青年時代を送りました。

ようやく願いがかなうかと思ったころに、文化大革命で「いきなり汚名を着せられ」、29歳から45歳までの働き盛りの時期に、辺境の地に追いやられました。

そうした逆境の中で、他人が自分から奪うことのできなかったものこそ「学ぶということ」だったと回想しています。

作家としての執筆や社会活動ができなくなった代わりに、ウイグル語を学ぶよい機会になったと、自身の体験を語っています。

こうした「苦難こそ実はチャンス」との考えに、池田先生も同調しています。

王氏の最も好きな言葉は「青春時代」。
青年へのメッセージとして、「青春はあっという間に過ぎ去ってしまうが、青年時代を過ぎてから、青年時代にできなかった多くのことができる。青春期にむやみに事を急ぐ必要はない」、「青春期には、青春期にしかできないすべてのことをやり抜くべき」ともアドバイスしています。

本書の最後で、池田先生は「これからの日本と中国の青年たち、世界の青年たちが、新たな友情を結び、勝利と幸福の人生を生きる上で、希望の道標となり、精神の糧となれば幸いです」と語っています。

青年論、友情論、文学論など、青年向けの示唆に富む珠玉の言葉が散りばめられた対談集です。

  

【対談者紹介】 王蒙(Wang Meng)

作家。1934年、北京生まれ。19歳で小説『青春万歳』を著し、『組織部にやってきた若者』で注目を集める。反右派闘争、文化大革命のなか、執筆の権利を奪われ、1963年から中国西北端の新疆で生活。1978年に北京に戻り中国作家協会に復帰。

文芸誌『人民文学』の編集長、中国作家協会副主席、中国共産党中央委員、全国政治協商会議常務委員、文化相など重職を歴任。1988年に文化相の辞意を表明し、翌1989年に受理され創作に専念。

著書は、邦訳された『胡蝶』『淡い灰色の瞳』『応報』のほか多数。現代中国の文学界の重鎮として国内外で活躍を続ける。

  

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