男声合唱とピアノのための「三つの悲歌」
しなの合唱団

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作曲家・田中達也氏による委嘱作品『三つの悲歌』。

『報告(ウルトラマリン第一)』『海の非情』『死ト現象(ウルトラマリン第三)』の3曲からなる本作品は、“日本のランボー”とも称される詩人・逸見猶吉氏の代表作を軸に構成されています。

2018年11月に行われた「第71回全日本合唱コンクール全国大会 大学職場一般部門 同声合唱の部」においては、自由曲として第3楽章『死ト現象(ウルトラマリン第三)』を演奏し、3年ぶり5度目の金賞を受賞することができました。

足尾銅山鉱毒事件による廃村をはじめ、詩人自身が幼少期や青年期に経験した出来事は、詩作ひいては精神性に大きな影響を与えました。本作品では、それらに対する反骨精神や宿命などを綴った荒々しくも鋭い言葉の数々を、粛然かつ疾走感のあるメロディで紡ぎます。

報告(ウルトラマリン第一)
曲の全編にわたり、ホモフォニック(和声、和音)な声部進行が貫かれ、詩句の強さを際立たせています。
ゴツゴツとしたピアノパートの音形と和声進行が連結し、凄みをはらんだ詩句が語りのように乗せられます。

海の非情
第1楽章とは一転し、題名通り“海”のうねりを思わせるピアノパートが旋律線を導きます。
後半では、第3楽章の和声進行が断片的に現れ、終曲へのつながりを予感させます。

死ト現象(ウルトラマリン第三)
第1楽章のテーマである「ウルトラマリン」に再び戻り、一層の凄みを増す詩句が綴られます。
主部における3/4拍子やAllegroのテンポ設定は、何もかもを振り切って疾走するかのようですが、詩人の生い立ちや歴史的背景を鑑みると、決して爽快なものではないことが伺えます。
曲はいくつもの展開を経て再び主部へ回帰しますが、突然の切断をもって終わります。

しなの合唱団

1969年9月14日「しなの合唱団」として結成。1997年東京都合唱コンクールに初めて挑戦しました。

2005年には東京都代表として、第58回全日本合唱コンクール全国大会に初出場。2007年には同コンクールで初の金賞を受賞し、2013年から2015年まで3大会連続金賞を受賞しました。2018年には5度目となる金賞を受賞しています。

コンクールへの挑戦の他にも、定期演奏会やファミリーコンサートの開催、イベントへの出演やレコーディングなど、活動は広範に渡っています。

特に東日本大震災の被災地支援の活動として開始した「希望の絆」コンサートは、2014年3月の福島県郡山市を始め、宮城県・福島県・岩手県の各地で計100回以上の公演を数え、さらに熊本地震・北海道胆振東部地震・西日本豪雨の復興支援として熊本県・北海道・愛媛県の被災地域でも開催してきました。

団員は、首都圏在住の青年メンバーで構成されています。