ゴルバチョフ氏と池田大作先生の対談集『二十世紀の精神の教訓』

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ミハエル・S・ゴルバチョフ・ソ連初代大統領と池田大作先生の対談集『二十世紀の精神の教訓』を紹介します。

二十世紀の精神の教訓 ミハイル・ゴルバチョフ 池田大作
『二十世紀の精神の教訓』(聖教ワイド文庫)

  

この対談集は、二人が2年近く語り合って編んだものです。池田先生の対談集の中では、アーノルド・トインビー博士などとの初期のものを除いて、最も多い言語で翻訳され、世界中で読まれ続けています。

二人の初の出会いは1990年7月のモスクワ・クレムリン。当時、ペレストロイカ(改革)という文明史的実験に挑んでいたゴルバチョフ氏は、かねてから池田先生の思想に注目し、共鳴していたことから異例の時間を割いての会見となりました。

以来、二人の会談は双方の国を行き来しながら、ゴルバチョフ氏が政界を離れた後も続き計10回に及びます。本書は最初の出会いから6年後の1996年に発刊されたものです。

共に「戦争の子ども」

社会主義ヒューマニズムの実験が瓦解して間もない時期に編まれた本書は、20世紀を席巻した一方の極であった社会主義陣営の元指導者とともに、新たな、真のヒューマニズムを探す旅路ともいえます。

池田先生と同世代のゴルバチョフ氏は、共に戦争で家族を失った体験をもつ二人を「戦争の子ども」と表現しています。そうした体験をもつ世代だからこそ、20世紀の教訓を後に続く青年たちに真摯に語り残したいとの思いがあるのかもしれません。

ゴルバチョフ氏はモスクワ大学卒業後、中央の検察庁に就職が決まっていたものの、政府の方針転換によって突然採用が取り消しになってしまいます。そして、片田舎の故郷に戻り汗まみれになって働くところから社会人をスタート。

農村に根ざした庶民感覚と、ロシア人の父とウクライナ人の母をもつコスモポリタン(世界市民)としての出自が、その後の民主化政策につながっていったエピソードなども興味深いです。

「多様性の尊重」が21世紀の最重要の課題

ゴルバチョフ氏は自民族中心主義の危険性にも警鐘を鳴らし、池田先生は「『共生』こそが21世紀を開くキーワード」と唱えています。

その意味で、「多様性の尊重」が21世紀の地球文明を考える上で「最重要の課題」(池田先生)であり、「来たるべき世紀の重要な原則」(ゴルバチョフ氏)との認識で一致しています。

本書は約20年前の対談集ですが、民族主義がいまだに幅をきかせ、紛争の絶えない世界の現状をみると、今でも大事な「教訓」であることを感じます。

  

【対談者紹介】 ミハイル・S・ゴルバチョフ(Mikhail Sergeevich Gorbachev)

1931年、ロシア・スターブロポリ地方生まれ。モスクワ大学卒。

ソ連邦の初代大統領として「ペレストロイカ」を旗印に根本的な改革を断行。また「新思考外交」を打ち出し、米ソ冷戦を終結させるなど世界平和に大きく寄与した。ノーベル平和賞をはじめ多数の賞を受賞。

ゴルバチョフ財団総裁、グリーンクロス・インターナショナル初代会長として世界各地で活動を展開している。



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