気候危機のいま、私たちユースにできることは

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創価学会平和委員会主催 映画『ビューティフル アイランズ ~気候変動 沈む島の記憶~』
オンライン上映会を通して

  

<高潮と海面上昇による被害【ヴェネツィア(ベニス)】>

  

気候変動の影響により、世界各地で自然災害が頻発化・深刻化するなどし、多くの人が被害を受けています。

2021年8月に発表された「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)のレポートは、人類の活動が温暖化に影響を与えていることはもはや「疑う余地がない」としました。

一方で、地球規模の課題を前に、「何をすべきかわからない」や「自分一人がいいことをしても意味はない」とのあきらめの声も少なくありません。

そうした無力感を乗り越えるためには、一人一人が気候変動問題をより身近に感じ、「自分も変革に貢献できる」との意識を持つことが大切ではないでしょうか。

  

国連のSDGs(持続可能な開発目標)推進の一環として、創価学会平和委員会は、「SDGsオンラインシネマシリーズ」の第5回として、気候変動の影響を受ける3つの島の様子を描いたドキュメンタリー映画『ビューティフル アイランズ ~気候変動 沈む島の記憶~』(2009年)の上映会と、トークイベント「Be the Change!~気候危機のいま、私たちにできること~」を開催しました(2021年12月)。

トークイベントには多くのユースも参加する中、日本若者協議会の室橋祐貴代表理事が「若者と気候変動」をテーマに講演しました。

また、COP26に参加したイギリスSGI青年部のルーシー・プラマーさんによるビデオメッセージの紹介や、参加者間での議論を行い、それぞれの考えや決意を共有しました。

※本記事は、上映会・トークイベントの内容をもとに制作しています。

伝統、文化の消滅

『ビューティフル アイランズ ~気候変動 沈む島の記憶~』は、気候変動によって失われつつある、南太平洋のツバル、イタリアのヴェネツィア(ベニス)、アメリカ・アラスカ州のシシマレフの、3つの島に暮らす人々の生活を美しい映像と音声で綴っています。

<映画『ビューティフル アイランズ ~気候変動 沈む島の記憶~』予告編>

  

約1万の人口が暮らすツバルでは、人々が島の恵みに感謝をしながら幸せな生活を送っています。

13歳のシレタと10歳のアマタの姉妹も家族との会話や学校での勉強など楽しい時間を過ごしています。

しかしながら、祭りを通して絆を深める人々の伝統や、子供たちの笑顔あふれる島は、地球温暖化による海面上昇の影響でいずれ沈んでしまうとされています。

ヴェネツィア(ベニス)やシシマレフでも、気候変動により高潮や氷床の融解が深刻化し、故郷が失われています。

気候変動問題と聞くと被害の規模や数字ばかりに目が向きますが、本作品は、そこに住む人々の暮らしや、かけがえのない伝統の美しさを鮮明に伝えています。

若者の声を届ける

  

トークイベントで講演した室橋氏は、若者の声を社会へ届けるための窓口として、2015年に「日本若者協議会」を設立し、政府・政党・地方公共団体との政策協議やそれらへの提言を行っています。

環境問題のみならず、社会保障や、労働政策、貧困、若者の政治参画など様々な社会問題に対して、若者とともに活動しています。

気候危機を生きる世代に対しては、以下のように語っています。

●なぜ今気候変動に対するアクションが必要なのか。

  

<気候変動の影響による浸食【アラスカ州シシマレフ】>

  

室橋氏——気候変動の問題で大切な概念の1つは「気候正義」です。

「正義」というと日本語だと「正義の味方」のようにイメージされるかもしれませんが、英語がもとになっており、言い換えれば「公正さ」といった意味合いです。

気候変動問題の複雑さの1つとして、実際に影響が出てくるのは20年後や30年後ですが、対処しなければならないのは今の世代だということがあります。

対処できる時間軸と実際に影響が出てくる時間軸が異なり、将来世代により大きな影響を与えてしまいます。

また、先進国がこれまでより多くの二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスを排出してきていますが、途上国の人たちや、経済的弱者や貧困層など、これまであまり排出してこなかった人がよりひどい影響を被っています。

こうした「不公正さ」を正していく必要がある、というのが「気候正義」の概念です。これを意識し、前提にしながら、今の世代は取り組んでいく必要があるとの認識を持っていただきたいです。

●社会のあらゆるステークホルダー(関係者)の変革が必要

室橋氏——2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガスの「排出量」から、植林、森林管理などによる「吸収量」を差し引いて、合計を実質的にゼロにすること)を達成するためには、石炭火力発電を減らすなどの産業界(供給サイド)の変革が重要ですが、それだけではなく、省エネや消費方針など、需要サイドも変わらなければいけません。

様々なステークホルダー(関係者)が議論に参加し、その決定に責任をもつ。

すなわち民主主義の原則で、自分たち民衆が主体となって決めていくことが改めて重要になっている段階と認識しています。

その試みの1つとして、ヨーロッパを中心に行われている「気候市民会議」を参考にして、「日本版気候若者会議」を立ち上げました。

ヨーロッパでのものは、無作為に選ばれた市民が継続的に議論をして問題について理解を深める中で、意思をまとめあげていくというものです。

私たちの日本版については、2021年に約3ヶ月に渡って実施して提言をまとめて、政治家などにも提出することができました。2022年も開催を予定しています。

●いま、若い世代の私たちが意識すべきこと

  

<人権と気候正義のための集会【バヌアツ共和国】>

  

室橋氏——(反対運動や権力者への抵抗運動など)敵と味方に分断すると単純でわかりやすいですが、それだけでは社会の分断を生むだけで、成果を出すことが難しく限界があることもあります。

最近は、政治家や権力者を「敵」ではなく、問題解決の「手段」「パートナー」と見なして政治家と一緒に取り組むケースが増え、政策決定者と積極的な対話が行われています。

今の時代、オンラインを活用し、匿名でも声を上げることができます。

政策の意思決定者に直接アプローチができるため、成功の確率が高く、結果的に継続的に参加する人も増え、いい方向に進んでいると思います。

対話をしていくのは、お互いの立場の難しさがあり複雑なこともありますが、現実的に解決していくためには複雑さを受け止めて進んでいく必要があると思っています。

COP26に参加して

イギリスSGIの代表としてCOP26に参加したプラマーさんは、気候変動問題に対するユースとしての決意を以下のように述べました。

プラマーさん——COPなどの会議では、若い世代やまたその先の未来の世代に関係することが議論・決定されているにもかかわらず、若者自身が意思志決定や政策決定の場に関わる機会が制限されていると感じています。

池田大作SGI会長による2021年の平和提言では、若者の気候問題に対する行動への言及と、具体的な提案がありました。

それに触発を受け、大学院の卒業論文のテーマを「若者のための気候正義」と定め、研究に取り組みました。

研究のため、気候・環境問題に関する世界中の若い活動家から話をきく中で、環境を守るため、また気候変動による地域の課題を解決するための彼らの勇気ある行動から多くを学びました。

池田SGI会長も言われるように、若者が気候に関する意思決定の場に携われるよう、これからも取り組みを続けていきます。

参加者の「マイアクション(私の行動)」

「SDGsオンラインシネマシリーズ」は、参加者の皆様に行動変容のきっかけを提供することを目標としています。ここでは、参加者から寄せられた日常に取り入れていきたい「マイアクション(私の行動)」を紹介します。今回のトークイベントは、オンライン掲示板である「Padlet」を使用し、参加者がお互いのアクションを共有しました。

  

<参加者のマイアクション(私の行動)>

  


  

  

  

  

映画『ビューティフル アイランズ ~気候変動 沈む島の記憶~』

  

この記事の取り組みは、以下の目標に寄与することを目指しています。

●目標13. 気候変動に具体的な対策を
気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る。