キラーロボットSDGs~知ることからはじまる私の一歩~

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創価学会平和委員会主催 短編ドキュメンタリー映画「インモラル・コード」オンライン上映会を通して

――キラーロボットってなに?

  

<出典:Stop Killer Robots Flickr>


皆さんは「キラーロボット」をご存知でしょうか?

キラーロボットとはその名の通り、戦場において敵を攻撃するための兵器で、「自律型致死兵器システム」(英語ではLAWS=Lethal Autonomous Weapons System)とも呼ばれています。

人工知能(AI)を搭載した完全自律型の兵器が、人による有意の制御を介さずに、自ら敵を判断し、追跡し、攻撃を加える――このような兵器は未だ存在しませんが、一部の国々は着々と開発を進めているといわれています。

自律型致死兵器システムに対して、倫理的観点から問題意識を持つ多くの国々や研究機関、NGO団体などは、この種の兵器の開発に禁止を求める運動を起こしています。

あなたは、キラーロボットが人の命を奪う未来が想像できますか?そのような未来を防ぐために、私たちにできることは何かについて一緒に考えてみませんか。

  

国連のSDGs推進の一環として、創価学会平和委員会は、「SDGsオンラインシネマシリーズ」と題し、オンライン映画上映会を開催しています。

第10回目として、短編ドキュメンタリー映画「インモラル・コード」の上映会を開催(2022年10月)。

上映後には、自律型致死兵器システムを巡る現状と課題について、特定非営利活動法人「難民を助ける会(AAR Japan)」でプログラムコーデイネーターを務める、櫻井佑樹氏が講演しました。

同団体は国際ネットワーク「キラーロボット反対キャンペーン(ストップ・キラーロボット)」の運営委員を務めています。

※本記事は、上映会の内容をもとに作成しています。

  

短編ドキュメンタリー映画「インモラル・コード」

<映画「インモラル・コード」>
※字幕設定で「日本語」を選択すると日本語字幕が表記されます。


本作品は、国際ネットワーク「キラーロボット反対キャンペーン(ストップ・キラーロボット)」が中心となり制作し、創価学会インタナショナル(SGI)も制作を支援しました。

自動化が進む世界において、キラーロボット等の自律型致死兵器システムがもたらす影響について警鐘を鳴らす短編ドキュメンタリーです。

インタビュー形式で、生と死に関する決断を機械に委ねることは、道徳的に反するとの問題を提起する内容となっています。

昨年2021年1月に発効した核兵器を全面的に禁止する「核兵器禁止条約(TPNW)」をはじめとする国際法のもと、核兵器等の大量破壊兵器は法的に規制されていますが、自律型致死兵器システムを規制する国際法は未だに制定されていません。

AIの軍事転用やドローン兵器の使用等が着々と進む中、自律型致死兵器システムを規制する国際法は、これまで以上に必要とされています。

本作品は、そのような国際法の制定に向けて、意識啓発を推進し、市民社会の声を糾合することを目的としています。

キラーロボットを取りまく課題と国際社会での議論

上映後には、AAR Japanの櫻井氏が、「自律型致死兵器システムを取りまく諸課題」について講演しました。

櫻井氏は、自律型致死兵器システムの根源的な問題は、「人間の判断なしに、機械の意思によって人が殺されてもよいのか」という倫理的な問題であることを前提とした上で、同兵器システムがもたらしうる課題として、具体的に以下の5つの側面を挙げています。
①法律の側面
②安全保障の側面
③人間による兵器システムの制御
④ジェンダーとバイアスからの視点
⑤交差性と人種差別

●安全保障の側面
例えば戦争において、戦闘員が機械に置き換わることで、より戦争を起こしやすい状況が生み出されてしまう点(戦争への敷居の低下)、非国家主体(テロリスト)にも容易に利用されてしまう懸念等について言及しました。

●人間による兵器システムの制御
機械に攻撃目標を選定させる段階に達してしまうと、人間がそれを適切に判断できない、また人間に判断する時間や余地を与えない、さらには、それによって戦闘がよりエスカレートしていく懸念を挙げています。

●交差性と人種差別
人工知能(AI)は、大量のデータを使用して学習を行い、その学習結果に基づいて動作する、そしてその学習させるデータ処理は人間が行うことから、その人間がもつバイアス(偏見)が反映されてしまう危険性があること、それによって、機械が誤った対象を攻撃する可能性を指摘しています。

  

<出典:Stop Killer Robots Flickr>


さらに、自律型致死兵器システムをめぐる国際社会の動向についても概説。

2013年11月以降、現在に至るまで、特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の締約国会議で、自律型致死兵器システムに対する法規制の必要性について話し合われてはいるものの、締約国間の意見の相違があり、議論は継続中であること、そうした中、日本を含む70ヵ国が、本年の国連総会第一委員会(軍縮・国際安全保障)で発表した共同声明で、自律型致死兵器システムに関する「国際的な合意に基づく規制と制限」への支持を表明したことに言及しました。

そして、私たちにできることとして、この問題について調べる、調べたことを人に伝える、メディアと連携し世論を形成していく等をあげ、特に宗教の役割として倫理面からの問題提起の重要性を挙げました。

自律型致死兵器システムの開発に潜む本質

自律型致死兵器システムの開発を推進する人々の意見の一つに、技術力の向上によりターゲットへの命中率を高め、民間人死傷者の減少に貢献し、結果的により“人道的な戦争”になるというものがあります。

しかし倫理的な観点から、“人道的な戦争”などなく、機械が自らの判断で人間の命を奪ってもよいと正当化するには至りません。

人命を「奪う」「奪わない」の判断は機械的にできるものでありませんし、されるべきではありません。

このような重要な判断を下す際、自律型致死兵器システムは、私たち人命を数字に置き換え、情報として扱い、非人間化します。

キラーロボットのような自律型致死兵器システムがひとたび戦場で使用されるようになれば、人間の尊厳性が失われ、人命を軽視する風潮が社会に蔓延することが懸念されます。

また同兵器の開発の成功は、一部の先進国に莫大な利益をもたらし、発展途上国との間にさらなる経済的な格差を生むことになるでしょう。

このような環境は到底、持続可能とはいえません。

誰もが安心して暮らせる社会を目指して

池田大作SGI会長は、2020年1月に発表した平和提言の中で、「核関連システムに対するサイバー攻撃」や「核兵器の運用におけるAI導入」の危険性を指摘し、その危険性に対する共通認識を深め、禁止のルールづくりのための協議を開始することを提唱しました。

1962年に、アメリカとソ連(当時)の間での緊張が高まり、核戦争寸前にまで至った “キューバ危機”に言及し、次のように述べました。

  

――(中略)当時の両首脳には“13日間”という熟議を重ねる時間がありました。ところが、スピード化の競争が進めば、相手に先を越されることへのプレッシャーが一層高まって、熟議に基づく判断の介在する余地がそれだけ失われることになります。

――この点、SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)の報告書でも、「より早く、より賢く、より正確で、より多目的な兵器を探求することは、不安定な軍拡競争をもたらす可能性がある」と指摘しています。核兵器とAIとの結びつきは先制攻撃を促す方向に働くことはあっても、核戦争を止める力にはなりえないと強く訴えたいのです。

  

創価学会が信奉する日蓮仏法の教えは、“全ての人の生命は等しく尊い”との生命尊厳観を基盤としています。

人種やジェンダーに基づいた偏見や差別を助長しかねない、キラーロボットをはじめとする自律型致死兵器システムは、「生命の権利」「人間の自立と責任、尊厳」を脅かす存在です。

誰もが安心して暮らせる社会を目指して、市民社会との協力を継続しながら、この問題が孕む危険性に警鐘を鳴らし、自律型致死兵器システムの開発や使用禁止への取り組みを推進していきます。

参加者の「マイアクション(私の行動)」

創価学会平和委員会が取り組む「SDGs・気候危機アクションキャンペーン」の一環である、「SDGsオンラインシネマシリーズ」では、参加者の皆様に、「行動変容」の機会を提供することを目標としています。

ここでは、参加者から寄せられた日常に取り入れていきたい「マイアクション(私の行動)」を紹介します。

◆キラーロボットという言葉を今回初めて聞きました。映画を視聴して、キラーロボットの怖さを学ぶことができました。講演も、私たちができることは何か、考えることができる内容でした。(20代)

◆キラーロボットが開発されたこと自体が残念なことであり、さらにキラーロボットの規制についての議論が必要なことも悲しいことだと思いました。私は今、第一子を妊娠しています。大切な人を守り抜くという誓いが、戦争やテロという命を軽視する考えを改めさせることができると信じていきます。この現実を周りの人に話していきたいと思いました。(30代)

◆昨今の技術の発展に対して、人間が追いついていない印象を受けました。自分自身も技術者なので、深く考えさせられる内容でした。今後、発展する技術に対して、一人一人がどのように振る舞わなければならないのか考えていきたいと思います。(30代)

◆キラーロボットとは何か、おぼろげに想像をしていましたが、今回学び、実際に使用されれば人類破滅になると、イメージの映像をみているだけでも恐怖を感じました。戦争を始める為政者は安全な所にいて、戦いを強いられるのは、一般人の若者。それが人間でなくなった時、もっと戦争を始めやすくさせるというのも理解出来ました。(50代)

まず行動の一歩として、「知る」こと、そして、その「学び」を日常に取り入れ、自分の「行動」としていくこと――SDGsが掲げる「誰も置き去りにしない」世界へ、一人でも多くの人が「マイアクション」を起こす機会となるよう、本シリーズは今後も継続してまいります。

  


※今後の開催予定につきましては、随時、聖教新聞や、創価学会公式インスタグラム等で告知いたします。 本記事に関してのご意見・ご感想は、創価学会平和委員会【contact@peacesgi.org】までお寄せください。また本記事について、ツイッターやインスタグラムで『#SDGsシネマ』『#希望と行動の種子』と付けて、ぜひ身近な人とご共有ください。


  

  

この記事の取り組みは、以下の目標に寄与することを目指しています

●目標5. ジェンダー平等を実現しよう
ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児のエンパワーメントを行う

●ターゲット5.1 
すべての女性と女の子に対するあらゆる差別をなくす。

●目標10. 人や国の不平等をなくそう
各国内及び各国間の不平等を是正する

●ターゲット10.2
2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々のエンパワーメント及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。

●ターゲット10.3
差別的な法律、政策及び慣行の撤廃、ならびに適切な関連法規、政策、行動の促進などを通じて、機会均等を確保し、成果の不平等を是正する。

●目標16. 平和と公正をすべての人に
持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する

●ターゲット16.1
あらゆる場所において、すべての形態の暴力及び暴力に関連する死亡率を大幅に減少させる。