気候変動問題の解決へ、地球市民の連帯が今こそ必要——COP27を解説

公開日:

国連の気候変動対策の会議「COP27」にSGIの代表が参加

  

国連の気候変動対策の会議「COP27(国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議)」が、2022年11月6日から20日まで、エジプトのシャルムエルシェイクで行われました。

約3万人が参加したと言われる会議で、SGI(創価学会インタナショナル)の代表も参加しました。 

本記事では、COP27の解説とSGIの果たした役割を概説します。

会議の背景

「COP」は英語の「Conference of the Parties(締約国会議)」の略で、国連気候変動枠組み条約に加盟している国々による会議をさします。

今回行われた気候変動のCOPは27回目の開催となりました。
 
同条約の目的は地球温暖化を防ぐことであり、そのために、二酸化炭素など温暖化につながる大気中の「温室効果ガス」の濃度を安定させることにあります。

環境問題に対する国際社会の意識の高まりを受けて、1992年に採択されました。
 
同条約に加盟する国と地域が一堂に会する毎年のCOPは、京都議定書(1997年)やパリ協定(2015年)をはじめ、気候変動対策に関する重要な方針を決定してきました。

国連の重要会議には政府や国連の関係者のほか、市民社会からも多くの参加者がいるものですが、COPの場合は企業からの参加も非常に多いという特徴があります。

焦点となった「損失と損害」

<エジプトで開催された「COP27」の開幕式>

  

気候変動対策は主に①温室効果ガスの排出を減らすことや吸収すること(=緩和)、②既に起こりつつある、または今後起こりうる変化を回避・軽減あるいは利用すること(=適応)の2つがあります。

従来のCOPは①の「緩和」に大きな注目が集まってきました。

既に地球の平均気温は、産業革命前と比べて1.1度ほど上昇していると言われており、それを「1.5度」に抑えることが喫緊の課題になっています。

ただ同時に近年、豪雨、干ばつや海面上昇による土地の消失など、気候変動に起因するとされる事象によって、対応可能な範囲を超える被害が各地で頻発しています。

そうした現象への「適応」も緊急性を要するとして注目を集めるようになっています。

そしてさらに今回は、「損失と損害(ロス&ダメージ)」の補償が大きく議論されました。

例えばパキスタンは2022年夏の大洪水で、国土の3分の1が水没、3300万人が被災する被害に見舞われました。

会場内に設置された同国政府のパビリオンで行われた11月8日のイベントには、同国のシャリフ首相が国連のグテーレス事務総長と共に出席し、国際社会の支援を呼びかけました。

  

<パキスタン政府のパビリオンを訪れ、同国への支援を訴えたグテーレス国連事務総長>

  

また別のある行事では、海面上昇で国土の多くが水没の危機に瀕しているインド洋の国モルディブの大臣が登壇。

サイクロンや高潮等で産業基盤が大きな打撃を受けるとともに、生活の糧を失った人々の間で過激思想が広がり、社会の不安定化につながる恐れがあることを訴えました。
 
このように、「損失と損害」が初めて正式な議題に盛り込まれた背景の1つには、発展途上国や島しょ国の多くが、温室効果ガスの排出量が先進国に比べ極小であるにもかかわらず、気候変動により甚大な影響を被っている現状があります。

とりわけ、先進国や現在世代が享受してきた経済発展や豊かさの〝しわ寄せ〟を途上国や将来の世代に押しつけることは、「気候正義」に反しており、人権を侵害するとの視点から、近年、若者らが中心となって対策・是正を求める声が強まっています。
 
今回の会議では、補償のための「基金」の設置が最終的に合意され、来年のCOPに向けて、詳細の議論が続くことになりました。

SGIが各種行事を開催 各国の若者や宗教者、NGOと交流

<信仰を持った青年による取り組みを報告した記者会見>

  

COP27では政府間の会議と並行して多くの催しが連日開かれ、さまざまなグループや団体が気候変動対策に関する新たな取り組みを立ち上げたり、連携を深めたりしました。

SGIの代表も初日から会議に参加し、各種行事を開催したほか、各国の若者や宗教者、NGOなどと交流を深めました。

中でも初日には、会場外のコプト教会において、タラノア宗教間対話が実施されました。

  

<タラノア宗教間対話の実施。グループトークの様子>

  

これは近年のCOPで毎年開催されている宗教間対話行事で、100人ほどが集い、気候危機によって苦しんでいる人々の声を宗教者こそが代弁していかなければならないことなどを確認し合いました。

そしてCOP期間中、関連のイベントや記者会見などがいくつか開催されたほか、同条約事務局の副事務局長との意見交換会も実施されました。
 
また会議2週目の11月15日には、イギリスSGIと「アフリカの環境持続性のためのカトリック青年ネットワーク」が公式関連行事を共催。

  

<仏教、ヒンズー教、キリスト教など、信仰を持った青年たちが気候変動対策強化を巡り議論したイベント。イギリスSGIが共催した>

  

イギリスSGIのルーシー・プラマー副女子学生部長が「気候変動の危機に立ち向かう連帯の醸成」をテーマに発言し、初代会長・牧口常三郎先生の「人道的競争」の理念を通して、自己の利益だけでなく人類全体の繁栄という視座に立った行動の重要性を強調しました。

参加者からは、信仰をもった若者の特色として、「ビジョンがある」「他者への思いやりを実行に移していける」といった点が指摘され、またイベント全体を高く評価する声が寄せられました。
 
また14日にはジャパン・パビリオンで、日本の企業や団体のネットワーク団体である「気候変動イニシアティブ(JCI)」が、「今こそアクションの加速を:日本の非政府アクターが進むネット・ゼロへの道筋」と題したイベントを開催しました。
▼イベントの詳細はこちら

https://japanclimate.org/news-topics/cop27/

  

<COP27の日本パビリオンで行われた「気候変動イニシアティブ」主催のイベント。浅井SGI開発・人道部長が宗教者の取り組みについて紹介した>

  

ここには、日本の企業や自治体、若者団体の代表らと共にSGIの代表が登壇。

池田大作先生の「SGIの日」記念提言や女性平和委員会の関連の活動を紹介したほか、「最も苦しんでいる人が、一番幸せになる権利がある」との言葉を引用して「気候正義」の実現を訴えました。

司会の方からは、「宗教組織の独自の役割をうかがえた」「気候正義は重要な概念であるものの、日本では耳にすることが少ない。大事な点を指摘いただいた」といった趣旨のコメントがありました。
 
その他、創価学会とITTO(国際熱帯木材機関)、韓国山林庁が共催した公式関連行事では、学会とITTOが西アフリカのトーゴで実施している森林再生支援プロジェクトの模様などが報告されました。

  

<創価学会、ITTO、韓国政府が共催したイベント。熱帯林の減少と劣化の防止をテーマに知見を共有し、今後の活動を議論した>

  

またさらに、教育・意識啓発に関する国際枠組の「アクション・フォー・エンパワーメント」やジェンダー問題などに関する政府間交渉に対し、市民社会の立場で発信を行いました。

会議の成果——“『正義』の実現に向けて重要な一歩を踏み出した”

成果についてはさまざまな見解がありますが、グテーレス国連事務総長は「今回のCOPは『正義』の実現に向けて重要な一歩を踏み出した」と評価。

また、ウクライナ危機やエネルギー危機などの高まりの中にあっても、「緩和」の取り組みを後退させることなく世界が協調して立ち向かう姿勢を示した、との指摘もなされています。
  
ただ、世界的に見て対策は十分には進んでおらず、むしろ「1.5度」の気温上昇という事態はもはや避けられないとの声も出るようになっています。

その意味では、池田先生が2022年の「SGIの日」記念提言で言及したような「地球大に開かれた連帯意識」の確立が今こそ求められているといえます。

SGIは今後も、万人の尊厳を守るため努力を継続していきます。

  

この記事の取り組みは、以下の目標に寄与することを目指しています。

●目標13. 気候変動に具体的な対策を
気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る。