地域と一緒に立ち上がる 採れたて野菜の直売所にはじける笑顔

公開日:

岩手県陸前高田市 松本 タミ子さん

  


岩手県陸前高田市で、産地直売所「産直はまなす」の代表を務める松本さんは「ここでしか味わえない絶品ものよ」と自慢の味をアピールする。

あの日。
街をのみこんだ津波は、妹2人と次男の嫁と孫の命をも奪い去った。「突然、亡くなったって聞かされても、受け入れられるもんでない。涙なんかでないですっけ」

それでも畑では、野菜が芽吹き、一生懸命、大地に根を張って、伸びよう伸びようとしていた。
「『どんなに凍えそうでも、生きる限り必ず実りの時がくる。負けちゃだめだよ』って教えられているような気がしてね。『もう一度、直売所を』という気持ちが湧いてきたんです」

街がまだがれきだらけの2011年5月22日、地域の仲間と共に「産直はまなす」を開店した。
知った顔が店に訪れると、「生ぎでたか」と、抱き合って涙を流す。わが子を亡くした婦人には「今は、どん底かもしんないけど、必ず春は来っから。その日まで、栄養つけて元気でいなきゃ」と声をかけた。何度もうなずいた婦人は、真っ赤な目でほほ笑み、熱いお茶を口に含んだ。

そうした出会いと励ましが続く「産直はまなす」は、2011年5月で開店2年を迎える。「笑った次の日に涙が流れる時もあっけど、その次にまた笑えばいい。いっぱい泣いて、笑って。そうやって、みんなで立ち上がっていければいい」

2012年5月