シャルル・ナポレオン博士と池田大作先生の対談集『21世紀のナポレオン-歴史創造のエスプリを語る』

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「前進!」との叫びと共に歴史を創った、英雄・ナポレオンの末弟ジェロームの5代目の直系子孫にあたるシャルル・ナポレオン博士と池田大作先生による対談集『21世紀のナポレオン-歴史創造のエスプリを語る』を紹介します。

『21世紀のナポレオン--歴史創造のエスプリを語る』 シャルル・ナポレオン 池田大作
『21世紀のナポレオン-歴史創造のエスプリを語る』(第三文明社)

  

わずか51年の人生ながら、18~19世紀のヨーロッパ世界に不滅の足跡をしるしたナポレオン。軍人として残した鮮やかな側面とともに、民法典や文化・学術・教育の振興など政治家としてもさまざまな仕事を成就させました。

タイトルのとおり、ナポレオンという「世紀の巨人」が21世紀に投げかけるメッセージは何なのか――。それが本書のテーマです。

異民族や異文化に寛容であったナポレオン

ナポレオンの登場によって初めて「自由」「平等」「友愛」というフランス革命の精神が時代精神にまで高められたと二人は評価しています。

その上で、ナポレオンが異民族や異文化に寛容であったとの意外な側面も語られます。ナポレオンは、民族や宗教の違いを、対立の要因にするのではなく、できる限り共存や協調を図ろうとしました。

まさにこうした姿勢こそ、21世紀に要請される「世界市民」の要件であり、異なる文化や文明の出合いを、弱肉強食の競争の方向ではなく、共存共栄の人道的な方向へと向かわせていけるかどうかが今後の鍵になると池田先生は強調しています。

ナポレオンが勝ち続けた理由「スピード」と「智略」

本書では、ナポレオンの父シャルルが、ナポレオンや息子たちに最高の教育を受けさせたいと懸命に尽力したことや、人々に貢献できる人間に育てようとした母親の努力をはじめ、生い立ちの苦労や逆境がナポレオンをナポレオンならしめたことなども紹介されています。

その上で、ナポレオンの才能は「努力し続ける才能」「徹して挑戦し抜く才能」にあったと指摘していいます。

なぜナポレオンは勝ち続けたのか、その理由についても「電光石火のスピード」「武力よりも智略で戦った面が大きい」などさまざまな分析がされています。

そして、勝ち続けるには、勝利の余韻に浸らず、常に次の目標に全力を集中するといった「勝利の哲学」も示されています。

ナポレオンの人生を振り返って、その分岐点は絶大な権力者である皇帝への就任にあったとも言及。権力の魔性により、徐々にその性格を変質していった経緯などについても語られています。

ナポレオンの魅力は前進を貫き通した「壮大な生命力」

晩年、表舞台から失脚し、島流しの不遇の時代を過ごしたナポレオン。その頃の心境をどう見るかと尋ねられ、多くの仕事を成し遂げた「ナポレオンの心は満足であったと思う」とのシャルル・ナポレオン氏の言葉は印象に残ります。

人生に「失敗」や「挫折」はつきものとはいえ、ナポレオンの辞書には「停滞」や「後退」の文字はありません。池田先生は、「ナポレオンの魅力の一つは、新しき時代の創造を目指し、前進また前進の不撓不屈の行動を貫き通した『壮大な生命力』にある」と語っています。

これからの21世紀を生き抜く若い読者だけでなく、指導者のあり方を考える上でも、貴重な教訓を含む対談集です。

  

【対談者紹介】 プランス・シャルル・ナポレオン(Prince Charles Napolon)

1950年10月15日、フランスのパリ郊外のブローニュ=ビヤンクール市生まれ。ナポレオン家当主。ナポレオン・ボナパルトの末弟ジェローム(ウェストファリア王)から5代目の直系子孫。実業家、歴史作家としても活躍。

パリ第1(ソルボンヌ)大学経済科学博士。コルシカ島アジャクシオ市助役、イル・ド・フランス県ヌムール市会議員、クレディ・リヨネ銀行事業セクター部長、フランス・ナポレオン歴史協会会長等を歴任し、現在、サービス企業社長、コルシカ環境協会会長、国際ナポレオンアカデミー特別後援名誉顧問。

著書に『ボナパルトとパオリ』『ボナパルトと反骨精神』『ナポレオンによるナポレオン』『未知なる私の祖先ナポレオン』、その他ナポレオンや領土区画整理、政治に関する著作多数。