スチュワート・リース博士と池田大作先生の対談集『平和の哲学と詩心を語る』

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シドニー平和財団理事長のスチュワート・リース博士と池田大作先生との対談集『平和の哲学と詩心を語る』を紹介します。

『平和の哲学と詩心を語る』 スチュワート・リース 池田大作
『平和の哲学と詩心を語る』(第三文明社)

  

リース博士はイギリス生まれ。イギリスやカナダで社会福祉事業に従事したあと、オーストラリアに移住し、シドニー大学社会福祉・社会政策学部の教授に就任。

同大学の平和・紛争研究センターの設立に尽力し、長年にわたり所長として活躍したほか、シドニー平和財団を創立し、理事長をつとめてきた「行動する平和学者」です。

リース博士と、池田先生の最初の出会いは、1999年5月。翌年11月にはシンガポールで開催されたシドニー大学卒業式で池田先生の平和への行動に対し同大学の名誉文学博士号が授与されています。

それから約10年後の2009年に、リース理事長はシドニー平和財団のメンバーらと東京の創価学園を訪問し、池田先生に財団の金メダルを授与しています。

「貧困」や「機会の欠如」に苦しむ人がいる限り平和ではない

本書の主なテーマは「平和」であり、さらに「教育」や「人権」などがキーワードとなっています。

リース博士は「正義に基づく平和」という理念を提唱しているんだけど、それは単に戦争のない状態ではなく、「貧困」や「機会の欠如」に苦しむ人がいる限り本当の平和の名には値しないということです。

さらに共に「詩人」であるとの共通点をもつ二人は、「詩」の活用による良心の呼び覚ましや、生きる意味の問い直しができる詩人こそが、「正義に基づく平和」の強力な担い手になると強調しています。

「多様性」によって躍動する「新しいエネルギー」

本書で目を引くのは、オーストラリアが「移住者によって築かれてきた国」であり、多文化主義政策を採用した国であることです。

博士によれば、「オーストラリアは、民族や習慣や文化の多様性のおかげで、アングロサクソン系白人だけの単一民族国家を標榜していた時代より、はるかにダイナミックで豊かな、深みのある国になった」といいます。

社会が差異に対する寛容を身につけたことで、新しいエネルギーが躍動を始めたとの指摘は、これからの日本社会においても参考になりそうです。

また、リース博士は対談の中で、30代半ばの数ヶ月、自身がうつ状態に苦しんだ体験を率直に述べており、そのときに救ってくれたのは、ノルウェー出身の妻の愛情だったと語っています。

世界人権宣言は「20世紀の最も重要な文書」

最後に、リース博士は他者との人間らしいかかわり方の規範を示す「世界人権宣言」を“20世紀の最も重要な文書”として挙げ、そうした教育を受けることを高校や大学卒業の条件の一つにしてはどうかとも提案しています。

他者の苦しみに同苦する心や、社会の悪に立ち向かう勇気を鼓舞する「詩心」の復権こそが、平和への直道であるとの二人の信念は、多くの読者に啓発を与えるものです。

  

【対談者紹介】 スチュワート・リース(Stuart Rees)

1939年、イギリス生まれ。イギリスやカナダでの社会福祉事業に従事した後、オーストラリアのシドニー大学社会福祉・社会政策学部教授に就任。

同大学の平和・紛争研究センターの設立に尽力し、長年にわたり所長として活躍したほか、シドニー平和財団を創立し、国際的な平和運動に貢献。

主な著作・編著に『人権と企業の責任』『平和への情熱-権力の創造的行使』『超市場化の時代-効率から公正へ』『社会福祉への評決』や、詩集『戦争の真実を教えてほしい』など。

  

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