チンギス・アイトマートフ氏と池田大作先生の対談集『大いなる魂の詩』

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旧ソビエト連邦のキルギス共和国出身の国民的作家、チンギス・アイトマートフ氏と池田大作先生が1990年代初頭に編んだ対談集『大いなる魂の詩』を紹介します。

チンギス・アイトマートフ氏と池田大作先生の対談集『大いなる魂の詩』(聖教新聞社)
『大いなる魂の詩』(聖教新聞社)

  

当時、ソ連はゴルバチョフ書記長(のちの初代大統領)の出現によるペレストロイカ(ソ連の民主化)の推進、さらに1991年8月にモスクワで発生したクーデター騒ぎから一転、ソ連崩壊へと、激動する世界史の中心にありました。

アイトマートフ氏はゴルバチョフ氏の側近として、池田先生との最初の会見(1990年7月)に同席したほか、ペレストロイカの旗手として日本にも紹介されています。

アイトマートフ氏の生い立ち

二人の最初の出会いは1988年10月、東京の聖教新聞本社で行われました。以来、モスクワ、東京、軽井沢、ルクセンブルク、パリと場所を変えながら対談は続けられます。

二人は同じ1928年に生まれた同年齢。共に文学に造詣が深く、ペレストロイカの歩みや評価、共産主義社会の実態などのほか、多彩な文学論、作品論などが展開されます。

アイトマートフ氏は9歳のとき、罪のない35歳の父親がスターリン政権のもとで粛清されてしまいます。家族は田舎に身を隠すことを余儀なくされますが、村の小学校の先生からは何もやましいことはないと励まされ、強く生きる決意をします。

どのような抑圧された社会でも、庶民の真実を見抜く力はけっして消えないことを感じさせるエピソードです。

また、家族の生活の命綱となっていた牛が盗まれたこともありました。この最大の危機の時、15歳だったアイトマートフ少年は復讐の念に燃えて、銃を持って泥棒を探し回りますが、それを思いとどまらせた見知らぬ老人の話もとても印象深いです。

国益から「人類益」へ 国家主義から「人類主義」へ

本書で池田先生は、人種や民族の優越を誇るといった偏狭的な姿勢ではなく、世界市民としての「人類意識」を育むために世界宗教の役割があることを強調しています。

国益から人類益へ、国家主義から人類主義へと発想を転換する必要性を説いています。

最終章の「内面への旅」はアイトマートフ氏自身でつけた章名であり、信仰がテーマになっています。

ここで池田先生は仏法の生命論である十界論や物事を識別するための九種の心の作用を説いた九識論を展開します。

本書は世界市民意識を持つ作家同士の対談としても興味深く、ペレストロイカの歴史的意義やロシア文学の特徴など、多くのことを学ぶことができます。

タイトルにあるように「詩心」や人間の共通の財産である「言葉」を何よりも大切にする二人の魂の共鳴の対話です。

  

【対談者紹介】 チンギス・アイトマートフ(Chingiz Aitmatov)

1928年生まれ。現代ロシア文学を代表するキルギス共和国出身の作家。レーニン賞、ソ連国家功労賞を受賞。

1989年、人民代議員となり、1990年、大統領会議員に選ばれ、ゴルバチョフ大統領側近として改革に献身。キルギス共和国駐ベネルクス諸国大使。

作品は『最初の教師』『白い汽船』『一世紀より長い一日』『処刑台』『カッサンドラの烙印』など多数。

  

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