対談集『新しき人類を 新しき世界を-教育と社会を語る』

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ヴィクトル・A・サドーヴニチィ総長と池田大作先生の最初の対談集『新しき人類を 新しき世界を-教育と社会を語る』を紹介します。

ヴィクトル・A・サドーヴニチィ総長と池田大作先生の対談集『新しき人類を 新しき世界を―教育と社会を語る』(潮出版社)
『新しき人類を 新しき世界を-教育と社会を語る』(潮出版社)

  

池田先生とモスクワ大学には深い交流の歴史があります。池田先生は、2016年現在、世界の大学や学術機関から360以上の名誉学術称号を受けていますが、1975年に、その第1号となる名誉教授称号を贈ったのが旧ソビエト連邦時代のモスクワ大学でした。

歴代のモスクワ大学総長との対談集は、ログノフ前総長とは2冊、サドーヴニチィ現総長とは3冊にも及びます。

人類に立ちはだかる問題群を明らかにし解決する方途を探る

サドーヴニチィ総長はソ連崩壊後の1992年にモスクワ大学総長に就任し、ロシア科学アカデミー正会員、ヨーロッパ大学学長会議総長などを歴任した世界的に高名な数学者です。青年時代は炭鉱夫として働きながら苦学した情熱の人でもあります。

21世紀初頭に出された本書では、「人類の前に立ちはだかる差し迫った問題群を明らかにし、それらの問題群を解決する方途を探ろう」としています。

そのため、幅広い内容となっていますが、具体的には3つの対立するものに、架け橋を構築しようと試みています。

第一に「知識と知恵」、第二に「自由と平等」、第三に「伝統と近代化」というテーマが章立てとなり、対談が進められています。

「開かれた人類意識」という「内面からの変革」こそが肝要

第一章「知識と知恵を結ぶ橋」では、「知識」と「知恵」の概念は「根本的に違うもの」との認識で一致。

その上で、20世紀は科学という人間の「外面世界」の技術は飛躍的に発展した一方、人間の「内面世界」の解明はほとんど進歩していないという現状を確認しています。

第二章「自由と平等の両立」では、人類史上最大の社会的実験といわれた社会主義の興亡について議論されました。

「自由」といっても内面的な鍛えを欠けば勝手な生き方へとつながり、「平等」といっても人間の内なる差別意識を乗り超えることができなければ新たな差別を生み出すというジレンマが語られます。つまり、「自由と平等」の問題のカギは、あくまでも「内発性」にあることが強調されました。

また第三章では、「伝統と近代化」の調和の重要性などがテーマになります。

「新しき人類を」とのタイトル通り、本書を貫く理念は、文化に優劣をつけることは間違いであり、開かれた人類意識という内面からの変革こそ肝要であり、さらに人間社会の憎しみをどのように克服していくのかといった点にも話が及びます。

「人間の善性」を掘り起こす唯一の方途こそ「対話」

対談の背景としては、2001年9月の米国における同時多発テロ事件をはじめ、「グローバリゼーション」という言葉が席巻した世相を無視することはできません。

「共に生きる」「学び合う」といった、人間の善性を掘り起こす唯一の方途こそ、「対話」であり、本書もそうした「対話の精神」の一環として編まれています。

  

【対談者紹介】 ヴィクトル・A・サドーヴニチィ(Victor Antonovich Sadovnichy)

モスクワ大学総長。ロシア大学総長会議議長。ロシア科学アカデミー正会員。

1939年旧ソ連生まれ。ヨーロッパ大学総長・副総長・学長会議議長。ユーラシア大学協議会会長。モスクワ大学機械・数学部大学院修了。1976年に同大学教授となり、1992年にモスクワ大学総長に就任。機械・数学の機能理論・機能分析学の分野における世界的研究家。

ソ連崩壊後、総長としてモスクワ大学の教育水準の維持、財政の立て直しに尽力する。

  

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