対談集『学は光-文明と教育の未来を語る』

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ヴィクトル・A・サドーヴニチィ総長と池田大作先生の2冊目の対談集『学は光-文明と教育の未来を語る』を紹介します。

ヴィクトル・A・サドーヴニチィ総長と池田大作先生の対談集『学は光―文明と教育の未来を語る』(潮出版社)
『学は光-文明と教育の未来を語る』(潮出版社)

  

本書の主題は①教育はどうあるべきか②大学の果たすべき使命は何か――という2点です。

特に大学教育に人生の大半を捧げてきた二人だけに、今後の大学運営や方向性に何らかの示唆をとの思いが込められています。

「社会のための教育」ではなく「教育のための社会」へ

第一章では、教育と社会の関係について、「社会のための教育」や「国家のための教育」ではなく、「教育のための社会」へと価値転換すべき、としています。

教育こそが人間の最も根元的な営みであり、人間は教育を離れてはありえないからです。

その点ではサドーヴニチィ総長自身も、「世界の歴史を振り返っても、教育や学問・文化が衰退しているのに、国が栄えた例はありません」と説明を加えています。

さらに教育は、直接的な打ち合いを通してのみ可能であり、教師と学生のふれあいに教育の本義があることを確認しています。

「創立の精神」と「庶民に開かれているか」が大学を支える要素

「大学の未来像」と題する第二章では、21世紀の大学教育のあるべき姿などが語られます。

250年の歴史をもつモスクワ大学は、35万人以上もの卒業生を世に送り出していますが、その多くが民衆のまっただ中に身を置く「平凡な市民」として生きており、民衆に開かれ、民衆に愛される大学であることが示されます。

サドーヴニチィ総長は、①どのような創立者、創立の精神をもって誕生した大学なのか、②庶民の子弟に開かれた大学なのかどうか――を、大学を支える要素として挙げています。

本書では、大学における通信教育についてもふれられ、池田先生が創立した創価大学の通信教育課程が、在籍数、卒業率で日本一となっていることなどが紹介されています。

多くの文明において「宗教」と「科学」は対立していない

第三章では、「科学と宗教の関係」などについて語られています。

そのなかで、「宗教」と「科学」は、多くの文明において対立してきたわけではないことを確認。今後の科学の未来において大きな「限界」になるのはどのような価値観や倫理的限界を人々が選択するかという人間のモラルと品位に関するものになるだろうと予測しています。

そして、今後は軍事力や政治、経済といった「外的世界」ではなく、「内面世界」への探求が時代的要請になるとの認識が語られます。そして、仏教は、「科学と馴染み合える唯一ともいえる宗教」との識者の言葉が紹介されています。

21世紀以降の長期的な未来を考える上で、二人が「大学」という存在に大きな期待を寄せていることがわかる対談集です。

  

【対談者紹介】 ヴィクトル・A・サドーヴニチィ(Victor Antonovich Sadovnichy)

モスクワ大学総長。ロシア大学総長会議議長。ロシア科学アカデミー正会員。

1939年旧ソ連生まれ。ヨーロッパ大学総長・副総長・学長会議議長。ユーラシア大学協議会会長。モスクワ大学機械・数学部大学院修了。1976年に同大学教授となり、1992年にモスクワ大学総長に就任。機械・数学の機能理論・機能分析学の分野における世界的研究家。

ソ連崩壊後、総長としてモスクワ大学の教育水準の維持、財政の立て直しに尽力する。

  

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