「人道展―平和を守るための約束―」を紹介

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赤十字国際委員会(ICRC)と創価学会インタナショナル(SGI)が共同で制作

  

  


目の前で苦しむ人を敵・味方関係なく助けることを謳ったルールである「国際人道法」。

赤十字国際委員会(ICRC)は、この「国際人道法」の守護者として、戦争に巻き込まれた人々の尊厳と命を守る一方で、すべての紛争当事者との対話・交渉や、紛争当事者の人間性にも訴える活動などを展開しています。

「人道展―平和を守るための約束―」では、戦時下だけでなく、戦後の復興や人々が日常を取り戻すうえで大切なコンセプト「人道」に光を当てています。

世界的な物価高、人々を不安に陥れる感染症、終わりの見えない紛争。

世界が揺れ動く今だからこそ、人が人らしく生きていくための「人道」について考えるきっかけを提供するための展示会です。

国際人道法とは?

武力紛争や戦争において、けがや病気の兵士や捕虜、そして武器を持たない一般市民を保護し、人道的な取り扱うことを定めた国際法です。

「1949年のジュネーヴ諸条約」、「1977年の2つの追加議定書」を中心としたさまざまな条約と慣習法の総称として、「国際人道法」と呼んでいます。
人道的な取り扱いの内容は、大きく2つに分けられます。

①攻撃の対象を制限すること(ジュネーヴ法)
民間人と戦闘員を区別し、民間人に対する攻撃を禁止します。
②暴力の量を制限すること(ハーグ法)
不必要な苦しみを与えることを禁止します。

  

国際人道法によって、締約している196カ国には、これらの規則をまもるよう法的な義務が課せられています。(参考ICRCウェブサイト

国際人道法とSDGs

武力紛争や戦争は本来あってはならないものですが、時に生じてしまっているのが国際社会の現実です。しかしそのさなかにあっても、やりたい放題は許されません。

国際人道法は、被害を最小限にとどめるべく、ルールを定めています。
仮に国際人道法が脅かされると、SDGsの目標16「平和と公正をすべての人に」から遠ざかるのはもちろん、それ以上の被害が出ます。

例えば、戦闘員以外の民間人の住居や、病院、学校など人が集まるところを狙うのは、重大な国際人道法違反です。

それらが攻撃されると、電気、水、ガス、道路など生きるために必要なインフラが破壊され貧困が広がり、地域の人々はその日食べるものにも困るようになります(目標1「貧困をなくそう」・2「飢餓をゼロに」)。

  

また病院(目標3「すべての人に健康と福祉を」)や学校(目標4「質の高い教育をみんなに」)については、2023427日に池田大作SGI会長が発表した提言でもその保護が呼びかけられました。

  

<5月に広島市で開催されるG7サミット(主要7カ国首脳会議)に寄せて発表>
<5月に広島市で開催されるG7サミット(主要7カ国首脳会議)に寄せて発表>

  

さらに紛争が長引けば、仕事もなくなり、紛争に関わる仕事しか残されないという事態も生じます。人らしく生きていく道が、たまたま巡り合わせた紛争のせいで閉ざされてしまうのです。

人道を守るICRC

そんな事態にならないようにICRCは、紛争地域で国際人道法に基づいた支援や保護の活動を行っています。一方、ここ日本など平和が確保されている地域では、国際人道法の普及に努めています。

  

2021年には、創価大学でも写真展を開催。「人類愛」「公平」「中立」「独立」との4つの「人道原則」をテーマに、世界の著名な芸術家の映像や写真を展示。思いやりや助け合いの精神について、見る人に問いかけました。

「人道展―平和を守るための約束―」を紹介

実際のパネルの一部とともに展示の概要を紹介します。

失われた日常 ウクライナの今

  

第1部「失われた日常――ウクライナの今」のパネルから

  

第1部では、紛争激化から1年あまりが経過したウクライナの状況を伝えています。

同国ではこれまで、約800万人が国外へ避難し、国内で故郷を追われた人は500万人を超えるとされています。(2023年1月時点=国連難民高等弁務官事務所調べ)。国民のおよそ3人に1人が避難生活を送っていることになります。

電気や水道、ガスなどの生活インフラの寸断をはじめ、日常的に空襲警報が発令される精神的な負担、学校閉鎖に伴う遠隔授業の実施など、紛争はさまざまな面で人々の生活に影響を及ぼしています。

  

展示では一般市民や民間施設への被害、紛争下での暮らしを紹介するとともに、首都キーウに設置された戦車やバリケード、地雷の警告標識等、日常に溶け込む“紛争の景色”を取り上げています。

さらに、赤十字国際委員会(ICRC)が同国で実施してきた医療支援やインフラ整備、援助物資の提供などの一部を紹介しています。

赤十字国際委員会(ICRC)の役割と貢献

  

第2部「人類を脅かす核兵器――これって本当に必要?」のパネルから

  

第2部では、人道の観点から核兵器問題に取り組むICRCの活動を概説。

1945年8月6日、広島に原爆が投下。ICRCの駐日主席代表だったマルセル・ジュノー氏は、約15トンの医薬品と医療資機材を調達して広島に赴きました。

そこで、筆舌に尽くせぬ惨状と核兵器の威力を目の当たりにし、以来、ICRCは人道の観点から核兵器の使用禁止と廃絶を主張してきました。

展示では、安全保障の視点が主流だった核兵器を巡る議論を、人道上の側面から見つめ直す契機となったICRCのヤコブ・ケレンベルガー元総裁の声明(2010年4月)を紹介。

  

核兵器がもたらす人道上の緊急事態とその結果生じる人的・社会的被害に対し、十分に対処できる能力は誰も持ち得ないことから、「核兵器のいかなる使用も国際人道法の規則と合致するとみなすことは難しい」と訴え、核兵器禁止条約の実現に大きく貢献した同声明の意義等を解説しています。

学会・SGIの取り組み

  

戸田先生、池田先生の平和行動を紹介するパネルから

  

併設のパネルでは、創価学会・SGIが人道の観点からどのように核兵器廃絶に取り組んできたかを取り上げています。

戸田城聖先生の「原水爆禁止宣言」をはじめ、パグウォッシュ会議創設者のジョセフ・ロートブラット博士、同会議のM・S・スワミナサン元会長と池田SGI会長の語らい、核兵器のリスク低減に向けた行動を呼びかけた池田SGI会長の提言、核兵器禁止条約の普遍化に向けた取り組みなどを説明しています。

  

また、ICRCの特設ウェブサイト「宗教と人道の諸原則」(英語)に掲載された池田SGI会長の寄稿を紹介しています。

この記事の取り組みは、以下の目標に寄与することを目指しています

●目標1. 貧困をなくそう
あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ

●目標2.飢餓をゼロに
飢餓に終止符を打ち、食料の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進する

●目標3.すべての人に健康と福祉を
あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する

●目標4. 質の高い教育をみんなに
すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し生涯学習の機会を促進する

●目標16 平和と公正をすべての人に
持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する