誰もが受け入れられる“心のバリアフリー”を

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創価学会平和委員会主催 映画「ふたり~あなたという光~」オンライン上映会を通して
――障がい者とその家族

  

<出典:Canva Pro>


「令和4年版 障害者白書」によると、日本には約965万人の障がい者がいると報告されています。また、障がい者のみならず、障がい者を支える家族への支援には、いまだ課題が山積しています。

障害のある親に育てられた「子ども」、障がい者の「きょうだい」「配偶者」など、障がい者本人の周囲には、人生を共に生きる家族の存在があります。

しかし、本人の悩みに焦点が当たる機会に比べ、その家族が抱える葛藤が取り上げられことはほとんどありません。

「障害のある家族とどう向き合えば良いのか」
「自分は、自由に人生の選択をしてはいけない」
「将来は介護をしなければいけない」
「周囲に打ち明けられない」

など、家族の多くは人生のさまざまな段階で、悩みに直面し、またそれらの思いを周りに打ち明けられず、うつ状態になったり、自己肯定感を失ったりしてしまうこともあります。

障がい者とその家族がどのようなことに悩み、また、どのような社会の変化を望んでいるのかを知ることは、誰一人取り残さない世界の実現へ向けた大きな一歩となるはずです。

  

国連のSDGs推進の一環として、創価学会平和委員会は、「SDGsオンラインシネマシリーズ」と題し、オンライン映画上映会を開催しています。
第12回目として、「ふたり~あなたという光~」の上映会を開催(2023年7月)。製作・総指揮を務めた三間瞳氏が講演しました。
※本記事は、上映会の内容をもとに作成しています。

映画「ふたり~あなたという光~」

<映画「ふたり〜あなたという光〜」予告編>


障害や疾患・難病などがある人の兄弟や姉妹をひらがなで「きょうだい」といいます。

今回上映した作品「ふたり~あなたという光~」は、障がい者、また「きょうだい」が直面する悩みや社会の課題について考える内容となっています。

障がい者(精神障害)の妹・希栄がいる姉・のぞみは、 恋人である崇に希栄の存在を打ち明けられていませんでした。

ある日、崇からプロポーズをされたことをきっかけに希栄の存在を知らせたところ、崇は困惑してしまいます。

また、崇は母親からの〝将来、誰が希栄をケアしていくのか〟などの問いかけを通して、悩みを深くしていきます。

のぞみは、障がい者家庭に特有の悩みに次々と直面し、“普通”の人生とは程遠い自分の人生に絶望し、崇との結婚を諦めようとしますが、あることを機に改めて自分の人生を見つめていくストーリーとなっています。

「きょうだい」と「ヤングケアラー」の定義や関係

<講演した三間瞳氏>


本作品で製作・総指揮を務めたのが三間瞳さんです。

三間さん自身も統合失調症がある妹をもつ「きょうだい」また「ヤングケアラー」として、さまざまな思いを抱えてきました。そのストレスなどによって留学中にパニック障害を発症するなど、心身共につらい時期を経験しました。

障がい者とその家族といった当事者と、それ以外の人たちをつなぐことで、互いが支え合う社会をつくっていきたいとの思いが、本作品の製作につながっていきました。

今回の講演では、障がい者とその家族を取り巻く課題を中心に、次のように語りました。

  

三間氏:障がい者本人、また障がい者の親が直面する課題は、知られている部分も大きいと思いますが、「きょうだい」の生きづらさはそこまで知られていません。

親が障害のある子の方に時間を多く使うことで、「わかってもらえないとの思い込み」や「1人で頑張る癖」「甘えられない」「大変な思いをさせないように」などの思いを持ってしまうことがあります。

今回の映画のテーマが「結婚」でしたが、「きょうだい」は、〝自分の気持ちはわかってもらえないだろう〟という思い込みから、人を好きになれないケースもあります。

また、本作の主人公と同じように〝他人を自分の家族の問題に巻き込ませたくない〟などの思いを抱くこともあります。

「きょうだい」の誰もが直面するのが、親亡き後の問題です。映画では描いていませんが、実際には結婚のあとに様々な苦労があるといえます。

例えば、障害のある方を預ける施設が見つからないこともあります。そのため結婚の際には、二人の「好き」という感情だけでなく、双方の家族の納得も大切になってきます。

また、親は「きょうだい」に「あの子の面倒をみてくれるでしょう」と当てにすることが多いですが、その期待が「きょうだい」の生きづらさにつながってしまうこともあります。

「きょうだい」もそれぞれが家庭を築き、特に性別が違う兄弟姉妹の場合、大人になってから疎遠になるケースもあります。話し合うことが大切なのですが、とても繊細なトピックであるため、それが難しいことでもあります。

自身の人生を振り返っても、胸中に生まれる様々な感情にどう折り合いをつけるかは簡単なことではありません。

「きょうだい」の生きづらさを解消するために

三間氏:「きょうだい」が家族と離れても生きていけるように、社会として支援体制のさらなる充実が必要です。また、一人一人の価値観の変化も必要です。

私の小さい頃は、周囲から「障がい者は隠すもの」「隅っこで生きていろ」といった嫌悪の視線を感じてきました。

最近、少しずつ多様性が受け入れられる土壌が広がってきたと感じていますが、もっとインクルーシブな社会になっていってほしいと思っています。

「障がい者は全体の10%もいるんだ」「障がい者の人にも家族がいるんだ」「同じ市民なんだ」といった認識が浸透し、いわゆる〝心のバリアフリー〟がもっと広がってほしいですね。

さらに、世間一般の理解としては、障がい者の「きょうだい」は一番の理解者、味方と思われています。しかし、その固定観念も当事者には苦しかったり、我慢していたりします。

「きょうだい」自身も葛藤していることが周囲に認識されていけば、本音を語りやすい環境ができてくると思います。

障がい者、またその家族と信頼を築く上で、どのような姿勢が大切か?

三間氏:「かわいそうな人」というレッテルが、相手に窮屈さを与えてしまいます。特別視することなく、〝個〟としてみてほしいです。

関わり方という点では「こんにちは」とか、普通にあいさつしたり、声を掛けでもらったりするだけでも十分です。日常で障がい者に出会った時に、避けるのではなく、「そういう人もいるんだな」と受け入れてもらえればと思います。

私自身、パニック障害を発症し、本当に苦しかった時、話を聞いてくれる友人がそばにいたことが救いでした。障がい者、またその家族にとって、常に話を聞いてくれる人は、かけがえのない存在だと実感します。

参加者の「マイアクション(私の行動)」

本シリーズは、参加してくださった皆様に、「行動変容」のきっかけを提供することを目標としています。
ここでは、参加者から寄せられた日常に取り入れていきたい「マイアクション(私の行動)」を紹介します。

「マイアクション(私の行動)」
◆障害は個性であり、当たり前に存在することだと感じました。障害の有無に関わらず、相手を、一人の人間として接していきたいです。(40代)

◆同じ立場でないと気付く事が難しいことを、映画を通して少しでも知ることができて良かったです。聴く力を養い、相手の気持ちに寄り添っていきたいです。(50代)

◆周囲の人たちが当事者や当事者の家族に対してサポートしていくことが大切だと思いました。自身の出来ることから行動に移していきたいと思います。そして、障害の有無に関わらず、多くの友人をつくっていきたいです。(30代)

◆最近「きょうだい」という言葉の意味を知りました。映画と講演を通して、どう理解すれば良いのかわからなかった部分がすっきりしました。今後もあらゆる機会を通して、学び続けていきたいです。(60代)

まず行動の一歩として「知る」こと、そして、その「学び」を日常に取り入れ、自分の「行動」としていくこと――SDGsが掲げる「誰も置き去りにしない」世界へ、一人でも多くの方が「マイアクション」を起こすきっかけとしていただけるよう、本シリーズは今後も継続してまいります。

  


※今後の開催予定につきましては、随時、聖教新聞や、創価学会公式インスタグラム等で告知いたします。
本記事に関してのご意見・ご感想は、創価学会平和委員会【contact@peacesgi.org】までお寄せください。


  

この記事の取り組みは、以下の目標に寄与することを目指しています。

●目標3. すべての人に健康と福祉を

●目標4. 質の高い教育をみんなに

●目標10. 人や国の不平等をなくそう

●目標11. 住み続けられるまちづくりを