このページの本文へ移動

本文ここから

「健康リスクについて知ること」 藤原 武男氏(東京科学大学教授)

公開日:


医師である藤原氏は公衆衛生学の専門家として、気候変動が健康に与える影響について研究しています。COP29に寄せて、健康リスクへの警鐘を鳴らすと共に、その取り組みについて語ります。

  


私はそもそも社会疫学といって、貧困や格差などが、健康に与える影響について研究してきました。中でも、誰にでも影響を与える気候変動の影響は不可避だし、さらに脆弱な集団により強く影響が出るだろうと、これは見逃せないと思って研究してきました。

今、はっきりと分かっていることで言いますと、一つは喘息です。世界中の研究、日本も含めて、温度が1度2度上がるだけで、1.2倍ぐらい喘息のリスクが高まります。

もう一つは、妊婦さんですが、早産のリスクが高まることもはっきりと分かっています。

熱中症のリスクはご想像の通りですが、他にも子どもの健康に影響があるだろうということが分かってきています。

気候変動の対策は、根本の二酸化炭素をどう削減する行動を起こすかということが、非常に重要になってくると思います。そのためには、まず知ること。自分の健康にも影響があるんだ、自分の子ども、家族にも影響があるんだ、ということを知ることです。

お医者さんが連帯をして、自分たちがまず意識をもって、医療関係の廃棄物からCO2が出ないようにしていこうと取り組んでる人たちもいます。二酸化炭素を出さない活動も引き続き大事だと思いますが、そこにもう一歩、お医者さんから患者さんに、この事実、健康への影響を伝えていくことで、理解を広げていきたい。政策やビジネス形態といったことを、どうわれわれが選択するのかといったことが、大きいと思っています。

直接、公衆衛生や気候変動に興味がないかもしれないけれども、クリニックや地元に根ざしている先生たちとも連携していけないか検討しています。

気候変動の影響の強さについては、医学界で著名な『The Lancet(ランセット)』という雑誌が主体となって、世界中のエビデンス(証拠)をまとめてレポートを出しています。その中に、きちんと日本のエビデンスも入っていかないといけないと思っています。日本からの研究のエビデンスは、圧倒的に足りないので、きちんと精緻な解析をして、気候変動によってこうした疾患が増えているというようなことを出していく段階かなと思い、その先生方とも連携してやっていけるように、今進めているところです。

  

この記事の取り組みは、以下の目標に寄与することを目指しています。

●目標13. 気候変動に具体的な対策を
気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る。