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宗教と持続可能な開発

公開日:


宗教による開発や人道への関わりについて、最新の状況を踏まえた国際会議がドイツのベルリンで開催。SGIの代表も参加しました。

  

ドイツ政府の支援で

会議を主催したのは「宗教と持続可能な開発のためのパートナーシップ(PaRD)」というドイツの団体。この団体は、ドイツの経済協力開発省等の支援で2016年に設立され、現在は100を越える「信仰を基盤とした組織(FBO)」や研究機関、また各国の開発援助機関が加盟。SGIもその一員となっています。

2023年10月にはベルリンで年次総会が開催され、世界各地から関係者が集いました。冒頭、宗教者の代表による平和のメッセージの紹介の場がありましたが、仏教の代表はSGIが担当し、法華経のメッセージなどを披露しました。

  


その後の議論には、ドイツ連邦議会議員でドイツ政府の「信教の自由」担当委員であるフランク・シュワベ氏や、ドイツ経済協力開発省(BMZ)やドイツ国際協力公社(GIZ)の高官、インドネシア宗教省の高官、またアメリカやイギリス、デンマークなどの政府関係者も加わり、「宗教と持続可能な開発」について協議しました。

  

  

信教の自由

主要なテーマの1つは「信教の自由」でした。日本など先進国の多くでは当たり前に保障されている権利ですが、開発途上国においては、そうでないことも少なくありません。従来、開発や人道の活動の中で、この権利は特に注目されることはなく、むしろ基本的なニーズである貧困の削減や食料確保、あるいは衛生の改善などに主眼が置かれてきました。

しかし最近の研究や、諸団体の活動からの教訓としては、それらの基本的ニーズの充足は不可欠である上で、援助を受ける人々が自由に信仰活動を行える環境が整うことによって、人々の幸福度が大きく上昇するということがあります。また、開発や人道をめぐる世界的な流れとして、お仕着せの援助をするのではなく、支援を受ける人々の声に耳を傾け、そうした人々のニーズにかなった援助を行うべき、というものがあります。

信教の自由の確保はまさにその観点から、重要性が高まっているのです。そのため会議では、いかにしてその確保を促進するか、またそれを阻む要因は何かなどが議論されました。

この議論の主眼は途上国における状況でしたが、実は日本も最近、「信教の自由」の観点で注目を集めているようです。会議の合間に懇談した各国政府関係者からは、「日本の状況を注視している」「問題ある宗教団体には適切に対処しなければならないが、それによって個人の信教の自由が脅かされることがあってはならない」といった話がありました。

COP28も議論に

また会議では、11月末から開催の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)において、歴史上初めて「信仰パビリオン」が設置されることから、その運営を担う国連環境計画(UNEP)「地球のための信仰」イニシアチブのイヤド・アブモグリ担当官等をオンラインで招いての協議も行われました。
同担当官からは、現場で苦しんでいる人を救いゆくために、宗教者の皆さんに是非積極的な声をあげていただきたい、との呼びかけがありました。なお同パビリオンにおいては、SGIもいくつか、イベントの開催を予定しています。

その他、「宗教に関心をもたない政府との対話をどう進めるか?」をテーマにした分科会も。ここでは、学識者など中立的な立場の人を巻き込んだ議論を推進することや、「政府」という組織を相手にするのではなく1人の人間として接し対話を進めていくことが重要では、といった意見が出されました。

会議では最終的に政策提言をとりまとめ、またCOP28などの機会に協働することを約し合って終了しました。SGIとしても、「誰も取り残さない」世界を実現するために、FBOとしての強みを踏まえながら、さらなる活動を展開する予定です。

  

最後に

会議の合間には、会場にほど近い「ベルリンの壁」跡地の見学ツアーも催されました。

かつて壁の前に立った池田大作SGI会長は、「30年後には、この壁は取りはらわれているだろう」との言葉を残しましたが、実際に1989年にこの壁は崩壊しました。

案内をしてくださったドイツの方は、「今も分断が世界を覆っているが、壁の歴史は、人間が分断を乗り越えていけることを物語っている。私たちも対話の重要性を訴え続けたい。」と語っていたのが印象的でした。

  

この記事の取り組みは、以下の目標に寄与することを目指しています。

●目標3.すべての人に健康と福祉を
あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する。

●目標16.平和と公正をすべての人に
持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する。

●目標17.パートナーシップで目標を達成しよう
持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する。