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「脱炭素は目的ではない 豊かな未来へつなぐこと」 平田仁子氏(Climate Integrate 代表理事)

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平田仁子氏は、シンクタンクClimate Integrateの代表理事として、気候変動問題解決に向けて、調査や情報発信を行っています。市民社会やジェンダーの視点から、脱炭素社会に向けての課題や希望を語りました。

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気候変動に関する話って、情報が錯綜しすぎて何が本当かわからない。「電気自動車はいい」と言う人もいれば、「あれは逆に良くない」と言う人もいたりとか、迷っちゃいますよね。本当に裏付けのある、しっかりした情報を届けるというのが一番大事なんですけど、同時にやはり正しいことを言っていてもそれが届かなかったら意味がないと。誰にも相手にしてもらえなかったら、社会を変える土台になっていかないので、いかに届けるかといったときに、“見て格好いい”“面白そうだ”“これくらいだったら理解できる”というような、受け取った人たちが、ちゃんと次の一歩に、行動につながるというような、変革につながるというところを後押ししたいって思いがあるので、今までだったらあまり予算も労力もかけてないような、伝えるための工夫、見せ方の工夫というのは、(レポートなどで)努力している部分ではあります。

国際的には、この気候変動の進行とジェンダーの話ってすごく密接に関わっていて、特に災害が起こったりしたときの負担とか影響は、女性および高齢者だったり、子どもだったりという弱い立場にあるような人たちというところが大きいので、女性が本当に幸せに、生き生きと生きていける環境という意味でも、この気候変動問題の影響を大きくしないというのは、すごく大事だというのは、常識として語られてはいます。

そのエネルギーの話になると(意思決定者は)男性ばっかりなんです。このあまりのバランスの悪さは、合意形成だとか、政策方針に影響を及ぼしてるんじゃないかと思うことがすごくあります。気候変動の問題って命を守る話だし、未来の子どもたちを守る話だしといった時に、やはり女性の視点が入っていかないというのは、解決策として非常に異様だって思っています。ジェンダーの視点って気候変動の話では、まだまだ日本で全然語られないんですよね。もっと女性が参画して、もっと女性の声が入ってくと、私は政策も変わっていくんじゃないかという確信を持ってます。

今が良ければいいという経済活動が続いているし、「化石燃料をこれ以上燃やしちゃいけない」と言ってるのに、またどんどん日本でも、火力は必要だとかいう話になっていくんです。これってもう本当に未来に生きる人たち(の生活や権利)を土足で踏みにじっているような残忍な話であるということが、私は許せないです。若い人たちの人権侵害だと思うので、その怒りみたいなものはあります。

目的は脱炭素じゃないんですよね。脱炭素は、その先にある豊かな未来につなぎたいという思いなんですよね。気候変動が進んでしまうと、本当に私たちの楽しいこととか大好きなことが失われていくんです。暑くて、夏にスポーツができないとか。おいしいお魚だったり、今、わさびがですね、生産地で影響を受けていて、それって日本の食文化そのものじゃないですか。スノーリゾートが大好きな人たちは、雪の楽しさを失ってしまうかもしれない。私たちが生きててやっぱり楽しいこととかうれしいことって、すごい自然とか文化とつながっていることが多い。

気候変動のために行動するって、日本では“暗くて我慢をする”とかですね、“お金がかかる”とか、目の前のちょっとした不便さみたいなイメージがすごくあるんですけど、それやると、その先にずっと楽しいこととか、守ってあげたいものとか、自分が好きなこととか守れるっていう社会なので、それって悲しいことから、すごいうれしいことに変えられる取り組みだなと思ってるんです。今、頑張ったらもっと止められるっていう時だから、力を湧かして取り組むべき時だと思うんです。それはワクワクすることで、どう転換できるかってますます考えるというふうにしてます。

最近、本当に太陽光発電の導入のスピードとか、風力発電が地域で反対運動があったりとか、本当は進めていきたい再生可能エネルギーが失速しているんです。むしろ、それぞれの場面で建物の屋根に太陽光発電を入れられないかとか、農地にソーラーシェアリングをどっかで入れられないかなとか、自分たちの地域で実装していくということが、今年は大事になっていく年かなというふうに思います。

  

この記事の取り組みは、以下の目標に寄与することを目指しています。

●目標13. 気候変動に具体的な対策を
気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る。