2024.11.29
核兵器SDGs――「核兵器のない世界」を目指して
公開日:
創価学会平和委員会主催 映像作品『知られざるヒロシマの真実と原爆の実態』オンライン上映会を通して
――核兵器問題とSDGsの関連性とは
あなたにとって大切なものとは何ですか?「核兵器のない世界」と聞くと、どのような世界を描きますか?
大切なものを全て一瞬で奪ってしまう核兵器――その非人道的な兵器を巡る問題は、それ自体が地球規模であるが故に、“自分とは関係ないだろう”“きっと自分には何もできない”と、諦めや無力感を感じてしまいがちな問題といえるのではないでしょうか。
日常生活の中で、“核兵器廃絶のために何かしたい!”と思っていても、何ができるのかが分からず、悶々としている人もいるかもしれません。
しかし、その諦めや無力感を打ち破ること――それこそが「核兵器のない世界」への大きな一歩となります。
そして、実は、SDGs(持続可能な開発目標)の推進と核兵器廃絶のための行動は、密接に関連しており、私たちの身近には、「核兵器のない世界」の実現のために、日常的に取り入れていけるアクション(行動)がたくさんあるのです。
国連のSDGs推進の一環として、創価学会平和委員会は、「SDGsオンラインシネマシリーズ」と題し、オンライン映画上映会を開催しています。
第4回目として、広島・長崎の「原爆の日」に合わせ、被爆者で映像作家の田邊雅章氏が製作した映像作品『知られざるヒロシマの真実と原爆の実態』の上映会を開催(2021年8月)。
上映後には、「核兵器廃絶とSDGs」をテーマに、ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)と共同制作した核兵器禁止条約関連ツールに関する特設ページの発表と解説、そして希望者によるディスカッションを行いました。
※本記事は、上映会の内容をもとに制作しています。
映像作品『知られざるヒロシマの真実と原爆の実態』
映像作品『知られざるヒロシマの真実と原爆の実態』は、田邊氏が5年の歳月をかけて製作したもの。同氏が進めてきた被爆者の証言や資料分析を踏まえて、「原爆ドーム」の名で知られる旧・広島産業奨励館内の当時の様子をはじめ、爆心地から半径1キロ圏内の被爆前の街並みや暮らしを、コンピュータ・グラフィックス(CG)を用いて再現しています。
現在の原爆ドーム付近で生まれ育った田邊氏は、8歳の時に被爆。還暦を機に、CGによる爆心地復元事業に取り組み、17年かけて計6作品を完成。本作品は、その最終作品にあたります。
本作品では、暮らしていた人々の活気も含め、被爆前の広島の様子が細部にわたって丁寧に再現されており、一瞬にして全てを破壊してしまう核兵器が、いかに非人道的な兵器であるかを訴える作品となっています。
核兵器を巡る世界の現状
世界には未だに、約1万3000発もの核兵器が地球を覆い、いつでも地球を滅ぼせる状況にあります。つまり、私たちは今、広島・長崎の原爆投下の当時よりも、圧倒的に深刻な危機の下で暮らしているのです。
では、私たちは、どうすれば、「核兵器のない世界」をつくることができるのでしょうか。そして、そのために今、世界では、どのような努力や取り組みがなされているのでしょうか。
国際社会の平和と秩序のための機関として知られる国際連合(国連)では、各国や市民社会の力強い支持のもと、2017年7月に、史上初めて核兵器を全面的に禁止する「核兵器禁止条約」が採択され、2021年1月22日に発効し、正式に国際法としての効力を持つに至りました。
核兵器SDGs
核兵器禁止条約の条文には、「核兵器のない世界」がどのような世界なのかが描かれています。
「核兵器のない世界」とは、今よりも、人々の人権が守られる世界であり、また人の命だけでなく、自然環境も守られる世界でもあり、あらゆる意味で、持続可能な世界を意味しています。
つまり、「核兵器のない世界」は、国連のもとで世界各国が推進しているSDGsの達成と密接に関連しているのです。
核兵器ほど、人の命をないがしろにする非人道的な兵器はありません。一度、投下されてしまえば、全ての人の営みは抹消され、自然環境や生態系も滅びてしまう。
また、放射能は、男性より女性の人体により深刻な被害を与えるとされ、ジェンダー不平等の兵器でもあります。
たとえ爆発しなくても、その存在自体が、人々の生活を破壊の影の下に追いやってしまう。これほど、SDGsの理念に反する存在は他にありません。
一方で、SDGsの17の目標それぞれを推進することも、核兵器の禁止と廃絶への重要な取り組みといえるのではないでしょうか。
例えば、環境保全の取り組みは、その運動の広がりから、核兵器が及ぼす自然環境への悪影響についても、一般市民の意識が高まることが予想されます。
また、貧困撲滅への運動は、SDGsの理念に反する存在である核兵器の開発投資に対して、厳しい眼を向けることにつながります。
さらに、ジェンダー平等の意識が高まれば、男性が支配しがちな安全保障や軍縮に関する意思決定の場に、女性の声が反映されやすくなるはずです。
「核兵器のない世界」へ 行動の一歩を!
このようにしてみると、実は、私たちの日常生活における、SDGs推進のための一つの行動が、直接的または間接的に、核兵器の廃絶につながっていく――つまり、「持続可能な世界」へのあらゆる行動が、「核兵器のない世界」への行動へとつながっていくと捉えることができます。
では、私たちには何ができるのでしょうか。
今すぐにできることとしては、例えば家族や友人に「核兵器禁止条約」を知っているかを聞くこと。
また、核兵器のイメージを家族や友人と語り合うこと。
そして、なぜ核兵器がいらないのかを、自分の言葉で伝えられるようになること。
そのような身近な語らいが、世論の形成へとつながり、「持続可能な世界」、ひいては「核兵器のない世界」の実現へと結びついていくのです。
参加者の「マイアクション(私の行動)」
創価学会平和委員会が取り組む「SDGs・気候危機アクションキャンペーン」の一環である、「SDGsオンラインシネマシリーズ」では、参加者の皆様に、「行動変容」の機会を提供することを目標としています。
ここでは、参加者から寄せられた日常に取り入れていきたい「マイアクション(私の行動)」を紹介します。
「マイアクション(私の行動)」
◆インスタグラムで、今日のオンラインシネマシリーズの内容の感想を共有していこうと思います。ちょっとでも目に触れてくれたら、という思いで、また周りの人を大切に思うからこそ、勇気をもってシェアしていこうと思います。(20代女性)
◆語り継ぐこと。違う意見を受け入れること。私は物語を書くので、「核」という題材も取り上げてみたいと思っています。(40代男性)
◆自分が学んだ知識、そのことを受けて考えたこと、思ったことを周りに伝え、少しでも核兵器廃絶、戦争があったことを伝えていきます。1ヶ月に1回だけでも良いので身近な人と対話する時間を作りたいと思います。(10歳未満女性)
◆知り、学び、身近で感じた小さな事を、地方紙にマイオピニオンとして投稿する挑戦をしています。(70歳以上女性)
◆将来、小学校教師になって、平和を軸にした教育をし、子供たちの幸せの基盤を作ると共に、未来に平和の種を撒く。そのために勉学に励む。(10代女性)
まず行動の一歩として、「知る」こと、そして、その「学び」を日常に取り入れ、自分の「行動」としていくこと――SDGsが掲げる「誰も置き去りにしない」世界へ、一人でも多くの人が「マイアクション」を起こす機会となるよう、本シリーズは今後も継続してまいります。
※今後の開催予定につきましては、随時、聖教新聞や、創価学会公式インスタグラム等で告知いたします。
本記事に関してのご意見・ご感想は、創価学会平和委員会【contact@peacesgi.org】までお寄せください。
また本記事について、ツイッターやインスタグラムで『#SDGsシネマ』『#希望と行動の種子』と付けて、ぜひ身近な人とご共有ください。
この記事の取り組みは、以下の目標に寄与することを目指しています。
- 目標1. 貧困をなくそう
あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる
- ターゲット1.1
2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。
- ターゲット1.b
貧困撲滅のための行動への投資拡大を支援するため、国、地域及び国際レベルで、貧困層やジェンダーに配慮した開発戦略に基づいた適正な政策的枠組みを構築する。
- 目標5. ジェンダー平等を実現しよう
ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児のエンパワーメントを行う
- ターゲット5.1
あらゆる場所におけるすべての女性及び女児に対するあらゆる形態の差別を撤廃する。
- ターゲット5.5
政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する。
- ターゲット5.c
ジェンダー平等の促進、ならびにすべての女性及び女児のあらゆるレベルでのエンパワーメントのための適正な政策及び拘束力のある法規を導入・強化する。
- 目標13. 気候変動に具体的な対策を
気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる
- ターゲット13.1
すべての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応力を強化する。
- ターゲット13.3
気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する。
- 目標16. 平和と公正をすべての人に
持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する
- ターゲット16.1
あらゆる場所において、すべての形態の暴力及び暴力に関連する死亡率を大幅に減少させる。