アーノルド・トインビー博士と池田大作先生の対談集『二十一世紀への対話』

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『歴史の研究』などで世界的に有名な歴史家、アーノルド・トインビー博士と池田大作先生の対談集『二十一世紀への対話』を紹介します。

アーノルド・トインビー博士と池田大作先生の対談集『二十一世紀への対話』(聖教新聞社)
『二十一世紀への対話』(聖教新聞社)

  

同書は現在までに世界25言語以上で発刊されており、世界の有識者から「人類の教科書」などと高い評価が寄せられています。

トインビー博士からの招請で始まった対談

対談のきっかけはトインビー博士からの招請でした。ロンドンにある博士の自宅で、1972・73年に延べ10日間にわたって対談が行われ、1975年に日本語版が発刊されました。

英語版のタイトルは『生への選択』。キリスト教文化で育った博士が、旧約聖書の中から引用して付けたものです。

発刊から40年を経た現在も世界の知識人に啓発を与える理由は、その内容に、時代や空間を超えた普遍性があるからでしょう。

現代社会の危機の根底にある「物質と精神のアンバランスな発展」

対談の内容は、「人生と社会」「政治と世界」「哲学と宗教」という三つの柱を軸として、多岐にわたっています。

例えば、世界は物質的に大いに進歩し、科学技術が発達したものの、肝心の人類の道徳や倫理は低いままで、原始社会と変わらないのではないかとの認識が語られます。

物質と精神のアンバランスな発展が、現代社会の危機の根底にあるとの見方で一致し、人類の精神性向上に何が必要かといった観点に話題は及びました。

本書ではさらに、貪欲(エゴ)など人間の普遍的な本性に真っ向から焦点を当てています。

冒頭から「人間はいかなる存在か」という本源的な話から始まり、人間の資質が向上しないことには、世界のさまざまな危機の解決には至らないと洞察しています。

時代は多神教を包容する「仏教」を求めつつある

二人の対話は人類精神の向上のための「宗教」のもつ役割にも話が及んでいきます。

トインビー博士は著名な歴史学者として、地球上の歴史を俯瞰しつつ、時代はキリスト教やイスラム教などの「一神教」ではなく、多神教を包容する仏教を求めつつあることを指摘しています。

対談の最後で、博士は「若いあなたは、このような対話をさらに広げていってほしい」と池田先生にバトンを託します。この対談は、その後の池田先生の世界的規模の対話運動の始まりとなりました。

歴史学者らしいダイナミックな洞察と、世界の問題を主体的にとらえて問題の解決を探ろうとする二人の姿勢に感動する一書です。

  

【対談者紹介】 アーノルド・J・トインビー(Arnold J. Toynbee)

1889年、ロンドンに生まれる。オックスフォード大学卒業。古代史専攻。

ロンドン大学教授、王立国際問題研究所研究部長などを歴任。主著に『歴史の研究』(全12巻)など。

1975年没。



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