ルネ・ユイグ氏と池田大作先生の対談集『闇は暁を求めて』

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1980年にフランスで出版され、翌年日本語版の本書が発刊された、現代フランス屈指の美術史家ルネ・ユイグ氏と池田大作先生の対談集『闇は暁を求めて』を紹介します。

『闇は暁を求めて』 ルネ・ユイグ 池田大作
『闇は暁を求めて』(聖教文庫)

  

池田先生は1973年にイギリスの著名な歴史学者トインビー博士との対談を終えた際、同博士から数人の識者を紹介されますが、本書の対談相手であるルネ・ユイグ氏もそのうちの一人と言われています。二人の対話は1974年に開始されました。

人類が負わされている問題が顕在化した1970年代

ユイグ氏は30歳の若さでルーブル美術館の絵画部長を歴任するなどフランスの著名な美術史家・美術評論家です。

第2次世界大戦でパリが陥落した際は、美術品を略奪に来たナチスに対し一歩も引かずに闘い、人類の至宝を守ったことでも有名です。また、早くから仏教に深い関心を寄せたことでも知られています。

本書は「人類が、今日負わされている問題ほど大きな問題に対峙したことは、おそらく未だかつてなかった」というユイグ氏の序文から始まります。二人が対談した1970年代は、いつ起きるかわからない核戦争の脅威、石油危機などの資源枯渇、公害による環境破壊など、多くの「危機」が重なる時代でした。

仏法は「より高い精神的な力」を樹立することで問題を解決する

前半部分では「危機」が最大のキーワードになっています。

背景にあるものとして、近代科学の発達と物質的欲望の拡大、大量消費社会の出現などを共通して挙げられます。

池田先生は人間の欲望が「野放し」になっている現状を指摘し、ユイグ氏も欲望を抑制できない「人間の本性の問題に帰着する」と原因を特定します。

その上で人間の欲望を制御する方法はあるのかとの問いを投げかけつつ、池田先生は仏教こそが「その解決を考えた」宗教であることを主張。人間の欲望から逃げたり、消滅させるのではなく、「より高い精神的な力」を樹立することで問題解決する方法を仏法の九識論などを用いながら展開します。

対談の最終部分でユイグ氏は、「私たちの考えは、その説明のしかたは別々の理念によっていますが、基本的には、たがいにそんなに隔たっていない」と結論しています。

仏教とキリスト教という異なる文明圏に育った二人が、現代の危機に対処する意味での仏教の可能性に一致して光を見出している点も大きな特徴の一つです。

  

【対談者紹介】 ルネ・ユイグ(Ren Huyghe)

ヨーロッパを代表する美術史家。ルーヴル美術館絵画部長などを歴任。

ルーブル美術館の絵画をナチス・ドイツから守り抜いた闘士であり、多彩な分野で功績を残した。

著書に「見えるものとの対話」など。

  



  

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