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気候変動の危機に立ち向かう―― トーゴの女性たちと森林再生の物語

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アフリカ西部に位置するトーゴ共和国という国をご存じでしょうか。西隣にはガーナ、東隣にはベナンという国があります。ベナンは近年、バスケットボールの八村塁選手のお父様の出身国ということでなじみがあるかもしれません。

日本から遠く離れたこの西アフリカの地で、創価学会と国際熱帯木材機関(ITTO)は、森林再生と女性のエンパワーメントを目指し、4年間の共同プロジェクトを実施しました。

ここでは、困難な状況の中、希望を胸に未来を切り開く女性たちの挑戦を紹介します。

深刻化する気候変動、解決に向けて森林再生の取り組みを

プロジェクトのきっかけとなったのは、気候変動問題です。

  

皆さんも最近はよく耳にされるかと思いますが、気候変動は深刻化の一途をたどっています。2024年の世界平均気温は産業革命前と比べて「初めて1.5°Cを超えた年」となり、観測史上一番の暑さとなりました(世界気象機関)。また、日本を含む世界各地で森林火災が発生していますが、ここにも気候変動が大きく影響していると言われています。気候変動は未来に不幸な出来事をもたらす現象でなく、今の全人類にとって共通の危機となっています。


気候変動と人道危機に対応し、持続可能な世界を未来世代に残すために、創価学会は国際熱帯木材機関(ITTO)とともに、2021年から2024年にかけてトーゴ共和国で森林再生プロジェクトを実施しました。

  

ITTOは、1986年に設立され、横浜のみなとみらいに本部を置く国際機関です。熱帯林の持続可能な管理および経営を促進し、合法的な伐採が行われた森林からの木材の国際貿易を発展させるため、生産国と消費国との間の国際協力を促進しています。


森林は、気候変動の原因となる大気中の二酸化炭素を吸収するだけでなく、頻発する大型台風やハリケーン、ゲリラ豪雨による土砂崩れを防止したり、生物多様性を保護したりするなど、私たちにとって必要不可欠な存在です。

  

苗木に水をやる様子

森林が再生

トーゴの平均気温は約28度。猛烈な雨の降る雨季と、作物が枯れてしまうほどの乾季があり、気候変動の影響を最も受けやすい国の一つです。同プロジェクトは、ブリッタ県パガラガル村とラック県アグエガン村の2つの村で実施されました。気候変動による天候不順等に加え、新型コロナウイルスの影響など、さまざまな困難な状況を乗り越え、続けられてきました。

  

プロジェクトの受益者はすべて女性で、全3期約4年にわたって150名が参画し、合計約7万株の苗木を生産、43ヘクタールの森林再生等に成功したほか、320キロの農作物種子を生産し、気候変動対策へ大きく貢献しました。

  

現地でのプロジェクトの様子を動画にて公開しています

アグロフォレストリーの実践で、女性のエンパワーメントを

受益者は、森林再生と農作物の生産を行う「アグロフォレストリー(併農林業)」と呼ばれる技術の研修を受けています。森林の管理や回復方法を学ぶとともに、植林や商品作物の生産、土地所有を可能にすることを通じて、女性のエンパワーメントと森林再生に寄与してきました。

食用作物としては、タピオカの原料ともなりアフリカの伝統的な食用作物であるキャッサバをはじめ、トウモロコシやココナッツ、落花生などを栽培。家庭の食料として、また余剰分は販売するなど、地域の食料安全保障に貢献しています。

トーゴでは、家父長制の伝統が色濃く残っている面もあり、とりわけ土地や財産に関する女性の権利については、一般的にあまり認められていません。結果、女性の自立が阻まれてきた部分があります。一方で、家事や育児等を通して家庭・地域を支えているのは多くの場合女性が多く、同プロジェクトは女性の経済的自立や地位向上につながっています。

「長年の夢がついにかないました」、「目を見張るほど森林が再生され、自信をもった。作物で家族を養うことができ、余剰作物を売って生活も豊かになった」――プロジェクトの参加者は目を輝かせながら語ります。

参加者の女性たちは、地域に体験や技術を伝える等、喜びの輪が広がっています。同プロジェクトには大きな反響があり、トーゴ政府から、2022年度最優秀地域森林再生賞が授与されました。

  

再生した木々と農作物

アフリカと日本 青年の連帯を

「21世紀はアフリカの世紀」――池田先生は一貫してアフリカの希望の未来を確信し展望しておられました。現在、アフリカは人口の約6割が25歳以下であり、青年の熱と力に溢れています。

現地にて同プロジェクトを実施する「コミュニティ森林経営のためのアフリカ女性ネットワーク」(REFACOF)のセシル・ンジェベト代表は、日本の青年に期待を寄せています。
「心強く思うのは、青年世代がこの問題に強い関心を持っていることです。アフリカと日本の青年たちが力を合わせて、この危機を打開していってほしいと願っています」

創価学会とITTOは、トーゴに引き続き、隣国のベナン共和国にて2024年より、同様の森林再生プロジェクトを開始しました。今後もアフリカから学び、アフリカと共に世界的な課題である気候変動問題の解決に取り組んでまいります。

  

ココナッツオイルを精製する様子

この記事の取り組みは、以下の目標に寄与することを目指しています。

●目標1.貧困をなくそう
あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる。

●目標2.飢餓をゼロに
飢餓を終わらせ、食料安全保障および栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する。

●目標5.ジェンダー平等を実現しよう
ジェンダーの平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う。

●目標13.気候変動に具体的な対策を
気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる。

●目標15.陸の豊かさも守ろう
陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する。