2024.12.06
揺れ動く心に負けない“賢人”の生き方 ~大聖人のことば~「八風」
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私たちの心は、さまざまな出来事と出合うたびに、揺れ動きます。
褒められると喜び、悪口を言われると気分が沈む。
ふとしたことで一喜一憂するのは、人の心の常とも言えるでしょう。
特に現代は、「ストレス社会」といわれるように、心に負担を感じる人が増えている傾向にあります。
揺れる心に振り回されない生き方をしたいと願う人も、多いのではないでしょうか。
日蓮大聖人は、さまざまな出来事に触れて、心が揺れ動くことのないように、弟子たちに正しい生き方を教えてきました。
門下に送られたお手紙から、その教えをひもといていきましょう。
人の心を揺り動かす8つの要素「八風」
仏法では、人の心を動揺させる‟喜び”や‟苦しみ”といった8つの要素のことを、風が樹木を揺らすように人の心を揺り動かすことから「八風」と呼んでいます。
日蓮大聖人は、門下の四条金吾に送ったお手紙の中で、この「八風」について教えられました。
賢人は 八風と申して八つのかぜにおかされぬを 賢人と申すなり。利い・衰え・毀れ・誉れ・称え・譏り・苦しみ・楽しみなり。
(四条金吾殿御返事(八風抄) 御書新版1565ページ・御書全集1151ページ)
八風に侵されない生き方こそが、賢人の姿であると仰せです。
「八風」は、人が望むうれしい4つのこと「四順」と、嫌がり避ける4つのこと「四違」に分かれます。
利益を得て潤うこと「利い」、世間から誉められること「誉れ」、人々から称えられること「称え」、心身が楽しいこと「楽しみ」が、人が望み求める4つのこと。
「四順」です。
また、さまざまな要因で衰退すること「衰え」、世間から軽蔑されること「毀れ」、人々から悪口を言われること「譏り」、心身が苦しむこと「苦しみ」が、人が嫌がり避ける4つのこと。
「四違」です。
「四順」は本来、喜ばしいもののように思えます。しかし、人々から尊敬や称賛を集めることで、舞い上がって慢心を抱くこともあります。
一時的な幸福を追い求めてしまうと、世間体や格好ばかりを気にして、大切なものを見失うこともあるでしょう。ここでは、そうした目先のものに流される生き方を戒められています。
逆に、大きな損失があったり、軽蔑や非難・中傷を受けたりすると、落ち込み、気力を失うこともあります。誰もが、苦しい状況からは逃げたくなるものです。そうした八風に触れて、私たちの心はたやすく揺れ動いてしまいます。
大聖人は、門下に対して、そうした世間の評判や、目先の利害損得に流されることなく、八風に動じない「賢人」の生き方を貫くように教えられました。
逆風をも成長のエンジンへと変えていく生き方
このお手紙をいただいた四条金吾は、江間氏に代々仕える武士の家柄で、忠義に厚く、主君から大きな信頼を寄せられていました。
大聖人が流罪を許された喜びから、金吾は主君の江間氏が法華経の信仰に帰依するように奮闘します。
大聖人は、金吾の行動を称える一方、主君との摩擦を避けるよう忠告。
誠実な態度を貫くよう諭されました。
しかし、かねてから金吾をねたむ同僚たちは、ここぞとばかりに悪意あるデマを流し、陰謀を企てます。
そして、大聖人の懸念が的中し、金吾は主君から遠ざけられ、ついには、領地替え(現代でいう左遷)を命じられてしまったのです。
金吾は、所領問題で主君を訴えようとまで、思い詰めてしまいました。
そんな金吾を大聖人は温かく励ますとともに、怒りに任せた軽はずみな行動を戒められました。
「八風」に動じない「賢人」を目指し、どこまでも恩ある主君への忠義を尽くし、信頼を取り戻すよう教えられたのです。
金吾は、 大聖人の仰せのまま、誠意を尽くして主君に仕え続けた結果、やがて主君からの信頼も回復し、武士として人々からも称賛されるようになっていったのです。
誰人においても、「無風」の人生はありえません。「順風」の時もあれば、「逆風」が吹くこともあります。大切なことは、環境に左右されず、逆風をも成長のエンジンとして、全ての状況を勝利の人生への「追い風」「原動力」にしていくことではないでしょうか。
「負けない人」が最後に必ず勝つ
池田先生は、次のようにつづられています。
八風に侵されない「賢人」の生き方とは、別の言い方をすれば「負けない人」の異名ともいえるでしょう。
(『勝利の経典「御書」に学ぶ』第17巻)
負けないことが人生勝利の最大の要諦といっても過言ではありません。途中はどんなに辛く苦しくとも、へこたれない。あきらめない。粘り強く歩みを進めた人が、最後には必ず勝つのです。
(『勝利の経典「御書」に学ぶ』第17巻)
何ものにも揺るがぬ心で、粘り強く正しい道を歩み抜く。
その「負けじ魂」の生き方を貫くことで、最後に必ず、人生の幸福と勝利をつかむことができるのです。