人生で大切にすべき価値とは? ~大聖人のことば~「心の財」

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世界的なIT企業・アップルの創業者で知られる、スティーブ・ジョブズ。
彼は生前、このような言葉を残しています。

「墓場で一番の金持ちになることは、私にとって重要ではない。
夜眠るとき、私たちは素晴らしいことをしたと言えること、それが私にとって重要なのです」

人は”何のため”に生きるのか―。
”人生で大切な価値”とは何なのかー。

鎌倉時代、日蓮大聖人は、門下に対して”人生の目的”を教えられた数々のお手紙を送られました。

  

その大聖人の教えを、原田教学部長が解説します。

人生をよりよく生きるために大切な「心の財」

日蓮大聖人は、門下である四条金吾に送られたお手紙で、人間が生きる上で大切な価値を教えられています。

  

蔵の財よりも身の財すぐれたり、身の財より心の財第一なり。この御文を御覧あらんよりは、心の財をつませ給うべし。

(崇峻天皇御書(三種財宝御書) 御書新版1596ページ・御書全集1173ページ)


「蔵の財」とは、物質的な財産のこと。

「身の財」とは、社会的な地位や健康、身につけた技能などのこと。
もちろんこれらは大切なものですが、それ以上にかけがえのないものとして、大聖人は「心の財」をあげられました。

「心の財」とは、心の豊かさを指し、誰からも信頼されるような人間性の輝きや、人を敬う誠実なふるまい、また、どんな困難にも負けない強い心などのことです。

日蓮大聖人は、人生をよりよく生きるための根本の目的は、この「心の財」を積んでいくことにあり、そのために仏法があると教えられました。「心の財」があればこそ、「蔵の財」や「身の財」の価値も最大限に生かしていくことができるのです。

苦境においてこそ「人間性の輝き」で周囲から信頼を

  


四条金吾は、優れた武士で医術の心得もあり、忠義にも厚く、主君から信頼されていました。しかし、そんな彼を嫉妬する同僚のデマにより、一時期は主君から法華経の信仰を捨てるよう迫られ、所領を没収されそうになる危機もありました。金吾は一本気で正義感が強い半面、短気な性格ゆえに、周囲と衝突することもあったようです。

このお手紙をいただいた時は、主君の信頼を回復しつつありましたが、金吾を取り巻く状況は、まだまだ険しいものがありました。そんな金吾に対し、大聖人は、どんな迫害にあっても、すべての人に「仏の生命」があると敬い続けた不軽菩薩の姿にこそ、法華経の修行の真髄があると指南されます。

  

さらに、「釈尊がこの世に出現した究極の目的は、人の振る舞いを示すことにあった」と仰せになります。不軽菩薩のように、あらゆる人を尊敬し、誠実に振る舞う生き方の中に、仏法の真価が現れると教えられました。

  

ゆえに大聖人は、「『四条金吾は、主君に仕えることにおいても、仏法に尽くすことにおいても、世間における心がけにおいても、立派である』と鎌倉の人々から言われるようになりなさい」と、苦境においてこそ、「人間性の輝き」によって、周囲からの信頼を勝ち得るようにと諭されたのです。


このように金吾は、大聖人に度々激励を受けながら、誠実なふるまいを貫き、粘り強く前へ進んでいきました。やがて、新たな所領も与えられ、人々から「立派な武士である」と賞賛を受けるようになったのです。

  

「心の財」を積む中に幸福のみちがある

池田大作先生は、「心の財」について次のように綴られています。

  

本当に人間が幸福になるには″心の財″を積むしかない。心を磨き、輝かせて、何ものにも負けない自分自身をつくっていくのが仏法なんです。

(小説『新・人間革命』第25巻 「共戦」の章)

  

「仏法即社会」である。ゆえに、仏法の哲理を社会に開き、時代の建設に取り組むことは、信仰者の使命である。それには、一人ひとりが人格を磨き、周囲の人びとから、信頼と尊敬を勝ち得ていくことだ。人間革命、すなわち、人格革命こそが、そのすべての原動力となるのである。

(小説『新・人間革命』第24巻 「灯台」の章)


何があっても崩れない「心の財」を築き、誠実なふるまいで周囲から信頼される生き方を貫く。
日蓮大聖人は、門下が人生の目的を見失わないよう、励ましの言葉を送り続けたのです。