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スペイン・バルセロナで戸田平和研究所が学術会議

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ソーシャルメディアと平和構築を巡り


戸田記念国際平和研究所(ケビン・クレメンツ所長)の学術会議が2025年11月20日から23日まで(現地時間)、スペイン・バルセロナ市内で開催された。
 
同研究所の原点は、恩師・戸田城聖先生の「地球上から悲惨の二字をなくしたい」との熱願にある。かつて池田大作先生は、同研究所主催の国際会議にメッセージを贈り、期待を寄せた。“同じ人間として他者の苦しみに対し「胸を痛める心」こそ、文明と文明を隔てる壁や、宗教と宗教の間に立ちはだかる垣根を越えて、人間と人間とを結ぶ対話の基盤となる”――危機の時代に真正面から向き合い、対話の力で平和構築を推進する同研究所の使命はいや増して大きい。
 
今回の会議は、同研究所の「ソーシャルメディアと平和構築」研究プログラムの一環で、「テクノロジーを賢く生かす熟議対話のデザイン」とのテーマで行われた(NGO「ビルドアップ」と共催)。北南米、アジア、欧州、アフリカなど世界各地から情報技術やAIの専門家、国際・行政機関の関係者、平和運動家など幅広い分野の識者ら35人が集い、混迷を深める世界を希望の光で照らす有意義な議論の場となった。

  

スペイン・バルセロナ市内で開催された戸田記念国際平和研究所の学術会議。互いの国や分野の取り組み等について、活発な意見交換がなされた(11月21日)


会議では、社会の分断や、それに付随して発生している諸問題は、SNSやそれを支えるデジタル技術の発達が大きく関わっており、アクセス数を基準とした収益モデルがSNSによる社会の分断や憎悪を生み出し、増幅させていると指摘。人権擁護の観点からプラットフォーム企業への規制の強化のほか、先進的な知見を主体的に取り入れるべきであるとの意見があった。
 
一方、ソーシャルメディアの活用は、地理的・安全上の制約や、対面実施のコストを大幅に軽減し、包括的で質の高い市民参加のプロセスを実現し得るとの見方も共有された。さらに、「熟議テクノロジー」と呼ばれる新たな種類のテクノロジーを適用することで、率直な意見表明や他者理解を促進し、また合意点や相違点を可視化し、民主的議論のプロセスの質と公平性を高められるとの利点が挙げられた。
 
他方、人間の複雑な意思決定や、相互作用が存在する多種多様な現場にあっては、デジタルでの対話はあくまで「補助」や「過程」であり、進むべき道を相対する「語らい」の中で模索すべきとの主張もあった。リサ・シャーク上級研究員は、同研究所が長年推進してきた、熟議テクノロジーの活用による民主主義、平和構築の研究について報告した。

  

学術会議の参加者が記念のカメラに納まった(同22日)