ガンジー記念館講演
不戦世界を目指して

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インドで最も権威のあるガンジー研究機関「国立ガンジー記念館」。
同記念館の招請により、池田大作先生は1992年2月、インド国立博物館で講演した。
当日の講演映像を柱に、ラダクリシュナン博士(当時の館長)などの識者が講演の意義を語る。

※本記事は、動画の内容を抜粋し記事にしたものです。

ガンジーの思想と行動を世界に伝える「国立ガンジー記念館」

イギリスによる植民地支配から、インド独立を勝ち取ったマハトマ・ガンジー。

ガンジーが凶弾に倒れた場所に、その思想と行動を世界に伝えゆく研究機関「国立ガンジー記念館」がある。
インド文化省が管轄し、首相が議長を務める最も権威ある機関である。

公民権運動の指導者・キング牧師、南アフリカのマンデラ大統領も、ガンジーの精神を継承する誓いを込め、この地を訪れている。

ガンジーの思想に新たな光を当てた講演

1992年2月11日、このガンジー記念館主催による、池田SGI(創価学会インタナショナル)会長の講演が行われた。

講演の模様は、インドの全国紙「タイムズ・オブ・インディア」をはじめ、有力紙において、トップニュースとして報道された。

インドを代表する識者からも大きな反響が寄せられた。

  

スワミナサン博士 パグウォッシュ会議 元会長

池田SGI会長が、ガンジー記念講演を行ってくださったことを、とても喜ばしく思います。たいへん素晴らしい講演でした。ガンジー思想の本質をとらえていました。


池田SGI会長はこの講演で、ガンジーの思想に新たな光を当てたのだった。

ガンジー記念館では年に1回、副大統領もしくは首相出席のもとで、国際的に傑出した人物を招へいし、記念講演を行ってきた。

池田SGI会長に講演を依頼したのは、当時館長であり、ガンジー研究の第一人者として世界に知られているラダクリシュナン博士。

1984年の来日以来、度重なる交流を通し、SGI会長の思想と平和行動を高く評価していた。

  

ラダクリシュナン博士 インド・ガンジー研究評議会 議長

世界平和や核兵器廃絶などに不断の努力をされてきた池田SGI会長を迎えて、権威あるガンジー記念講演をしていただけたことは、たいへん光栄でした。


会場は、インドを代表する知識人・芸術家・政治家・研究者など、400人にも上る聴衆で、入口までぎっしりと埋め尽くされていた。

ガンジーの非暴力主義を掘り下げる

講演のテーマは、「不戦世界を目指して ガンジー主義と現代」。

折しも前年の1991年末、ソ連邦が消滅。冷戦終結後の世界秩序もいまだ見いだせていない激動の時代であった。

  

池田SGI会長

さて、私どもは現在、一世紀に一度あるかないかの大変革期に直面しておりますが、ベルリンの壁の崩壊からソ連邦の消滅に至る、この数年の動きは、あらゆる歴史家の予測を大きく上回ってしまいました。

そうしたカオス(混沌)が強まれば強まるほど、私は、狂瀾怒涛の逆巻く歴史の川面の奥深く、静かに、訴えるように語りかけているマハトマ・ガンジーの声に耳を傾けざるを得ないのであります。


SGI会長はガンジーの思想と生涯を論じ、不戦の世界を築くという人類最大の課題を実現しゆく方途を示していった。

そして、「楽観主義」、「実践」、「民衆」、「総体性」この4つの視点から、ガンジーの非暴力主義を掘り下げた。

中でもSGI会長が強調したのは、ガンジーの生涯を貫く「実践を伴った楽観主義」であった。

ガンジーが貫いた「実践を伴った楽観主義」とは

  

池田SGI会長

「非暴力には敗北などというものはない。これに対して、暴力の果ては、かならず敗北である」との、彼の静かなその中にも、不敵な自信をのぞかせた言葉は、汝自身の胸中を制覇した人のみがよく発しうる、精神の勝ちどきであります。
だからこそ「楽観主義」を標榜できたのであり、そこに、非暴力という人間の善性の極限、すなわち臆病や卑怯による"弱者の非暴力"では絶対なく、勇気に裏付けられた"強者の非暴力"を民衆と分かち合おうとした、ガンジー主義の真髄があると、私は思うのであります。

  

ロケッシュ・チャンドラ博士 インド文化国際アカデミー理事長

ガンジーはインド国民が、非暴力闘争を展開できると信じていました。このような楽観主義、つまり人間生命の中には、正義を実現する力があり、悪には永遠性はないというのが、ガンジーのインドおよび人類の未来に対する絶対の確信でした。


未来への希望を持ち続ける民衆の善の連帯があれば、必ず不戦の世界を築いていける。SGI会長は、ガンジーの楽観主義を通し、そう訴えた。
そしてSGI会長は、その楽観主義が、粘り強き実践を伴うものであったことに言及。その象徴として「塩の行進」を挙げた。

当時インドでは、塩の製造・販売はイギリス政府のみ許され、植民地支配の収入源になっていた。ガンジーはそれに抗議するため、およそ400キロ離れた西海岸に向け、行進を開始。わずかな人数で始めたこの行進は、数千人にも上る「塩の行進」へと拡大。インド全土に広がっていった。

  

池田SGI会長

この非暴力の高き理想を、「万人に可能」ならしめんとして民衆に訴え、強者たれ、強者たれ、と叫び続け、あのような大規模な大衆運動にまで組織化していった例は、歴史上かつてなかった。 民衆がいかなる権力やいかなる権威をも恐れなくなってこそ、民主主義の時代の夜明けではないでしょうか。そうであるならば、ガンジーのメッセージはインドに限らず、全地球上の民衆への贈り物として、未来永遠に未来世紀へと一段と輝きを増し続けていることを私は確信する一人です。


「民衆の覚醒」、「民衆の自立」を基盤としていたガンジーの実践。
それは、一人一人の人間革命を通して平和を目指す、SGIの運動に通じるものであった。

「人間革命」は、あらゆる変化の土台

  

ラダクリシュナン博士

ガンジーはメッセージを求められると、“私の人生が私のメッセージだ”と答えました。どういう意味かといえば、私たち一人ひとりが改革を起こす力を秘めているのだということです。池田先生も同じように、このことを自らの生き方を通して世の中に広めてきました。先生の言う「人間革命」は、あらゆる変化の土台です。私たちが必要とし、思い描く変化の土台なのです。


池田SGI会長の講演は、ガンジーを不戦の世界を築くための大きな示唆をもたらす存在として、現代に生き生きとよみがえらせるものとなった。

  

ロケッシュ・チャンドラ博士

池田SGI会長の講演から、ガンジーのメッセージは生き続けるとの希望をいただきました。私たちは彼を政治的人物として見てきましたが、SGI会長の講演をお聴きした後は、ガンジーをより哲学的な観点で観るようになりました。ガンジーとSGI会長の思想は、今後何年間、また、何世紀をも決定付けることでしょう。

  

ラダクリシュナン博士

暴力のない社会を目指したガンジーの仕事は、まだ完成していません。池田SGI会長がこの(SGIの)運動の先頭に立つとき、私たちの多くは、ガンジーの精神が今もサティヤーグラハ(非暴力運動)を追求していると思えるのです。多くの人にとって池田SGI会長は現代のガンジーです。

  

  

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池田大作先生の足跡