今を生きるあなたに ~日蓮大聖人のことば~ 「冬は必ず春となる」

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自ら筆をとり、多くの門下に手紙を書き送られた日蓮大聖人。『日蓮大聖人御書全集 新版』の中にも、350を超える手紙が収録されており、これほど門下に手紙を書き送った仏教の宗祖はいないといわれています。

門下に宛てた励ましの手紙の中から、今を生きるあなたに届けたい「大聖人のことば」を紹介します。

語り手は、女優の岸本加世子さんです。

女性門下の健気な信心をたたえて

「法華経を信ずる人は冬のごとし。冬は必ず春となる。いまだ昔よりきかずみず、冬の秋とかえれることを。」
(妙一尼御前御消息 御書新版1696㌻・御書全集1253㌻)

この御文は、日蓮大聖人が妙一尼という女性門下に送った手紙の一節です。

仏教の宗祖の中で、大聖人ほど自ら筆をとり、門下に手紙を書き送った人物はいないといわれています。

その多くは平仮名まじりのわかりやすい表現。
そこには、あらゆる人を励まし、すべての人を幸福に、との大聖人の思いがこめられています。

妙一尼は鎌倉に住み、夫と純粋な信仰を貫いてきました。しかし、大聖人の佐渡流罪中に夫を亡くします。

残された子どもたちはまだ幼く、なかには病気の子もいたようです。

それでも妙一尼は、佐渡の大聖人のもとへ、身の回りの世話をする人を送り、献身的に大聖人を支えました。また、大聖人が佐渡から還り、身延に入った後も、変わらぬ真心を尽くしました。

この手紙は、そうした妙一尼の健気な信心をたたえて、送られたものです。

確信のことば

この御文からは大聖人の確信が伝わってきます。
冬は必ず春となる。必ずということは、例外がないということ。

大聖人ご自身も、佐渡への流罪という、命に及ぶ大難を勝ち越えた後でした。絶望の冬ともいえる状況から、“勝利の春”の姿を示されたのです。

だからこそ、今がどんなに厳しい状況でも、必ず宿命転換できるとの、大確信の励ましがあったのです。

限りない希望

この御文には、限りない希望がこめられています。
鎌倉時代は、うちつづく災害・ききんによって、人々は不幸にあえいでいました。

そのような時代にあって、“必ず春が来る”との力強い励ましは、妙一尼の孤独や、不安を打ち破ったに違いありません。

人は、ひとたび厳しい状況に立たされると、その苦しみに終わりがないと思ってしまいがちです。

しかし、大聖人は永遠につづく冬はないのだと仰せです。
あきらめなければ、そして一歩ずつでも歩みを止めなければ、必ず希望の春はくる。日蓮大聖人の教えは、希望の哲理なのです。

逆境の冬にこそ大きな意味がある

さらに、「法華経を信ずる人は冬のごとし」と仰せのように、大聖人は、冬のような逆境にいることにも、大きな意味を見出しています。

池田先生は、次のように語られています。

「“冬”は、素晴らしい“春”のための『充電』と『鍛え』の時である」

「“冬”の間にこそ、どう戦い、どれほど充実した時を過ごすか。必ず来る“春”を確信し、どう深く生きるかである」

「“春”を呼ぶ宇宙のリズムに生命が合致しなければならない。そのための妙法の仏道修行なのである」

凍てつくような苦難の冬から、幸福が芽吹く希望の春へ。

どんな苦難をも乗り越えていける力が、ほかでもない、私たち自身の中に秘められている——この御文はその事を教えています。