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ブラジルでのCOP30を前にSGIが声明を発表「気候危機の打開へ 人類共闘の道を」

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COP30の開催地となるブラジルのベレンで、昨年6月に行われたY20サミット(主要20カ国・地域の青年による国際会議)の準備イベント。ブラジルSGI青年部やアマゾン創価研究所の代表も参加し、気候変動をはじめとする地球的な課題が議論された


2025年11月10日からブラジルのベレンで開催される、国連気候変動枠組条約の第30回締約国会議(COP30)――。この会議を前に、SGI(創価学会インタナショナル)が「気候危機の打開へ 人類共闘の道を」と題する声明を発表した。
 
この声明は、本年1月の“核使用の防止に関する声明”に続く形で、地球的な課題に焦点を当てたSGIの声明として、世界の各地域(アジア太平洋、ヨーロッパ、アフリカ、北米、中南米)で平和運動を進める国々のリーダーなどで構成される「SGI声明委員会」が中心となってまとめたものである。
 
声明ではまず、世界の平均気温の上昇で異常気象による災害の頻発や氷河の融解が進み、多くの人々の生存基盤が脅かされている一方で、温室効果ガスの排出量を大幅に削減するための国際協調が思うように進んでいない状況について言及。
 
平均気温の上昇を1・5度以内に抑えるという「パリ協定」の目標達成が危ぶまれる中、市民社会の側から“問題解決を絶対にあきらめないという行動の軸足”を築くことが重要となると強調。その機運を高めるために、さまざまな宗教が協力して、一人一人が“人間的な良心”を発揮する源泉となり、持続可能な地球社会を建設する行動を後押しすることを提唱している。
 
また、気候危機の打開を求めて、世界の青年が時代変革への新しい潮流を生み出している動きを紹介しながら、気候変動枠組条約の事務局内に常設の機関として「ユース協議会」を設置することを提案。こうした青年世代の参画の強化を図る中で、同じ地球に生きるすべての人々と将来世代を守る挑戦を成し遂げることを呼びかけている。
 
  ***  ***  ***

今、この時代に生きる私たちと将来世代の生存基盤を根源的に脅かしているものは、冷戦終結後で最も深刻となっている「核兵器使用のリスクの高まり」と、“地球沸騰化”と表現されるほど切迫の度を増す「気候危機」の問題である。
 
私たちSGIは本年1月、核兵器使用の防止を呼びかける声明を発表した。
 
これに続く形で今回、ブラジルのベレンで11月10日から開催される国連気候変動枠組条約の第30回締約国会議(COP30)を前に、気候危機の打開に向けての声明を発表したい。

現在と将来世代の生存基盤守る
温暖化防止の対策強化が急務

  

異常気象が多発し海面水位も上昇

 観測史上で“最も暑い年”となった昨年を上回るペースで、本年も異常な気温が世界各地で記録されるとともに、今まで経験したことがないような規模での豪雨や洪水が頻発し、甚大な被害をもたらしている。
 
 温室効果ガスである二酸化炭素の大気中の濃度が最高水準に達する中、世界のすべての主要な氷河の融解が進んでおり、海面水位の高さも13年連続で記録を更新している。また、大規模な火災の増加によって世界の森林減少が急激に進み、失われた森林の面積は過去最高を記録した。
 
 「未来は昔の未来ならず」という警句がある。
 
 これまでの時代は、さまざまな変化が起きても、未来の姿はある程度、予測可能なものとして捉えられてきた。しかし今、多くの国の人々が、気温についても災害に関しても「これまでとは明らかに次元が異なる」と感じるほど、あらゆる場所で危機が顕在化しているのだ。
 
 このように“未来に対する不確実性”が急激に高まる中、気候危機に関して、二つの面から危険水域に向かいつつあることが懸念されている。
 
 一つ目は、平均気温の数値自体に関するものである。
 
 温室効果ガスの排出量の削減を巡る国際合意である「パリ協定」で掲げられた、“平均気温の上昇を1・5度以内に抑える”という目標の実現が、かなり危ぶまれているのだ。
 
 すでに現在の段階においても気候危機の影響で、太平洋地域の島嶼国をはじめ、住む場所や生活基盤に深刻な打撃を受けた人々は後を絶たない。
 
 かりに、1・5度以内という目標から大きく逸脱する形で気温上昇が進めば、世界中の人々の生命と尊厳と生活が著しく損なわれることが避けられないのである。
 
 そして二つ目は、問題解決に欠かせない国際的な連帯が減退する恐れが高まっていることである。
 
 近年、先進国と途上国の間での合意形成が難しくなっていることに加えて、関税の引き上げなどの影響で世界経済の先行きが不透明さを増す中で、温室効果ガスの大幅削減のための国際協調にもブレーキがかかろうとしている。
 
 こうした混迷深まる国際情勢を目の当たりにする中で、世界中の人々の間で“気候危機の解決はもはや困難ではないか”というあきらめの空気が広がってしまえば、気候変動対策を強化することはおろか、継続することも困難になりかねないのだ。

  

昨年4月、インドのムンバイで行われた環境展示「希望と行動の種子」。インドでは同展を、教育機関など250以上の会場で開催。15万人を超える若い世代に“一人一人の人間が持つ限りない力”を信じることの大切さを訴えてきた

  

一人一人の人間に限りない力が

 しかし、私たち市民社会の一人一人が声を上げ、行動を起こすことによって、変革の波を大きく広げることのできる分野は、まだまだたくさんある。
 
 かつては、多くの国々での導入は困難といわれていた再生可能エネルギーも、国際エネルギー機関(IEA)の予測によれば、遅くとも来年中に、石炭を超えて“世界最大の電力源”になると見込まれているのだ。
 
 COP30が開かれるブラジルは、振り返れば1992年に地球サミットが行われ、生物多様性条約とともに、気候変動枠組条約の署名が開始された場所でもあった。
 
 これらの歴史的な条約をはじめ、近年の新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な大流行)の克服に向けての国際協力に象徴されるように、私たち人間には本来、国家の枠組みを超えて“共に進むべき針路を打ち出す力”が具わっており、未曽有の危機に襲われてもあきらめることなく、“共に手を携えて互いの生命と尊厳を守ろうとする精神”が発揮できる存在のはずだ。
 
 私たちSGIはこの確信に基づいて、気候危機をはじめ環境問題に関する市民レベルでの意識啓発の観点から、地球憲章インタナショナルと共同制作した環境展示「希望と行動の種子」を10言語、24カ国・地域で実施してきた。
 
 また日本の創価学会でも、国際熱帯木材機関(ITTO)と共に、2021年から西アフリカで森林再生支援に取り組むなど、持続可能な地球社会を築くための活動を世界各地で行ってきた。

  

トーゴ共和国で創価学会などが進めた森林再生支援のプロジェクト。子どもたちも笑顔で“未来のための労作業”を見つめる

問題解決を絶対にあきらめない
市民社会の側から行動の波を!

  

弱い立場の声を議論の場に届ける

 そこで今回の声明では、これまで活動を続ける中で培ってきた経験を踏まえつつ、気候危機の打開に向けて国際的な連帯を強化していくための提案を二つ行いたい。
 
 第一の提案は、市民社会での行動喚起に関するものである。
 
 温室効果ガスの排出量の削減をはじめとする、気候危機の打開のための挑戦においては、各国単位での対策の推進にとどまらず、全地球的なレベルで“希望と安心の未来を求める民衆の意思”を結集し、市民社会の側から“問題解決を絶対にあきらめないという行動の軸足”を築くことが、切実に必要となっている。
 
 その挑戦において重要な推進力の一つとなりうるのが、さまざまな信仰を背景とした宗教コミュニティーである。
 
 この点については、昨年11月、アゼルバイジャンで開催されたCOP29で気候変動枠組条約に関する宗教間連絡委員会が行事を主催した際に、SGIの代表が、「世界人口の8割以上が何らかの信仰や価値体系を持っていることを踏まえて、宗教コミュニティーが“気候危機に対処するための人々の行動変容”を促す上で独自の役割を担うことができるのではないか」と提起したところでもある。
 
 SGIが、他のNGO(非政府組織)と連携しながら、気候変動問題に取り組む中で、特に心がけてきたのは、①気候変動に関する正しい情報を広めること、②被害を受けて現実に苦しんでいる人々など、弱い立場に置かれている人々の声をすくい上げて、議論の場に届けること、③信仰者として、議論の中心に「人間性」や「生活の現場」からの視座を置くように呼びかけること――の3点であった。
 
 このうちの②と③については、池田大作先生がSGI会長として、気候変動問題をはじめとする地球的な課題の解決を目指し、対話と提言を重ねてきたものに基づいている。
 
 池田先生は2020年の平和提言で、海面水位の上昇による土地の水没などの危機に直面している島嶼国の人々に思いを馳せながら、「困難な状況に陥った人々を誰も置き去りにしないこと」の重要性を何よりも強調していた。
 
 自らが創立した戸田記念国際平和研究所が、2018年から太平洋の島嶼国における気候変動の影響に焦点を当てた研究プロジェクトを進めてきたことを紹介しつつ、「他の島などに移住して“物理的な安全”が確保できたとしても、自分の島で暮らすことで得てきた“存在論的な安心感”は失われたままとなってしまう。ゆえに、気候変動の問題を考える際には、こうした抜きがたい痛みが生じていることを十分に踏まえなければならない」との留意を促していたのである。
 
 その上で、「ともすれば気候変動に伴う被害を巡って、数字のデータで表されるような経済的損失の大きさに目が向けられがちですが、その陰で埋もれてきた“多くの人々が抱える痛み”への眼差しを、問題解決に向けた連帯の基軸に据えることが大切ではないでしょうか」と呼びかけていた。
 
 世界銀行の予測によると、平均気温の上昇がこのまま続けば、住み慣れた場所を追われる“気候難民”の数は、2050年までに世界全体で2億人を超える恐れもあるといわれているだけに、この池田先生の警鐘は、ますます重みを増しているといえよう。

  

昨年11月のCOP29で、SGIが他の団体と協力して、気候変動問題に対する「信仰を基盤とした団体(FBO)」の独自の貢献のあり方をテーマにした行事を開催(アゼルバイジャンのバクーで)。“人々の声をすくい上げる”という面でのFBOの強みなどが確認された

  

人間の良心を薫発する宗教の役割

 今回のCOP30の開催に当たり、議長国であるブラジルと国連は、今後の気候変動対策を展望する上で、政策や科学的な面からの検討に加えて、“倫理性”と“包括性”の視座に基づく検討が重要になると呼びかけ、「グローバル・エシカル・ストックテイク」と呼ばれる倫理的な評価を進めるための新しい枠組みを提唱している。

 これは、温室効果ガスの削減という“数値的な目標”に目を向けるだけでなく、“私たち人間が地球環境に対して何をしているか”を見つめ直しながら、私たちがどのような生き方を選び、どのような世界を築いていくのかについて、国家の枠を超えた人類レベルでの集団的な意思の喚起を目指したものだ。
 
 その取り組みの中核にあるのは、“人々の行動様式と集団としての針路の根本的転換がなければ、さまざまな技術的な解決策も真に効果を発揮することができない”との認識である。
 
 この第一歩として、信仰を基盤とした団体(FBO)の立場から私たちSGIは、「グローバル・エシカル・ストックテイク」の実施を支援することを表明し、若い世代を中心にする形でこれに関する取り組みを進め、その結果をCOP30に提出したところである。
 
 温室効果ガスの排出量削減などの対策を裏支えするこの重要な取り組みが軌道に乗るよう、宗教間の連帯をさまざまな形で強化することを呼びかけたい。
 
 今こそ、あらゆる宗教が、問題解決への行動を支える“人間的な良心”を一人一人が発揮するための源泉となるとともに、いかなる困難や試練に直面しても、あきらめずに立ち向かう“人間の精神の力強さ”を薫発する役割を、これまで以上に積極的に果たすべきではないだろうか。
 
 その観点に立って、今後のCOPの場で、さまざまな宗教団体やFBOがグッド・プラクティス(成功事例)を学び合い、共有する場を設けながら、気候危機の解決と持続可能な地球社会の建設への道を広げていくことを提唱したいのである。

気候変動枠組条約の事務局に常設の「ユース協議会」を設置

  

国際司法裁判所の画期的な勧告

 続いて第二の提案は、制度面での強化に関するものである。
 
 具体的には、青年世代が中心となって、問題解決への突破口を開くための新たな対策や実施方法を検討し、毎年のCOPの議論の場に提起していく「ユース協議会」を、気候変動枠組条約の事務局内に常設の機関として設置することを提唱したい。
 
 近年、気候変動対策の強化を求めて世界各地で声を上げ、それぞれの国や地域で温室効果ガスの削減につながるアイデアや行動を発信してきたのが、青年世代にほかならなかった。
 
 その根底には、自分たちの世代だけでなく、これから生まれる将来世代の生存基盤を何としても守り、自分たちが求める“希望の未来”を自分たちの手で切り開きたいという、強い思いが脈打っている。
 
 また、現在の国際社会における意思決定の影響を、より大きく受けるのが青年世代であり、将来世代であるだけに、「気候正義」(気候変動問題に関する公正さの実現)の観点からも、意思決定のプロセスへの参画を求める声が上がっている。
 
 こうした中、2022年に国連総会で、「清潔で健康的かつ持続可能な環境に生きる権利」に関する決議が採択された。これは、“環境への権利”を、国連総会で初めて人権として明確に認めたものであり、特筆すべきは、その対象として将来世代にも言及していたことである。
 
 SGIとしても、以前から、気候変動対策において人権の視点を強化することの重要性を、国連人権理事会での諸行事をはじめ、毎年のCOPや、2024年のケニアでの第6回「国連環境総会」の関連行事で訴えてきたところであり、「清潔で健康的かつ持続可能な環境に生きる権利」の制定を目指す運動にも加わってきた。
 
 また本年7月には、国際司法裁判所(ICJ)が画期的な勧告的意見を出した。国家には、温室効果ガスの排出から環境を守る義務があり、その履行のために相当の注意を払い、各国が協力して行動する義務があるとの判断を示したのである。
 
 この審理が実現するきっかけを生み出したのも、青年世代であった。
 
 ユースの団体である「気候変動と闘う太平洋島嶼国の学生たち」が声を上げる中で、島嶼国のバヌアツがイニシアチブをとって、ICJの勧告的意見を求める国連総会の決議が2023年3月に採択され、審理が開始されたのである。
 
 こうした青年世代の情熱と息吹を、気候危機の対策を巡る国際的な枠組みの中に組み込むことで、時代変革の波を力強く起こすエンジンとしていくべきではないだろうか。

  

1983年6月、ローマクラブの創設者であるアウレリオ・ペッチェイ博士と、5度目の語らいを行う池田先生(フランスのパリで)。持続可能な地球社会の構築に向けて、人間の内面の変革の重要性などを論じ合った対話は、対談集『21世紀への警鐘』として結実。これまで、英語やイタリア語、スペイン語をはじめ、16言語で出版されてきた

  

青年たちの意見を積極的に反映

 冒頭で触れた「未来は昔の未来ならず」との言葉は、ローマクラブの創設者だったアウレリオ・ペッチェイ博士が、21世紀の人類のために遺した警句であった。
 
 博士はこの言葉を、“将来、人類が直面する危機への警鐘”としての意味だけで述べたわけでは、決してなかった。「未来は昔の未来ならず」であるならば、既存の方法や制度だけで危機を乗り越えることは困難であり、対策を進める上での主導権を、青年世代に託すべきであるとの思いも、そこには込められていたのである。
 
 池田先生は、国連で「ユース気候サミット」が行われた4カ月後(2020年1月)に発表した平和提言で、ペッチェイ博士との対談集『21世紀への警鐘』で語り合った“青年世代への限りない期待”を紹介しながら、こう訴えていた。
 
 「『成長の限界』の発刊当時に焦点となっていた公害や資源問題のように、局所的な対応で解決の糸口をつかむことができるものとは異なり、気候変動の原因は人々の生活や経済活動のあらゆる面に及んでいるだけに、状況の打開は決して容易ではありません」 
 
 「しかし、気候変動を巡る複雑で困難な状況も、受け止め方次第で、チャンスへと変えることができるのではないでしょうか。
 対応すべき分野や場所が多岐にわたるという状況は、一方で、一人一人に具わる限りない力を発揮できる舞台が、それだけ多種多様な形で広がっていることでもあるからです」と。
 
 それ以前からも池田先生は、地球的な課題の解決を前に進めるためには、青年世代の声を対策に積極的に反映することが欠かせないと強調し続けていた。
 
 その一環として、2006年の国連提言で呼びかけたのが、「世界の青年のために活動を特化した専門機関、もしくは国連事務局における『青年担当局』の設置」である。
 
 この提案と志向性が重なる「国連ユース・オフィス」が、2023年12月に国連事務局内に設置された。
 
 世界の青年たちと共に、“青年による国連への関与の活性化と拡大”に向けた突破口を開くことを目指した組織である。
 
 そうした「青年世代の参画の強化」を、21世紀の人類にとって緊要の課題である気候危機に臨む国際的な枠組みで、何よりもまず確立すべきではないだろうか。

  

  

昨年3月に東京・新宿区の国立競技場で行われた「未来アクションフェス」。約7万人が会場に集い、約50万人がライブ配信を視聴する中、青年意識調査をもとにした共同声明が発表された(写真上)。その後、ニューヨークの国連本部で昨年9月に開催された「未来サミット」では、「未来のための協定」が採択。“若者の政策決定への意味ある参画”をはじめ、アクションフェスの共同声明で求めた数項目の主張と重なる内容が盛り込まれた(同下)

  

人類の希望の未来を生み出す挑戦

 この点に関連して、気候正義と世代間対話の強力な提唱者であり、世界の首脳経験者等のグループ「エルダーズ」の元会長であるメアリー・ロビンソン氏と、国連ユース・オフィスのフェリペ・ポーリエ代表は、本年1月に共同で発表したアピールの中で、こう訴えていた。
 
 「私たちが直面する複雑な世界的課題には、現在の問題だけでなく、将来的なリスクや機会にも取り組むための道徳的な強さが求められています。
 このようなリーダーシップは、特定の世代に縛られるものではなく、青年を含む多様な視点が意思決定に反映されてこそ強化されるのです。
 青年たちが対等なパートナーとして関与することで、意思決定プロセスが豊かになり、斬新なアイデアと未来志向の発想を取り入れて、現在と未来の世代の両方に恩恵をもたらす解決策につながります」と。
 
 気候変動問題における青年の参画については、イタリア創価学会が、国連開発計画(UNDP)とイタリア政府が主導する「ユース・フォー・クライメート」への支援を続けてきた。
 
 この取り組みは、若い気候リーダーや青年主導の団体が、気候変動の課題に取り組むための革新的で影響力のある解決方法を生み出し、実行することを後押しするもので、これまで、世界52カ国の100のイニシアチブに財政的支援が行われてきた。
 
 また昨年3月、私たちの青年世代であるSGIユースが、他の市民団体と共に、気候危機と核兵器の問題解決を目指すイベント「未来アクションフェス」を東京の国立競技場で開催した。
 
 このイベントに伴う「青年意識調査」で集めた“約12万人の声”を声明としてまとめ、さまざまな機会を通じてアピールを続けるとともに、昨年9月に国連本部で行われた「未来サミット」にSGIの代表が参加して、他の団体と関連行事を行い、青年世代の声を届けたのである。
 
 このような「青年参画の主流化」の取り組みを、今後も市民社会が積極的な役割を果たして広げていくことに加えて、気候変動枠組条約の事務局内に常設の「ユース協議会」を設置することは、何よりの時代変革の象徴となりうるものであると、強く確信するものである。
 
 青年たちがそうした役割を十全に発揮できる場を、今こそ設けるべきだ。
 
 目の前で起きている深刻な現実から目を背けていても、危機の拡大は止まることはない。
 
 今回の声明で呼びかけた「グローバルな民衆レベルでの行動喚起」と「青年参画の主流化による制度面での強化」を基盤としながら、同じ地球に生きるすべての人々の生命と尊厳と生活とともに、将来世代の生命と尊厳と生活を守るための壮大な挑戦を、共に成し遂げようではないか。

  

  


  

<語句解説>

パリ協定 2015年12月に採択された気候変動対策の国際枠組み。“世界の平均気温の上昇を1・5度以内に抑える”という努力目標を設定し、温室効果ガスの排出量の削減を各国に求めている。
 
地球サミット 1992年6月にブラジルのリオデジャネイロで行われた「国連環境開発会議」の通称。

『成長の限界』 1972年にローマクラブが発表した報告書。人口や食糧生産、資源や環境汚染などに関する将来予測は、地球環境問題への取り組みの重要性を広く知らせる役割を果たした。
 
ユース・フォー・クライメート 国連開発計画とイタリア政府が主導する気候変動問題に関する取り組み。イタリア創価学会は同国のインテーサ(宗教協約)の「1000分の8税」に基づいた使途金を通じて支援を行ってきた。