気候変動対策を共に――西アフリカのトーゴで森林再生プロジェクト

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創価学会とITTO、REFACOFが共同推進

  

学会代表がアグエガン村を訪問

トーゴは、他の西アフリカ諸国と同じく、多くの環境問題に直面しており、気候変動に対して最も脆弱な国の一つとされる。
 
世界銀行グループの気候変動に関する知識ポータルサイトによれば、2021年のトーゴの平均気温は、28・05度。1991年から1・28度も上昇している。月別にみると、2月、3月は最高気温が36度を超える。
 
創価学会は、国連のSDGs達成推進と気候変動対策の一環として、2020年7月、熱帯林資源の保全と持続可能な森林経営を進めるITTOと、トーゴにおける森林再生支援プロジェクトへの協力協定を締結した。

貧困地域の女性の自立を支援

トーゴで、創価学会、ITTO、REFACOFによる森林再生支援の共同プロジェクトが始まったのは、2021年1月である。
 
ブリッタ県パガラガ村とラック県アグエガン村の2地域で実施されているが、今回は、アグエガン村を視察に訪れた。
 
「見てください。こんなにも植生が回復しているのが、お分かりでしょう。このプロジェクトで回復した森林は、合わせて35ヘクタールにもなるんです。
 
共にアフリカの森を回復させ、アフリカの女性たちの生活状態を全般的に向上させたい――それが私たちの願いです」
 
REFACOFのセシル・ンジェベト代表が力を込める。国際会議のため訪れていたアメリカから、トーゴに駆けつけた。

森林再生の技術の習得を通して、地球環境の“変革の担い手”に

  

種をまき、苗を植え、井戸でくんだ水を注ぐ。新たに設置された井戸のプレートには、トーゴの国章、ITTO、REFACOFのロゴとともに「Soka Gakkai」と記されている。森林再生の現場には、子どもたちの姿もにぎやかに。未来のための労作業を見つめる

   

  

  


農学者でもあるンジェベト代表は、森林再生およびジェンダー平等を推進するため、2009年にREFACOFを創設。現在、アフリカの20カ国で活動を展開している。

2022年、「ワンガリ・マータイ森林チャンピオン」賞を受賞。また国連で最高の環境賞とされる「チャンピオン・オブ・ジ・アース」において「インスピレーションと行動」の分野での受賞者の一人となった。
 
リディア・アマ・アトゥトヌ博士は、REFACOFトーゴの中心者。プロジェクトの進展の様子を語る。
 
「トーゴの女性たちが、森林再生と農作物の生産を行うアグロフォレストリー(併農林業)の技術について訓練を受けることができました。創価学会のおかげで井戸も完成しました。今は、人の手で桶を引き上げますが、今後は機械で水をくみ上げる装置も設置する計画です。
 
私たちは、政府と地域コミュニティーの首長の支援も得て、森林再生のための土地を確保しています。そして、地域の食料安全保障とともに、農村における女性の自立や家族の生活向上を実現しているのです」

4万8千本の苗木を生産 35ヘクタールの森が回復

  

アグエガン村の森林再生地に緑が広がる。「2年前と今と比べると、森林が広範囲にわたって回復し、非常によい植生になりました」(ンジェベト代表)。当初、隣接する小学校の井戸の近くに苗床が設けられたが、新たな井戸が森林再生地にできたおかげで、作業効率が一段とアップした


アグエガン村の森林再生地では、カヤ、タガヤサン、カマバアカシア(鎌葉アカシア)の木などの苗木を生産し、植林してきた。
 
この森林によって温室効果ガスを吸収することで気候変動対策になると同時に、貧困地域の女性たちの社会的地位の向上も促す。女性たちは研修を受け、苗床生産、森林再生の技術を身につけ、生態系を傷つけないよう留意して、苗木をアグロフォレストリーの手法で植えていく。
 
従来のように、森を切り開いて畑をつくる手法ではなく、材木樹や果樹、農作物など多様な植物を混植することで、森林の保護・再生を支えながら商品作物を得られるようにするのが特色だ。
 
食用作物としては、タピオカの原料ともなりアフリカの伝統的な食用作物であるキャッサバをはじめ、トウモロコシ、落花生などを栽培。家庭の食料として、また余剰分は販売用として貢献している。
 
この共同プロジェクトは、気候変動による天候不順等に加え、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)や、ウクライナ危機による食料不足など、さまざまな困難な状況を乗り越え、続けられてきた。

  

環境・森林資源省を表敬(1月23日)。相島平和委員会議長ら訪問団が同省総務・財務本部のコンムラン・アウニョ本部長(右から2人目)らと懇談した。同本部長は創価学会が進める森林再生の共同プロジェクトへの賛同と感謝を述べた


1月23日午前、訪問団は環境・森林資源省を表敬。午後、プロジェクトを支援しているアグエガン村の首長を訪ね、感謝を伝えた。
 
この日、村で市場が開かれていた。日頃は人が少ないであろう広場や村の辻々も、この日ばかりはにぎやかに露店が軒を連ね、鍋など日常の生活用品や色とりどりの野菜や燻製の魚などの食品、さらに伝統の工芸品などが所狭しと並ぶ。
 
案内役のアマ・アトゥトヌ博士が、歩きながら、露天の快活な女性店員たちと言葉を交わす。
 
「あの店の女性たちの中にも、森林再生プロジェクトの参加者がいるんです」
 
地域コミュニティーとの協働で豊かな成果をもたらす。環境を保全すると同時に、村に生きる女性が力を得て、家族の暮らしも向上させていける――プロジェクトの意義が雄弁に示されていた。

REFACOF創設者・代表 セシル・ンジェベト氏「創価学会の協働に深謝」

  


私は、アフリカの森林経営のためのネットワーク「REFACOF」の創設者であり、代表を務めています。
 
この分野で、アフリカにおける創価学会の最初の取り組みが行われているトーゴで、皆さんとご一緒できることを大変うれしく思います。創価学会の支援のおかげで、150人の女性が恩恵を受け、今では35ヘクタールの森林を回復させることができました。女性たちは4万8000本の植林木の苗木を生産し、2万5000本を植えました。この2年間だけで、非常によく植生が回復しつつあります。
 
重要な点として、女性たちがアグロフォレストリー方式を選択したので、植林といくつかの農産物を組み合わせたということがあります。ここアグエガン村では、植林とともに、キャッサバやトウモロコシ、ピーナツなどを栽培しています。これは女性たちが家族の食料安全保障を向上させるのに役立ちました。キャッサバは、皆が食べますし、「ガリ」と呼ばれる粉末に加工し、余剰分を売ることで、ある程度の収入が得られるのです。
 
私たちREFACOFの目的は、女性の生活環境を改善すること、そして環境を改善することです。つまり、アフリカの森を、生態系を回復させ、アフリカ大陸を復興させること、そしてアフリカの女性とその家族、全ての人の生活の質を向上させること。この二つの目標があります。
 
これらは、全て能力開発とともに行われます。私たちは優秀な技術者を抱えており、女性たちを訓練しています。また、女性たち自身によるトレーニングも企画・実施しています。具体的には、プロジェクトが実施されている二つの村同士で、女性たちが交流し、互いの経験を交換できるように努めています。
 
創価学会からの継続的な協働に御礼を申し上げたい。私たちはアフリカの稀有な女性協会、女性ネットワークの一つであり、女性と共に働き、100%女性で構成されております。
 
重ねてご支援に感謝いたします。

  

幼子を抱き、頭上で荷物を運ぶ女性――「アフリカの母と子の像」。REFACOFのンジェベト代表から寄せられた。代表は「池田先生は、21世紀はアフリカの世紀、女性の世紀といわれました。その先見に感動します。女性のエンパワーメントこそが、アフリカを復興させる原動力なのです」と語った