自律型兵器システムの規制へ オーストリア・ウィーンで国際会議

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各国政府や国連の代表らが出席 市民社会の一員としてSGIが意見表明

  

オーストリア政府が主催する国際会議「岐路に立つ人類――自律型兵器システムと規制の課題」が2024年4月29、30の両日(現地時間)、同国の首都ウィーンで開催された。これには144カ国の政府の代表をはじめ、国連、国際機関、市民社会の代表ら1000人以上が出席。SGI(創価学会インタナショナル)は市民社会の一員として参加し、意見表明を行った。

  

オーストリア政府の主催で開催された国際会議。自律型兵器システムの問題点や規制に向けた課題などが議論された(ウィーンで)

  

AI(人工知能)技術の急速な発展が注目を集める中、それが軍事利用された場合の危険性に懸念が高まっている。とりわけ、AIを用いた機械が人間による有意の制御なしに自動で目標を設定し、殺傷する仕組みは「自律型兵器システム」と呼ばれ、実用化されれば人の生死を機械に委ねることになりかねない。そのため、国際法や安全保障など、さまざまな観点から問題が指摘されている。
 
こうした中で昨年、同システムへの対応を求める決議が国連総会で採択。今後、各国や市民社会等が見解をまとめた報告書を国連事務総長に提出し、本年の国連総会で報告される予定だ。
 
今回の会議は、これまでの議論を一歩進めるべく、同システムの問題点と規制に向けた課題を明確にするために開かれたもの。29日の開会式でオーストリアのシャレンベルク外相は、人間によるAIの管理を確実にするために、今こそ国際的なルールと規範に関して合意する時であると強調した。

  

SGIの意見表明を行う山下軍縮担当プログラムコーディネーター

  

2日目の30日午後には、市民社会による意見表明の場が持たれ、SGI軍縮担当プログラムコーディネーターの山下氏が発言した。氏は池田大作先生の平和提言を踏まえ、AIをはじめ社会で用いられる技術は人類全体の繁栄を志向するべきであると述べ、特に人間の生命に関わる意思決定を機械に委ねることは絶対に看過できないと力説。人間の権利と尊厳を守るべく、同システムを規制する国際法の採択を目指すべきであると訴えた。

  

草の根の意識啓発に向けたフォーラムも

  

国際会議に先立って行われた市民社会フォーラム(同)

  

また、会議に先立つ4月28日には国際ネットワーク「ストップ・キラーロボット」主催の市民社会フォーラムが行われ、SGIの代表が参加した。
 
ここでは、自律型兵器の問題が政治的優先課題として広く認識されていない状況が報告され、規制に向けた草の根の意識啓発に取り組んでいくことなどが確認された。
 
午前の全体会では、SGI国連事務所のサンニャ・ラジパル氏が登壇。雇用の喪失をはじめ、AIの発展が人間の生活基盤を脅かすような事態を招くことは避けねばならないと述べた。午後の宗教間のワークショップでは、山下氏が仏法の生命尊厳の視座から同兵器の倫理における問題点を指摘した。
 
いずれの会場でも、SGIが制作協力した自律型兵器システムの問題への理解を深める展示「オートメーティド・バイ・デザイン(仕組まれた自動化)」が設置され、多くの参加者が観賞した。

国際会議でSGIが発表した内容(英文)はこちらで閲覧できます。