2025.03.22
心の復興へ
東北希望コンサート
被災3県 44都市81回の公演

「音楽の花束」「ラジオの力」で、東北の子どもたちに夢を届けたい――この趣旨に賛同したアーティストや団体が協力し、東北3県(岩手、宮城、福島)の小・中学校などで開催する東北希望コンサート(主催=IBC岩手放送、東北放送、ラジオ福島、TBSラジオ、民音。共催=創価学会)。
2012年5月にスタートし、2021年3月までに44都市で81回の公演が行われました。大きな反響を呼んだその歩みを振り返り、開催した小学校の校長、出演アーティスト、主催団体の代表の声を紹介します。
2012年5月にスタートし、2021年3月までに44都市で81回の公演が行われました。大きな反響を呼んだその歩みを振り返り、開催した小学校の校長、出演アーティスト、主催団体の代表の声を紹介します。
被災地に響く希望の歌声
「歌を絆に」――アナウンサーの呼び掛けに、子どもたちの元気な声が響く。「東北希望コンサートin夏井小学校!」2017年の全9回の掉尾を飾るコンサートが12月17日、岩手・久慈市の夏井小学校で行われました。
同校を訪れたアーティストは、日本が誇るプリマドンナである佐藤しのぶさん。ピアニストの鬼原良尚さんの伴奏で、「花のまち」や「あわて床屋」「花は咲く」など10曲を歌い上げました。
プロのオペラ歌手の声量、音の響きを前に、子どもたちは目を輝かせながら歌を口ずさみます。フィナーレでは、佐藤さんと一緒に小学校の校歌を合唱しました。
同校を訪れたアーティストは、日本が誇るプリマドンナである佐藤しのぶさん。ピアニストの鬼原良尚さんの伴奏で、「花のまち」や「あわて床屋」「花は咲く」など10曲を歌い上げました。
プロのオペラ歌手の声量、音の響きを前に、子どもたちは目を輝かせながら歌を口ずさみます。フィナーレでは、佐藤さんと一緒に小学校の校歌を合唱しました。
“校歌まで練習してくれたんだ”
――子どもたちの笑顔が一層、明るくなった。
東北希望コンサートで恒例となった、アーティストと児童・生徒による校歌の合唱は、第1回コンサートから始まりました。
舞台となったのは、震災による津波で甚大な被害に遭った岩手・陸前高田市の気仙中学校。多くの生徒たちが仮設住宅に住み、仮校舎へバスで通学していました。コンサートの終盤、生徒代表があいさつに立ちました。「仮校舎で過ごす日々の中で、いつも、気仙中生としての誇りを呼び覚ましてくれたのが校歌でした」その言葉は、関係者の心に深く残りました。それから出演アーティストが訪れる学校の校歌を練習し、コンサートで一緒に歌うことを恒例にしたのです。
東北希望コンサートで恒例となった、アーティストと児童・生徒による校歌の合唱は、第1回コンサートから始まりました。
舞台となったのは、震災による津波で甚大な被害に遭った岩手・陸前高田市の気仙中学校。多くの生徒たちが仮設住宅に住み、仮校舎へバスで通学していました。コンサートの終盤、生徒代表があいさつに立ちました。「仮校舎で過ごす日々の中で、いつも、気仙中生としての誇りを呼び覚ましてくれたのが校歌でした」その言葉は、関係者の心に深く残りました。それから出演アーティストが訪れる学校の校歌を練習し、コンサートで一緒に歌うことを恒例にしたのです。
「きびしい冬のあとには、かならず春がやってくる」
コンサートによる励ましは、会場の児童・生徒だけにとどまりません。その模様は後日、主催4社のラジオ放送をはじめ、インターネットの動画共有サイトでも音声配信され、保護者や地域などにも希望を広げてきました。
2015年からは、津波被害を受けた地域に加え、原発事故で避難した自治体の小・中学校でも開催しています。各校を訪ねるスタッフたちも、初対面の子どもたちに親近感を持ってもらえるよう、共通のオレンジ色のベストを着用するなど、工夫を重ねてきました。
また、“コンサートの思い出を忘れないで”“いつもそばにいるよ”との思いから、筆箱に納まるサイズの記念の定規を作成。参加した児童・生徒全員に贈っています。東北希望コンサートのパンフレットには、こうつづられています。
「きびしい冬のあとには、かならず春がやってくる」
2015年からは、津波被害を受けた地域に加え、原発事故で避難した自治体の小・中学校でも開催しています。各校を訪ねるスタッフたちも、初対面の子どもたちに親近感を持ってもらえるよう、共通のオレンジ色のベストを着用するなど、工夫を重ねてきました。
また、“コンサートの思い出を忘れないで”“いつもそばにいるよ”との思いから、筆箱に納まるサイズの記念の定規を作成。参加した児童・生徒全員に贈っています。東北希望コンサートのパンフレットには、こうつづられています。
「きびしい冬のあとには、かならず春がやってくる」

シンガー・ソングライターの辛島美登里さんの澄んだ歌声が、学校の体育館にこだました(2017年9月、宮城・石巻市で)

女性ビッグバンド「たをやめオルケスタ」の迫力のパフォーマンス。子どもたちが真剣に聞き入る(2017年7月、福島・新地町で)
“校歌”の合唱で一つになれた――福島・南相馬市立小高区4小学校 山本 秀和 校長

私たちの南相馬市立小高区4小学校は、小高・福浦・金房・鳩原の4校による合同運営の学校です。2016年7月、この小高区が、一部地域を除いて、原発事故による避難指示の解除を受けたことにより、2017年4月から同一校舎での学校生活が始まりました。
そんな中、6月に東北希望コンサートで双子ソプラノデュオの「山田姉妹」が来てくれました。テレビやインターネットでは絶対に伝わらない、息づかいや声の響き。それらを前にした、児童たちのうれしそうな笑顔は忘れられません。
震災から6年9カ月。今の小学生には、あの日の記憶はほとんどありません。まだ生まれていない子もいます。転居を繰り返し、この地に戻ってきた子どもたちは、家庭環境も違うし、さまざまな思いを持っている。だから心のケアが一番大切なんです。夢を叶えたアーティストによる〝音楽の励まし〟は、きっと、子どもたちの将来への希望となったに違いありません。
また、みんなで感謝していることがあります。私たちは四つの小学校から成るため、校歌も四つあります。テンポも違えば曲調も違う4曲を、東北希望コンサートで、メドレー調に編曲して一つの曲として歌ってくれたんです。以来、「これで、一つになったね!」と、折りに触れてみんなで合唱し、コンサートでの励ましを思い出しています。
小学校は、迷い道や回り道を繰り返し、自分が進む道を探す所です。児童にとって、一流に触れたこのコンサートは貴重なきっかけになりました。感謝の思いは尽きません。
※肩書は2017年取材時のもの
そんな中、6月に東北希望コンサートで双子ソプラノデュオの「山田姉妹」が来てくれました。テレビやインターネットでは絶対に伝わらない、息づかいや声の響き。それらを前にした、児童たちのうれしそうな笑顔は忘れられません。
震災から6年9カ月。今の小学生には、あの日の記憶はほとんどありません。まだ生まれていない子もいます。転居を繰り返し、この地に戻ってきた子どもたちは、家庭環境も違うし、さまざまな思いを持っている。だから心のケアが一番大切なんです。夢を叶えたアーティストによる〝音楽の励まし〟は、きっと、子どもたちの将来への希望となったに違いありません。
また、みんなで感謝していることがあります。私たちは四つの小学校から成るため、校歌も四つあります。テンポも違えば曲調も違う4曲を、東北希望コンサートで、メドレー調に編曲して一つの曲として歌ってくれたんです。以来、「これで、一つになったね!」と、折りに触れてみんなで合唱し、コンサートでの励ましを思い出しています。
小学校は、迷い道や回り道を繰り返し、自分が進む道を探す所です。児童にとって、一流に触れたこのコンサートは貴重なきっかけになりました。感謝の思いは尽きません。
※肩書は2017年取材時のもの
「歌は友だち」を忘れないで――オペラ歌手 佐藤 しのぶ さん

私はこれまで2回、東北希望コンサートに出演させていただきました。初めは2013年の宮城・石巻市、2回目は先月、岩手・久慈市の小学校でした。久慈の小学校は、全校児童23人。ほんの1、2メートル先にいる子どもたちに歌を届け、一緒に歌った初めての体験は忘れられません。
はじめは〝私に何ができるんだろう〟との思いがありましたが、歌の素晴らしさや、仲間と共に歌う喜びを伝えたいと、精いっぱい臨みました。真剣に聴いてくれる子どもたちのキラキラした笑顔が、とてもうれしかった。
中でも印象的だったのは“音楽のお返し”と、みんなで歌ってくれた合唱です。真っすぐ心に届く子どもたちの歌声に“ああ、歌うということは、なんて素晴らしいんだろう”――かえって私自身が、子どもたちから歌の楽しさを教えていただきました。
震災以降、被災地に多くの歌が誕生しました。それは、どうしようもなく悲しいことやつらいことを、共に乗り越え生きようとする“人間の希望と共感の結晶”だと思います。歌は言葉以上に人の感情を伝え、心と心を通わせ、つなぐことができるものです。また、誰もが自分にしかない声という最高の楽器を持っています。
未来を担う子どもたちには、どんな時も「歌は友だち」だということを忘れず、心豊かに、かけがえのない人生を歩んでほしい。音楽は医療のように人の生命を救うことはできないかもしれません。だけど、人の心は救えると信じて歌い続けてきました。もし、お役に立てるなら、どこへでも伺いたい。そう願ってやみません。
※故人。コメントは2017年取材時のもの
はじめは〝私に何ができるんだろう〟との思いがありましたが、歌の素晴らしさや、仲間と共に歌う喜びを伝えたいと、精いっぱい臨みました。真剣に聴いてくれる子どもたちのキラキラした笑顔が、とてもうれしかった。
中でも印象的だったのは“音楽のお返し”と、みんなで歌ってくれた合唱です。真っすぐ心に届く子どもたちの歌声に“ああ、歌うということは、なんて素晴らしいんだろう”――かえって私自身が、子どもたちから歌の楽しさを教えていただきました。
震災以降、被災地に多くの歌が誕生しました。それは、どうしようもなく悲しいことやつらいことを、共に乗り越え生きようとする“人間の希望と共感の結晶”だと思います。歌は言葉以上に人の感情を伝え、心と心を通わせ、つなぐことができるものです。また、誰もが自分にしかない声という最高の楽器を持っています。
未来を担う子どもたちには、どんな時も「歌は友だち」だということを忘れず、心豊かに、かけがえのない人生を歩んでほしい。音楽は医療のように人の生命を救うことはできないかもしれません。だけど、人の心は救えると信じて歌い続けてきました。もし、お役に立てるなら、どこへでも伺いたい。そう願ってやみません。
※故人。コメントは2017年取材時のもの
“ふるさとの記憶”を届ける喜び――IBC岩手放送 鎌田 英樹 社長

東北の子どもたちに“音楽の励まし”を送るこのコンサートを、今日まで続けることができ、一丸となって主催するTBSラジオ、東北放送、ラジオ福島、民音、そして共催の創価学会の皆さんに感謝の思いは尽きません。
岩手は農業や林業、水産業などが盛んな地域柄、作業をしながらラジオを聞くという文化が根付いています。また、車での移動中、商店でBGMとしてラジオを聞いてくださる方もいらっしゃいます。そうした多くのリスナーの皆さんからの支持、“生の声”の投稿によって、私たちは支えられています。そうした方々から、東北希望コンサートへの感動の声を聞くたび、恩返しをさせていただいているようで、うれしくなります。
放送を聞く中で、特にアーティストと子どもたちが一緒に歌う校歌が大好きです。学校というのは、その地域において最も大きなコミュニティーです。校歌は世代を超えて歌い継がれ、故郷への愛情が詰まったものでしょう。
希望コンサートのラジオ放送は、保護者のみならず、きっと、その地元の人たちにも特別な思いで聞いていただいているはずです。中には、震災によってその地をやむを得ず離れた人もいるでしょう。そうした方々に、少しでも「希望」を送れるなら、ふるさとの大切な記憶を思い出すきっかけになれるなら、一人の放送局員としてこれほどうれしいことはありません。
復興はまだまだ道半ばです。“人に寄り添うメディア”として、岩手に元気を送る事業に携わることのできる喜びをかみしめています。
※肩書は2017年取材時のもの
岩手は農業や林業、水産業などが盛んな地域柄、作業をしながらラジオを聞くという文化が根付いています。また、車での移動中、商店でBGMとしてラジオを聞いてくださる方もいらっしゃいます。そうした多くのリスナーの皆さんからの支持、“生の声”の投稿によって、私たちは支えられています。そうした方々から、東北希望コンサートへの感動の声を聞くたび、恩返しをさせていただいているようで、うれしくなります。
放送を聞く中で、特にアーティストと子どもたちが一緒に歌う校歌が大好きです。学校というのは、その地域において最も大きなコミュニティーです。校歌は世代を超えて歌い継がれ、故郷への愛情が詰まったものでしょう。
希望コンサートのラジオ放送は、保護者のみならず、きっと、その地元の人たちにも特別な思いで聞いていただいているはずです。中には、震災によってその地をやむを得ず離れた人もいるでしょう。そうした方々に、少しでも「希望」を送れるなら、ふるさとの大切な記憶を思い出すきっかけになれるなら、一人の放送局員としてこれほどうれしいことはありません。
復興はまだまだ道半ばです。“人に寄り添うメディア”として、岩手に元気を送る事業に携わることのできる喜びをかみしめています。
※肩書は2017年取材時のもの
実施校一覧
岩手県
- 1
- 陸前高田市立 気仙中学校
- 2
- 宮古市立 千徳小学校
- 3
- 大船渡市立 吉浜中学校
- 4
- 釜石市立 甲子中学校
- 5
- 大槌町立 大槌小学校
- 6
- 久慈市立 久慈中学校
- 7
- 山田町立 大浦小学校
- 8
- 岩泉町立 大川小学校
- 9
- 田野畑村立 田野畑小学校・中学校
- 10
- 洋野町立 大野中学校
- 11
- 普代村立 普代中学校
- 12
- 野田村立 野田中学校
- 13
- 宮古市立 宮古西中学校
- 14
- 山田町立 図書館
- 15
- 大船渡市立 日頃市中学校
- 16
- 釜石市立 釜石中学校
- 17
- 陸前高田市立 横田小学校
- 18
- 宮古市立 河南中学校
- 19
- 大槌町立 吉里吉里学園小学部
- 20
- 岩泉町立 二升石小学校/浅内小学校
- 21
- 久慈市立 夏井小学校
- 22
- 釜石市立 唐丹小学校・中学校
- 23
- 大船渡市立 末崎中学校
- 24
- 野田村立 野田小学校
- 25
- 陸前高田市立 高田東中学校
- 26
- 山田町立 大沢小学校
宮城県
- 1
- 南三陸町立 戸倉小学校、志津川小学校
- 2
- 東松島市立 小野小学校、浜市小学校
- 3
- 多賀城市立 多賀城八幡小学校
- 4
- 七ヶ浜町立 松ヶ浜小学校
- 5
- 気仙沼市立 面瀬小学校
- 6
- 名取市立 増田中学校
- 7
- 岩沼市立 玉浦中学校
- 8
- 石巻市立 貞山小学校
- 9
- 利府町立 しらかし台中学校
- 10
- 塩竈市立 第二小学校
- 11
- 松島町立 松島第五小学校
- 12
- 登米市立 登米小学校
- 13
- 仙台市立(宮城野区) 岡田小学校
- 14
- 仙台市立(若林区) 六郷中学校
- 15
- 女川町立 女川小学校
- 16
- 亘理町立 荒浜小学校
- 17
- 山元町立 山下小学校、山下第二小学校
- 18
- 東松島市立 野蒜/宮戸小学校
- 19
- 石巻市立 石巻小学校
- 20
- 南三陸町立 志津川中学校
- 21
- 石巻市立 渡波小学校
- 22
- 気仙沼市立 津谷中学校/小泉中学校
- 23
- 七ヶ浜町立 亦楽小学校
- 24
- 岩沼市立 玉浦小学校
- 25
- 石巻市立 鹿妻小学校
- 26
- 気仙沼市立 面瀬中学校
- 27
- 石巻市立 雄勝小学校・中学校
- 28
- 利府町立 利府第三小学校
- 29
- 気仙沼市立 気仙沼中学校
- 30
- 気仙沼市立 大島小学校・中学校
- 31
- 亘理町立 荒浜中学校
福島県
- 1
- 南相馬市立 鹿島中学校
- 2
- 楢葉町立 楢葉北小学校/楢葉南小学校/楢葉中学校
- 3
- 相馬市立 中村第二小学校
- 4
- 浪江町立 浪江中学校
- 5
- 大熊町立 大野小学校、熊町小学校
- 6
- 富岡町立 富岡第一小学校/富岡第二小学校/富岡第一中学校/富岡第二中学校
- 7
- いわき市立 汐見が丘小学校
- 8
- 広野町立 広野小学校
- 9
- 新地町立 駒ヶ嶺小学校、福田小学校
- 10
- 双葉町立 双葉幼稚園/双葉北小学校/双葉南小学校/双葉中学校
- 11
- 飯舘村立 草野/飯樋/臼石小学校
- 12
- 田村市立 古道/岩井沢小学校
- 13
- 川内村立 川内小学校/川内中学校
- 14
- 葛尾村立 葛尾小学校/葛尾中学校/葛尾幼稚園
- 15
- 川俣町立 川俣南小学校/山木屋小学校/山木屋中学校
- 16
- 相馬市立 向陽中学校
- 17
- 南相馬市立 小高区4小学校(小高・福浦・金房・鳩原小学校)
- 18
- 新地町立 尚英中学校
- 19
- いわき市立 豊間中学校
- 20
- 楢葉町立 楢葉北小学校、楢葉南小学校、楢葉中学校
- 21
- 広野町立 広野小学校・中学校
- 22
- 大熊町立 大野小学校、熊町小学校、大熊中学校
- 23
- 浪江町立 なみえ創成小・中学校
- 24
- 富岡町立 富岡第一小学校・富岡第二小学校・富岡第一中学校・富岡第二中学校(富岡校)